第11話 「堕落の意味」
「ゲンナ号も限界だなぁ〜」
AIのロロナが力なく話す。
ベラーナは人数を計算するように数えて期待と比べてため息をついた。
確かに限界かもしれない。
「…な、なんとかなるよ!」
予定はないもののララは半分怒った口調で話すと、ロロナは疲れたように言った。
「人数も〜積載も〜オーバー〜」
麻生とリリアンが計算しても、ゲンナ号には限界がきていることが分かった。
そうはいってもあてがない。
「とりあえずトキノを待たないとだわ」
リリアンが言うと、沈黙の後トキノから連絡が入った。
「いくつか報告があるけど、これ以上は無理だから帰還するわ」
やたらに連絡が取れない中、恐らくマンホールらしきところからの報告に、捕まっていなかったことの安堵感がみんなにあった。
ロロナが力なく言う。
「何か来るけど分からない〜」
機体に乗っていた守里にもベラーナにも緊張が走った。
信号に気付いたが遠い。
ロロナには解読の力がなかった。
「トキノが戻ってこないとどうしようもないわね…」
リリアンが落ち着かないように、ウロウロしているとハッチが開く。
「戻ったわ…はぁ…」
トキノの声で安心するみんな。
「戻ってきたけど疲れたんじゃない?」
リリアンの安堵の言葉に、トキノは安心させるように言った。
「AIでも疲れることは確かにあるけど、それより報告が先決!」
機体から守里だけ降りたが、ベラーナだけは通信で聞くことにして警戒していた。
トキノの話は2つだけだった。
その2つには大きな意味があることだった。
トキノは簡潔に言うことにした。
「まずはゲラザロナに乗っているアストラーダは、カイリって残酷な弟の先輩で、アベルトの知り合いね。でもここにきたのは妹たちの様子を見にきただけみたい。もう一つが重要なんだけど…「D」はアベルトの育ての親でもあって…守里君…ゲラザロナの創設者よ。友人を裏切ったって話はね。アベルトの親を裏切ったことだわ。それで裏の創設者になったの」
守里はショックでもあったが薄々感じてもいた。
「俺は大丈夫です。親父との記憶が薄いから断片だけしか知らないほどだし…シロハタ・カンパニーのエンジニアならあり得る話かもしれないし…今はアゼラか…裏切りの創設者か…」
ベラーナが通信でトキノに言った。
「親父って裏切りが多いな…」
守里は感じていた。
「親父…アベルトが親を殺したのも本当かどうか分からない…裏の創設者なら何でもする…」
どこでどう歯車は崩れたのか、母親はどうなったのか…
ベラーナが言った。
「戻ってきて早々に悪いが、あの時々見える信号は何だ?」
トキノが分析すると意外なことが分かった。
守里は感傷に浸っている暇はないことを、ベラーナが教えてくれたように感じていた。