週刊東洋経済(2019年11月23日号)が、「NHKの正体」という特集をしている。面白かったのでその一部を紹介する。
これはまさしくNHKの解体新書である。受信料収入、職員の数、給料、番組制作費、NHKニュース7の年代別視聴率など興味深いデータが並ぶ。
NHKは全国54の放送局をもち、職員数は1万人を超え、契約・派遣社員を加えれば規模はその倍になるといわれる。在京キー局の職員数は1000人から1200人規模であるのと比較すれば、NHKがいかに巨大組織であるかが理解できよう。
NHKの収入は受信料で支えられている。年間の総額は約7000億円。内部留保は約3000億円と厚く、余剰資金は国債などの有価証券に充てられている。予算・スタッフともに充実しており、とくに報道番組や教養番組は民放を寄せ付けない。
しかし、最近のNHKを見ていると少し気になるところがある。本来、NHKは視聴者から受信料をとる代わりに、国家権力からは独立した存在としてスタートしたはずである。ところが受信料をとることから、人事と予算は国会・政府に首根っこを押さえられてしまった。
放送法は本来「報道の自由」を守るためのものであるが、1980年代から「放送局規制するための法律」に変質していった。その極めつけが2016年の高市早苗総務大臣の「電波停止」発言である。中立かどうかはお金を払っている視聴者が決めるべきものなのに、国が判断するというトンデモ発言である。
2017年には最高裁が、受信料契約を定める放送法は憲法に違反しないという判決を出してから、NHKの政権寄りの体質がますます強くなった。政府与党の主張の解説ばかりが多くなり、「みなさまのNHK」から「安倍様のNHK」になってしまった。
かつてNHKの籾井勝人会長が「政府が右ということを左と伝えるわけにはいかない」と発言し問題になったことがあった。ジャーナリズムの本質は「権力の監視」である。NHKは外国のニュースや過去の日本については鋭い分析をするのに、現在の日本の政権問題になると途端に腰が引ける。昨今の統一教会と自民党の問題を見ているととくにそう思う。組織の内部でどんな力学が働いているのか。NHKを大本営発表の場にさせてはならない。