2003年、イラクが大量破壊兵器を所有しているとしてアメリカはイラク戦争を行なった。だが、大量破壊兵器は見つからなかった。イラク戦争とその後の混乱によって20万人が死亡し、イラクは破壊され、分裂した。スンニ派中心のフセイン独裁政権は03年4月に崩壊に追い込まれ、フセイン元大統領は06年に処刑された。こうして1979年から約24年間続いたサダム・フセインの圧政は終わった。
戦後、国民の6割を占めるシーア派が政治の主流を占めるようになったが、少数派であるスンニ派との宗派対立が激化し、06年には内戦状態に突入した。一方、2011年に米軍が撤退すると、スンニ派系のISが北部モスルを掌握した。ISは再派遣された米軍などの攻撃で駆逐され、イラクの死者数は減少しつつある。
現在のイラクは、影響力を強めたいアメリカとイランの対立の最前線となっている。2020年1月、首都バグダッドの国際空港近くでイランのソレイマニ司令官が殺害された。イランの影響力を排除するためトランプ大統領が殺害を命じたものである。そうした中で、反米・反イランを掲げるサドル師派が勢力を伸ばしつつある。アメリカを憎むイラク人は今も少なくない。
アメリカがイラクにもたらしたのは政治的混乱だけではない。劣化ウラン弾による影響も深刻だとされる。劣化ウランは核燃料や核兵器を生産するためにウランを濃縮する過程で生まれる。固くて重い性質があるため、戦車をも突き通す。
だが、高速で衝突した際に微粉末の煙が飛び散る。それが体内に取り込まれると、長期間(20年以上)にわたり放射線を放出し白血病などのガンを引き起こすといわれる。
アメリカは世論を味方につけるため、プロパガンダにものすごい精力を注ぐ。とくに戦争をする際は、アメリカが正義であることを強調するために徹底した情報操作を行う。今展開されているウクライナ戦争も、悪いのはプーチンだけか。真相が明らかになるのは30年後だろう。冷静に、批判的精神を持ってアメリカと付き合う必要がある。イラク戦争から20年、いまだにアメリカの謝罪はない。