菅政権が誕生して約1年になる。その菅内閣に対する支持率が30%を割った。背景には新型コロナウィルスの感染拡大を止められなかったという国民の厳しい見方がある。しかし、ここまで内閣支持率が下がると、「いや、ちょっと待てよ。この1年間で結構いい仕事もしているぞ」というあまのじゃく精神がむくむくと湧いてくる。
菅内閣がやった仕事の中で次のようなものは評価されてもいいのではないか。
① ケータイ料金の引き下げ
② デジタル庁の設置(2021年9月1日)
③ 教員免許更新講習制度の廃止
④ 小学校の1学級の児童数上限を40人から35人に引き下げ
ケータイ料金の引き下げは消費者の実質的な給料引き上げと同じインパクトがある。デジタル庁の設置は、日本の遅れた情報環境を一気に取り戻す起爆剤になる可能性を秘める。
安倍政権下の2009年度に始まった教員免許更新制は、立憲民主党が与党の時も一時話題になったが、実現しなかった。教員の負担増を招くこの問題にようやく手を付けた功績は大きい。ただし「発展的解消」と言っているから、まだ油断はできない。また、小学校の児童数上限引き下げも40年間変えられなかった問題だ。
先日、授業準備のための下調べをしていて驚いた。予算規模が101兆円から160兆円に膨らんでいるのだ。この1年間で国債の発行が実に約60兆円増えている。国民一人当たり10万円を配り、飲食店やデパートに休業や時短を要請し、中小企業に財政的支援をするとなると当然このくらいの国債発行はやむを得なかったのかもしれない。そのおかげで景気の失速は最小限に抑えられている。(ただし、この借金のツケは今後どうなるのだろうという心配はある)
2019年度予算(第一学習社『政治・経済』教科書より転載)
2020年度予算(第二次補正予算後)
確かにコロナウィルス対策は後手後手になったという批判はある。しかし、ほかのだれが総理であったとしても大して違いはなかったのではないか。むしろ、コロナ対策に手を取られて憲法改正が後退したことは、見方によっては菅内閣の貢献であったとみることができるかもしれない。