2022年1月25日発行された本である。日本では30年に及ぶ長期不況と経済格差の拡大が続いている。この問題に対して政府は、短期的には金融・財政政策、長期的には構造改革で対処しようとしている。しかし、従来の経済学ではこの問題を解決できないと筆者は説く。
ではどうするか。筆者はこの問題を解くカギを、人々が資産を増やしたいという「資産選好」に求める。 日本がまだ貧乏だった時代、人々は稼いだ所得の多くを消費に回し、それが需要となり好景気を生んだ。ところが、今日のような成熟した社会では人々はすでに多くのものを持っており、人々が求めるのはモノではなく「資産」であるという。人間はお金持ちになればなるほどもっと欲しくなる。だから、金融緩和や財政赤字でお金をばらまいてもそれは「資産」に回されてしまい、消費には結びつかない。だから景気は良くならない。
金融緩和・財政赤字によって、たまたま株や土地を持っていた人はますます富む。一方、貧乏な人は所得の大半を消費に使ってしまうために資産を形成できない。こうして所得格差が拡大する。格差は自己責任の問題ではなく、「運」である。
ではどうすればよいか?
筆者の解答の一つは、相続税の強化である。資産家の資産を吐き出させれば資産をため込んでも意味がない。うーん、なるほど。
でもできるかなー。
いや、やらなければならない。
将来の日本のために何が必要か。政府の言うことばかりを喧伝していては世の中はよくならない。