もう55年も前の話である。私が高校生のとき担任の先生から「4当5落」なる言葉を聞かされた。4時間しか眠らずに勉強を頑張れば大学に合格できて、5時間も寝る奴は合格できないという意味だと教えられた。くそまじめだった私は、その言葉を実践しようとした。しかし、あとでわかったことだがこれはトンデモ論だった。
1年浪人した私は、自分の最適睡眠時間が8時間であることを体験から知った。1日のうち6時間しか寝ないと残りの18時間は頭が「ボー」とするのに対して、8時間たっぷり眠ると残りの16時間は頭がすっきりするのである。どっちが得か答は明白である。「4当5落」などとんでもない!その後の長い人生を通して、私は「睡眠8時間主義者」となった。これが私にとって一番快適なのである。
最近、『成功する人ほどよく寝ている』という本を読んだ。
それによると、睡眠時間8時間以上の国が圧倒的に多い。日本は異常なほど睡眠時間が短い。こと高校生に限って言えば、平均的高校生の睡眠時間は6時間ぐらいではないか。とくに大学入試の共通テストの点数が教員の勤務評定の要素の一つに加えられるようになって、教員の出す宿題量が無茶苦茶増えている。高校3年生ともなると睡眠時間5時間という生徒も少なくない。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠という一定のリズムがあることが知られている。理想的な睡眠リズムは次のような図であるとされる。
すなわち、入眠後一番深い眠り(ステージ③)があって、その後レムとノンレムを何回か繰り返しながら次第にノンレムの谷底が浅くなり、やがて朝の目覚めを迎える。
エレクトーンを習い始めて、どうしても弾けなかったところが次の日にはできるようになっていることが度々あり不思議に思っていた。これは、ステージ②のノンレム睡眠中に脳の中で練習を繰り返しているからだという。納得!
同様に、睡眠中に脳が前日に覚えたことを整理し、知識を定着させる働きもしているらしい。だから睡眠時間をたっぷりとるのも実は勉強のうちなのである。睡眠時間を削るなど愚の骨頂! 授業を集中して聞ける状態を維持することが合格への一番近道なのである。
ところが、こんな基本的なことを誰も教えてくれない。高校で使われる保健の教科書を見ても、睡眠に関する記述はごくわずかであり、上に書いたようなことは一言も書かれていない。いまだに精神論をぶち上げる人がいるのは困ったものである。