幼いとき歩いた街、
銭湯、床屋、駄菓子屋、酒屋、金物屋、スーパー、水上警察...。
路地裏は、人ひとり通れるくらいのショートカットの道。
魚市場が細長く広がり、魚の匂いがする。
いつか、孫たちを連れて歩いてみたいと思っていた。
けれど、今は、その道も街角も無い。
あるのは記憶に残る風景だけ。
いつかその風景も消えゆく。
復興した道、道幅、住宅の配置、新しい風景に生まれ変わる今。
新しい風景から始まる、新しい世代の人たちの記憶。
それが自分と同じ風景の記憶になる。
実は、そんな時代をいくつか経てきたはずだ。
それでいい。
震災の記憶だけ携えていれば...。