先日、生徒から「利回りと債券価格が反対の動きをする」と教科書に書いてありますが、どういうことですか?という質問を受けた。確かにこれだけの説明ではわかりにくい。そこで、債券の基本についてまとめてみた。
株式と債券の違い
株式は一般企業が投資家から資金を調達するために発行されるもので、広く知られています。一方、債券はおもに金融機関によって購入されるため、一般の人にはなじみが薄い存在といっていいかもしれません。ここでは債券について株式と比較する形で説明したいと思います。
債券とは、国や地方公共団体、企業などが資金調達のために発行するもので、国債、地方債、社債などの種類があります。債券も株式も資金調達手段であり、市場でいつでも売却できるという点では同じなのですが、次の3点で大きく異なります。
第一に、返す義務があるかないかという点です。債券は「借金」なので返済義務がありますが、株式は基本的に返還義務がありません。
第二に、債券購入の主たる目的は利子であるのに対して、株式購入の主たる目的は値上がり益や配当です。
第三に、債権は償還日に額面金額が払い戻され、比較的安定的な性格であるのに対して、株式は企業の業績や景気変動の影響を強く受け、大きく値動きします。
利回りと債券価格は反対の動きをする
利回りとは、投資金額に対する1年あたりの運用収益の割合のことをいいます。一般に、債券(社債や国債など)は発行された後、公社債市場で自由に売買でき、債券価格は需要と供給によって日々変化します。
いま、100円につき2円の利子が付く債券を購入したとします。この時100円投資して1年間の運用収益は2円ですから、
利回り=(2円÷100円)×100
=2%
となります。
もし、この債券を110円で購入したとすれば、利回りはどうなるでしょうか?
利回り=(2円÷110円)×100
=1.8%
と低くなります。つまり、債券価格が上昇すると利回りは低くなるのです。反対に、債券価格が値下がりすると利回りは上昇します。このように、利回りと債券価格は反対の動きをするのです。
不景気になると資金は株式市場から債券市場に流れる。
景気がいいとき株式が買われます。しかし、いったん不景気になると資金は株式市場から債券市場に流れていきます。理由は、不景気になると政府は金融緩和をして金利を引き下げるためです。
いま、あなたが所有している債券の利回りが2%だったとします。もし、不景気になって市場金利が1%に引き下げられれば、利回り2%の債券の方が市場金利より高くなり、債券を買いたいと思う人が増えます。その結果、不景気の時は債券が買われるのです。
一般に、景気変動と株式・債券の間には次のような関係があります。
好景気 → 株式が買われる。
不景気 → 債券が買われる。
景気変動と株式・債券の価格変動を図で表すと次のようになります。
すなわち、景気がいい時は株式が買われ、景気が悪くなると債券が買われるのです。債券は「不景気に強い」と言われるのはこのためです。
金利以外に、為替レートも債券価格に影響を与えます。一般に、円高が予想されると債券価格は上昇します。なぜなら、円高になると海外の投資家が為替差益を狙って日本国債などを購入するからです。その結果、債券価格は上昇します。反対に、円安が予想されると債券価格は下落します。
生命保険会社、投資信託、年金基金などの機関投資家は、何十兆円という大量の資金を株式や債券で運用しています。たとえ0.001パーセントの金利差であっても、運用の仕方によっては何千万円・何億円もの収益差が出てしまいます。ファンドマネージャーの腕の見せ所です。
債券の格付け
債券を発行する機関は、なるべく資金調達コスト(=金利)を安く債券を発行したいと考えています。一般に、金利と安全性の間には「安全性が高いと金利は低い」「安全性が低いと金利は高い」という関係があります。したがって、金利は国債、地方債、社債の順に高くなっていきます。
では、債券を発行する機関の安全性を誰が評価するのか? 答えは「格付け会社」と呼ばれる専門機関です。有名な格付け会社として、S&P、ムーディーズなど海外・国内に5社あります。格付け会社は世界中の企業から手数料を取って格付けの依頼を受け、その手数料を収益源としています。
上の表からも分かるように格付けが高い債券は金利が低く、格付けが低い債券は金利が高くなります。BBBのデフォルト率は約2%で、BBになるとデフォルト率は約8%に跳ね上がります。一般に、BBB以上は投資適格とされ、BB以下は投機的(ジャンク債)とされます。ちなみに現在の日本国債の格付けはAとされています。