2017年、積水ハウスが地面師に騙され55億5千万円をだまし取られるという事件が起きた。この小説はその事件をモデルに書かれたものである。大手企業をどのような手口で陥れたのか。そんな興味もあって読んでみた。
主人公の地面師が語る次のセリフが印象に残った。
「世の中というやつは、どれだけ文明が進歩しようとも、いつだって醜くゆがんでいるものです。なぜなら、人間とはそういう生き物だから。一部の持てる者に利潤が流れるよう設計されている。だから、いつまでたってもこの地上から不幸がなくならない。だから、差別、貧困、争いごとがなくならない。持てる者はますます豊かになり、そういった強者のために、持たざる弱者はひたすらに辛酸をなめ続けなければならない。真摯に生きるものが馬鹿を見るんです。一見、公正をよそおっているぶん余計に始末が悪い」(p328)
真摯に生きるものが馬鹿を見ないですむ社会をつくるにはどうしたらいいのか。明日はいよいよ衆議院総選挙である。