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いろりもみじの物語-2

2022-10-13 01:25:37 | 日記
師走の朝は寒く、起きるのはつらい

それでも、自分の店に出向かなくてはならない。

薬屋・煌々堂の店主与一は、朝餉の前に一服しようと、さっさと着替えて女中を待った。

二人の女中はいつも通り5時50分にやってきて、おはようございますとだけ口にし、火鉢と煙管(キセル)を置いていった。

与一はのそりと足を崩し、煙管(キセル)には手を付けず、火鉢に手をかざす。

乾いた喉を早く潤したい。

再び女中が来るのを待つ間、与一は炭を見つめていた。

外はしんと寒く、風が吹くため障子を開ける気にもなれない。

ふと、手元の炭が爆ぜた。

パチッ

炭の焼きが甘いのか。

見つめていると、パチッパチッと線香花火のように爆ぜだした。

思わず引こうとした与一の手を包むように、火花が爆ぜる。

それはさながら風に舞うもみじのようであった。

手を引っ込めることもせず、与一はもみじの形をした炎に見惚れた。

店のことも喉の渇きも忘れ、炎に魅入っていると

「失礼します」

と襖が開き女中が白湯を持ってきた。

目が火鉢から離れ、与一は手に痛みを感じた。

「あついっ」

思わず抱いた手は、両方とも色が変わるほど火傷していた。

女中は白湯を取りこぼした。

呻く主人の目の前の火鉢では、炭が白く灰がちになっていた。

その中に、一枚のもみじが落ちていたが、そんなことは気にならない。

急いで廊下を駆けて助けを呼びに行った。





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もい
(いろりもみじとは、もいの編み物作品のもみじの名前です)


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