旅行に行って買ってきたとやらで、
テーブルの上にお菓子が置いてありました。
中でも目を引いたのは草もちっぽいものです。
最近和菓子も結構好きなことに加え、
近所のかたからいただいた……
ちまき、でしょうか。草もちの中にあんこを
いれたものを竹の葉で包んだようなものが
売り物とは違う、もきもきした歯ごたえと
さわやかな植物の香りがして楽しんでいるものに
類似していたので、期待したのです。
一応、パックには『しおもち』と書いてありました。
そう書いてあるからには、
巣鴨あたりで売っていた、塩大福みたいに
なにかしらしょっぱいものが入っているのでしょう。
さっそくパックを開けて、いただきました。
……と。
なにかよくわからない気分で一杯になりました。
外側部分は、おもちっぽくありません。
なんというか、飾って一・二日経った
鏡餅みたいな歯ごたえです。
β化が進んだ感じ、ごはんがお米になる感じとでも
いいましょうか……。
そしてあんこ。
なんというか、あんこじゃありません。
やけに塩っぽくて、ごさごさした何かです。
たとえば、へその緒の水分をぬくために
塩の箱につめてもんだような、
シャーロックホームズの何かの話で、
そぎ落とした耳を塩のつまった
小箱にいれてくるような、
ああいうぱさぱさしたものです。
ひとくちかじって瞬間的に思ったのは、
『あ、これはだめだ』でした。
なにかしらわたしの体にあわない成分で
できているのでしょう。
最近、この年まで生きてきてようやく、
自分の体に合うもの、合わないものがあると
わかってきました。
たとえば大の苦手は生牡蠣です。生ガキ。
昔から牡蠣フライが出ても、
ソースを浸るほどかけて、
鼻をつまみながら口に入れるような
食べ方をしていました。
正直、苦手だったのですが、
昔の家では出されたものは
すべて食べなければいけないと
しつけられていたので無理やり嚥下していました。
今の家は、好きな人がいるなら
好きな人がそれを食べればいいという感じで、
もうわたしにカキが出ることはなくなって
ほっとしています。
このカキ、時期になると食料品のチラシに
写真が載ることがありますが、
あれを見ただけで腕に鳥肌が走ります。
たぶん、わたしの体が何か嫌がっているのでしょう。
あとは、にんにくが苦手です。
にんにく入りのものを食べると、
食べているときはまだいいのですが、
食べ終わったあとで胃が焼ける感じがとまらず
ひどいことになります。
外食では普通に使うところもあるので
後悔することもしばしばです。
ということもあるので、
しおもちとやらもわたしの体には
合わないのだろうと思いました。
とりあえず口をつけた部分のほう、
半分を切り取って残りは戻しておきました。
そして吐き出すわけにもいかず、
切り取った部分は食べたのですが……。
次の日テーブルを見たらなくなっていたので
どうだったかを訊いたら、
「まずかった」だそうです。
そう。
あれは『わたしの体に合わない』ではなく、
『だれの口にも合わない』、すなわち『まずい』
というものだったのです。
最近はなにを食べても普通の味だったり、
低くても『おいしくない』だったりしたので
『まずい』というものを忘れていました。
たしか最後に食べたまずいものは、
自作料理の、かぼちゃたちの沈黙だったような。
というところでブログ検索をかけたら、
2006年09月17日の内容に出てきました。
あれは我ながらまずい、いろんな意味でまずいと
思いましたが、今回はそれ以上でした。
いま思うと、しおもちのあんこは
ぐしゃぐしゃにした紙を塩でもんだ感じの
ぱさぱさ感でした。
たぶん……あんまりにすごい味だったので
頭がまずいとすら判断できなかったのでしょう。
あまりにすごかったので写真でも撮ろうと
思ったのですが、もう全部処分されていました。
問に対する答えがそっけなさすぎたので、
もしかしたら捨てたのかもしれないと
思いましたがとりあえず食べたのだとか。
すごい根性です。
だれがあれを好んで、
売り物にするのを了承したのでしょうか。
それとも――あれをおいしいと
思える人がいるのでしょうか。
世の中は広いです。