ブーゲンビリアのきちきち日記

神奈川の米軍基地のある街から毎日更新。猫と花と沖縄が好き。基地と原発はいらない。

週のはじめに考える ベルリンの種、日本の芽(東京新聞社説)

2012年11月25日 12時41分09秒 | その他いろいろ(原発)
写真は11月24日の紅葉。


東京新聞社説より

週のはじめに考える ベルリンの種、日本の芽
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012112502000135.html

結局何も変わらないさと、あきらめていませんか。でも自分自身が変わらないのに、世の中や政治が変わるわけがない。総選挙。明日を変える種まく日。

 西高東低の気圧配置が天気図に、縦縞(たてじま)模様を描いています。

 晴天乱流。突然の衆院選に驚きながら、名古屋大学環境学研究科特任准教授の杉山範子さんは、この春留学先のベルリンで見た光景を懐かしく思い出しています。

 気候政策を専攻する杉山さんは、今年一月から半年間、ベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授のもとで、主に欧州連合(EU)の温暖化対策の研究に取り組みました。ミランダさんは、ドイツの脱原発を決定づけた倫理委員会の一員です。
◆メイフェストの約束

 気候政策、とりわけ温暖化対策は、エネルギー問題と切り離すことができません。

 杉山さんは、現地の友人に紹介されたベルリン市民エネルギー会議(BET)の活動に興味を覚え、その団体が署名活動をするというクロイツベルク地区のメイフェスト(五月祭)、日本でいうメーデーのイベントを訪れました。

 ドイツでは、多くの都市で公営の「都市事業団」が、電力、ガス、地域熱など多様なエネルギーを供給しています。ところが、首都ベルリンにはそれがありません。

 昨年夏に設立されたBETは、エネルギー供給は、地方自治体の公共サービスの一部として行われるべきだと考えます。そして、環境のためだけでなく、社会的、民主的な立場から、受益者である市民自身が、自らの手で、それをコントロールすべきなのだと。

 市内のエネルギー需給に関する決定に、市民が直接参画し、100%、再生可能エネルギーで暮らしていくのが目標です。

 ベルリンの州法では、二万人の署名を集めると、議会に対して条例の制定を求める「市民発議」が可能です。
◆そうしたいなら…

 クロイツベルクは、トルコ人移民の多い地区、メイフェストはその名の通り、地域を挙げてのお祭りでした。通りでは、ロックバンドの演奏や大道芸。広場には、トルコ料理の出店が並び、BETのテントはその中で、ひときわ静かに見えました。

 声高に何かを訴えるわけではなく、ビラを配るわけでもなく、ボランティアの男女が数人とデスクが一つ。それでも、最新のファッションで決めたカップルや幼子を肩車したままのお父さん、ワインのボトルを手にした大学生…。ごく普通の“市民”がひっきりなしに立ち止まり、青年たちの話に耳を傾け、署名をし、署名用紙を持ち帰っていくのです。

 社会的、民主的なエネルギー供給という考え方もさることながら、そこに集まる多様な人々の表情が、杉山さんには新鮮でした。

 お天気の話をするように、環境を語り、エネルギーを話し合い、公平を議論し、正義を求める市民たち。自分たちのことは自分たちで決めたいと考えて、行動できる生活者。「うらやましい」と感じた杉山さんはテントに駆け寄って、ボランティアの一人に話しかけました。

 「名前を書いてもいいですか」

 杉山さんは滞在中、ベルリンに市民登録をしましたが、期限は残りあと二カ月でした。「無効になるかもしれないですが」と重ねて問うと、「あなたがそうしたいなら…」と青年は笑顔を見せてくれました。

 七月までに三万六千の署名が集まりました。その中に自分の名前があることを、杉山さんは誇らしく思っています。

 BETがめざすもの。それは、大切な熱や電気を自治体に委ねてしまうことではありません。市民がそれに関心を持ち、かかわり続ける仕組みを築くこと。つまり、自治なのです。

 帰国後杉山さんは、BETと同じ志を持つ中部エネルギー市民会議の呼び掛け人として、活動を続けています。「地域のエネルギーは地域で決める」が目標です。
◆種をまき、育てる人に

 日本も変化し始めました。3・11の衝撃と危機感をバネに、福島のお母さんたちや、首相官邸前のデモに集まる普通の人々が、自らの進むべき方向を自らの手で決めようと、衆院選に向けて訴えを強めています。正義と公平を求める市民の行動が、本当に政治を変える力になるかもしれません。

 明日の天気はわかりません。でも、思いをこめて名前を書けば、それがたくさん集まれば、いつか明日は変えられる。

 未来を信じ、希望を持って、明日という花の種をまく。水をやり、肥料を与えて育て続ける約束をする。投票とは、そういうものかもしれません。



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