20話 「トキノの存在」
リリアンは微笑ましく寝顔を見ていた。
いつの間にかキッチンでララとカンナ、トキノは顔を伏せるように眠っていた。
緊張すると逃げ出したくなって八つ当たりをしていたララ。
セイナは13歳とは思えないほど落ち着いているのに、ララはまさに年頃。
カンナもララと同じ17歳の頃には、彼氏ができた振られたと騒いだこともあった。
こんな光景が続けば良いのに、でもそういかないことも知っていた。
そっとベラーナが現れ、女性陣だらけに驚いいてギョっとしたようなそぶりを見せ、去ろうとしていると、リリアンが手招きをした。
通路に呼ぶとリリアンがベラーナに言った。
「カンナから聞いたんだけど…彼女がいるとか…でも…」
まで言うとベラーナが真剣に答える。
「ジャイワナーゾより黒くて大きい変な形のに蜂の巣ですよ」
リリアンは考え込んでいることがあった。
「何か関係あるんです?カンナに…」
首を横に振って否定してから「ごめんなさいね」と答えた。
「あいつらですよ。問題のやつらは!」
通路の壁を叩こうとしたベラーナは、みんなが寝ていることを知ってやめた。
麻生はあくびをしながら出てきて、ベラーナとリリアンに部屋に来るように伝えた。
「あらま、剣」とベラーナは驚いていると、そっと4人で話し出した。
「カンナやララ、もちろんセイナに言うとパニックになるといけないからここで話すわ」
と、リリアンと麻生は顔を見合わせて話し出そうとするので、息を飲む守里とベラーナ。
トキノの話であることはなんとなく分かった。
「トキノがスパイってことかな?」と唐突にベラーナが言った。
「違うの。トキノはね…ロロナみたいなAIに近い人工知能なのよ」守里とベラーナは意外な答えに驚いた。
「でもトキノは人間と思っている…まあ薄々感じていると思うが」と麻生も続ける。
守里は「本人にも分からないように作るなんて可能なんですか?」と聞くと「気づいているかもしれない部分もあるが、可能は可能じゃ」と麻生は答えた。
「ただこれからを考えると黙っていられないかもしれない」とリリアンが続く。
守里は「発表するんですね?暴れたときには男手が必要、ってわけですよね?」と言うと、麻生が「まさにその通りなんじゃよ。男手は多い方が助かる」と狭い部屋での会話が続く。
ベラーナは「黙ってれば…」まで言うと、守里は「ダメだよ。戦いの途中でパニックは危ない」と言うとベラーナも納得して、夜になって公表するから、みんなの配置を考えるため見取り図を出した。
「なーんで好きな位置にいらんないのぉ?」とララは不服そうに言った。
パッと電気が消えて悲鳴があがると「ハッピーバースディ!えへ」とセイナが言って電気がついた。
目の前にはケーキがある。
麻生とリリアン、守里とベラーナは予想外のことに戸惑った。
「だって今日はベラーナとトキノの誕生日じゃん!えへ!」ベラーナが驚きつつ戸惑っていると、ララとカンナは手をパチンとさせて喜んでいた。
暗かったのはトキノ。
守里がヤバイと思ったとき「知っているけど…知っていたけど…で…も」とトキノが倒れた。
悲鳴とともに動揺し、リリアンはカンナとララとセイナを連れて離れたら転んでしまった。
守里が真っ先に近づくと、息がない。
ベラーナが動揺しているとき、ロロナが青い光のような電気を流した。
麻生が近付こうとすると、守里が「大丈夫です!」と言った。
カンナやララ、セイナが転んだまま動揺していると、トキノの意識が戻った。
「誕生日ありがとう。ベラーナも喜ぼう!」といきなり言うので驚いたまま動かないでいるとトキノが話し出した。
「私が人工知能なこと、去年…26歳のときに知ってたから…」
と微笑んだ。
何のことか分からなかったララやカンナ、セイナはどう思うか、リリアンはハラハラしていると、誰も驚くことがなかった。
守里とベラーナ、麻生やリリアンが顔を見合わせていると「そっかぁ…」とカンナが手を叩いて言った。
そしてトキノを含めて笑い出した。
部屋で揃って相談していたメンバーは何も知らなかった。
「26歳のときね、私は人工知能なのって言ったのよ。そしたらカンナもララもセイナも受け入れてくれたわ」とトキノは話始めた。
「そっか…男性陣とリリアンはいなかったんだもんね」みんなが起き上がった途端、ベラーナと麻生リリアンは座り込んでしまった。
守里だけは「27歳のカンナさん、17歳になったベラーナおめでとう!」
と言うと、座っているメンバーも立っていたカンナやララ、セイナも拍手した。
カンナが「願い事を言って息を吹きかけて!」と話すが、ベラーナは立ち上がれない。
トキノは微笑んで「じゃあ…あたしが…!」とみんなにめがけて吹いたので、辺りに生クリームが舞い散った。