




「なんだろう?」


車を家に向かって走らせながら、何事だったのか訊いた。
「車が着くちょっと前に、女の子が歩道でこけて、ケータイを落としたのに気付かずに走って行ったんで、それを拾って届けてやってん。そばのマンションに入るの見てたし、入口の所にいたから渡してきた」
そう言われれば、車を止めようとしていた時に、若い女性が濡れた歩道で立ち上がろうとしていたのを見たなぁ。あれは滑ってこけた女性やったんやな

ふ~ん、それにしても、雨がざんざか降って暗い歩道で、息子はよくケータイに気付いたものだ。しかも、女性が走って行った場所までちゃんと見届けていて、自分が濡れるのも構わずに、迷うことなく届けるなんて、なかなかのジェントルマンじゃないか、我が息子よ

いや、案外、それが可愛い女の子で、ずっと目で追ってたのかもしれないな(笑)。
まぁ、人のために、すんなりと体が動く息子を、ちょっと見直した私でした
