ネットフリックスで配信中の「私の解放日誌」。
キム・ジウォン、ソン・ソック、イ・ミンギ、イエルが主なキャストで、韓国ソウルから1時間40分離れた郊外、サンポ市を舞台にしたお話。
泣いて、泣いて、泣きまくった「私のおじさん」(イ・ソンギュンとIUが主演)の脚本家が、再度 兄弟を軸に描く人間ドラマ。
田舎だ、不便だ、車がない、などと、なんだかんだ文句ばっかりの3兄妹だけど、ソウルに引っ越すわけでもなく、バスと電車を乗り継いで ソウルの職場まで黙々と通う。
寡黙すぎる父はシンクを黙々と作り続け、眉間のシワが深く刻まれた母は、文句を言いながらも家族の世話を献身的に焼く。
そんなヨム家に、いつしか、見知らぬ男が入り込む。
「ク氏」ということしかわからないが、クさんは父親が営む「サンポシンク」で働き出す。
寡黙な父と、何も語らないクさんは、いつしか良きパートナーとなり どこから来たとも聞かず、語らず、日々は流れていく。
そんなある日、両親に借金がバレたくない末っ子のミジョンは、クさんに督促状の受け取りを頼むのだった。
サンポシンクで日中は黙々と働き、時にはヨム家の畑仕事も手伝い、時にはヨム家の食卓で食事をとり、それ以外の時間はただただ焼酎を飲み続けるクさん。 見るからに訳ありで、だけど誰も、何も聞くことはない。
だが・・・鬱屈した人生、薄っぺらい同僚との時間、クズのような上司の自分に対する扱い、自分を取り巻く全てに怒りにも似た感情を抱き続けていたミジョンは、クさんのその、退廃的な姿にまで悪態をつく。
「そんなことしているんなら、私を崇めて」
愛なんかじゃだめ。崇めて、と・・・。
スマホで「チュアン(추앙)」という単語を調べるクさん。
何もしたくなかったのに、誰とも関わり合いたくなかったのに ミジョンはクさんにためらいもなく近づいていく・・・。
クさんとミジョンはまるで水草のように、近づいては離れ、離れては寄り添い・・・。クさんの瞳は気付くとミジョンを追うようになる。
そしてある日、農作業の合間に、ミジョンの帽子が風に飛ばされる。
どうやって取りに行こう・・・と途方に暮れるミジョンに「そこにいろ」と短く声をかけるクさん。
彼は大きく助走を取り 一気に谷を飛び越え ミジョンの帽子にたどり着く。
あっけに取られるヨム家の人々・・・。
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これが4話まで。
退廃的で、色気ダダ漏れのソン・ソック。
この先、どうしてクさんがこの街にやってきたのか、もちろんわかってくるのだけれど、どうしようもない思いを抱えて生きる、むしろ「普通に」生きることが辛いミジョンは、嗅覚でクさんを欲したのだと思う。
自分よりももっともっと人生を投げて、常に酒瓶を抱え、虚な目で生きているこの男。
そんなことをしているくらいなら、一度くらい誰かのために生きたらいい。そして自分も、一度くらい本気で誰かから崇められ、誰かの顔色を見ることなく、心のままに、全てから解放されて生きてみたい。
このミジョンの気持ちがとてもわかるのだ。
他人と連むことが苦手で、人生も一人で生きていくことを結局選んだワタシ。
深い深いセリフが連なるこのドラマ。
ワタシがこの沼にハマるのは、あっという間だった。