物部(もののべ)氏というのは、よくわからない氏族です。
武士(もののふ)の元になったとも言われたりもするほどですが、
もののべ、という名前がどこから出ているのかもよくわかりません。
音からすると、『物述べ』と同音で、武士よりもなにか
宗教儀式にでも関わっていたのではないかとさえ思えます。
物部について考えるとき、真っ先に問題となるのは、
『部』がどういう性質のものか、ということです。
たとえば服部(はっとり)氏は、はとりべとも読め、
これは意味語の『部』がついた名前です。
もしこれと同じように物部氏の『部』も意味語であれば、
本体は『物』一字であるということになります。
暇なときにぼちぼちと考えていて、
おそらく『もののべ』というのは何か元に別の単語があって、
『部』を含んでその言葉から持ってきたものだろうとは
思っていました。
それが何かは長いことなぞでしたが、
今日、神様の名前を調べていたら、ふとわかった気がします。
『物部』の読み方は、本来『もののべ』ではなかったのです。
おそらく本家から分かれる際に漢字を変更し、
その漢字に引っ張られて読みが変わっていった結果、
『物部(もののべ)』の漢字と読みになったのでしょう。
変化を逆にたどって言ったところ、
調べたところまでだと、どうも安曇氏と物部氏は同族で、
おそらく同じ先祖から出ているようです。
穂積氏も祖は同じで、穂積と安曇とどちらが古いかと言えば、
これは安曇のほうのようです。
安曇と物部とどちらが古いかと言えば、
これも安曇のほうのようです。
物部氏は古い氏族だとは言われますが、その元となる
もっと古くてもっと力のある氏族は確かにいたのです。
その祖から分離したから物部は物部となったのであって、
『もののふ』の役目から物部が発生したり、
『モノ』を何かするから『モノの部』になったり、
ということはまったくありません。
それは漢字の見た目からもってきただけのこじつけだと思われます。
長年の疑問にひとまず答えができて、ちょっとすっきりしました。