地理講義   

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36.河岸段丘は安全か 沼田と仙台

2011年04月19日 | 地理講義
日本の河川は滝
日本の河川は、源流から河口まで、勾配が急である。明治政府に河川改修のために招聘されたオランダ人砂防技術者デ=レーケ(1842~1913年)は、「日本の河川は、川ではない。滝である」と語った。
デ=レーケが見たのは、富山県の常願寺川である。
常願寺川は立山連峰北の俣岳(2662m)から富山湾まで56kmの短い河川である。大陸の長大河川と比較すれば、常願寺川は滝のような急流である。



河川は滝のような急流河川であってもなくても、一般的には指数関数のグラフの形になる。上流ほど急流であり、下流ほど流れが緩やかである。
上流は一般に山地であり、山地は隆起傾向にある。山地の隆起速度は、大きくても年1cm程度であり、見た目には分からない。しかし、山地を流れる河川は、隆起分を削り続けて、元の指数曲線を維持する。これが侵食作用である。山地がひたすら隆起を続けるならば侵食作用も続いて、V字型の谷がつくられる。
もし、山地は隆起傾向にありながらも、短期的には停止あるいは沈降するならば、長期的には侵食谷ができるが、短期的には堆積平野ができる。侵食作用と堆積作用をくりかえしながらも隆起すれば、その河川には河岸段丘ができる。



群馬県沼田市の河岸段丘(片品川。画像をクリックすると拡大)


河岸段丘と集落(河岸段丘は洪積台地。沖積平野ではないが)
河岸段丘は沖積平野の延長上にあったり、山中の谷間が河岸段丘にあったりする。例えば、片品川と利根川の合流点に近い群馬県沼田市は、河岸段丘面上にできた、人口5万人の城下町である。
JR上越線は利根川沿いの段丘低位面を走り、沼田駅と沼田の市街地との間には高度差60mの段丘崖がある。急崖を徒歩で上り下りするのは容易ではなく、段丘崖に斜めにつくられた市道をバスで往復することになる。高度差の大きな段丘崖は城下町としては強固な防衛線になったが、現在は交通や市街地の発展を阻害するマイナス要因となっている。
関越道路が河岸段丘の凹凸を橋で越え、自動車で各地と結ばれるようになった。しかし、高速道路は有料であり、しかもインターチェンジのある地点に頻繁に用事があるとは限らない。首都圏と自動車で直結しているから農産物・工業製品の定期的出荷には役立つが、生活道路としては余り役立たない。
段丘面の広さはほぼ水平であり、稲作にも畑作にも適している。高位段丘面は用水不足に耐える野菜・果樹栽培、低位段丘面は用水を得やすい稲作に向いている。しかし、段丘面は沼田盆地のような広さであることはまれであり、全国各地の河岸段丘はせまく、それを人為的にさらに狭い平面を増やした棚田や段々畑が見られる。
河岸段丘は隆起傾向の山地に見られるだけではない。中流・下流の平野が隆起すれば、河岸段丘ができる。河岸段丘は自然災害の面からは、集落立地に適している。例えば洪水・津波は低位段丘面で止まり、中位・高位段丘面には及ばない。ほとんどの大都市の古い市街地や高級住宅地は、段丘面につくられている。



仙台市の市街地は広瀬川下流の河岸段丘上にできた。下町・中町・上町の段丘面は商店街である。台原は傾斜のゆるやかな段丘崖と、平坦な段丘面とにできた住宅地である。仙台市は、河岸段丘にできた商店街・住宅地に関しては、洪水・津波の災害は少ない。
市街地東部は、名取川・七北田川などの堆積による仙台平野である。川からは洪水、海からは高波・高潮・津波の被害を受けやすい低地である。
2011年3月11日の東日本大震災では、仙台平野は地震と津波により、壊滅的な被害を受けた。しかし、高度20m以上の仙台市街地は、地震の被害は大きかったが、巨大津波の襲来はなかった。







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