第7話 「倒産」
「とにかく!今を大事にしないと始まらない!」
家のために働いていたが、今後のこともある。
アパートの資金を貯めないと。
サラは朝食を食べ終えてから、ニュースを見る。
分かっていたことだったが、改めて見て驚く。
サラが勤めていたレーラ社の子会社が倒産した。
残った社員が集まっているのが写っているが、逃げられたのか困っている。
もっと見ていたいと思いつつ、時間を見て初出勤に遅れるわけにもいかない。
代わりにアイザックが教えてくれるだろう、なんて考えていた。
寝るのが早く、朝が早い両親に会うことはあまりない。
リノが迎え出てくれていた。
2人で会社内に入るが、サラが驚くほど大きい。
しかもどこに配属されるか聞いていなかった。
「こちらはサラさん。今日から私の元で運転手として働くことになったの」
怪訝そうに1人の男性が言う。
「聞いてはいましたが、初日から中卒の子が…」
「免許もある。誰でも文句があるなら私に言いなさい。学歴にこだわるなんて古いわ」
男性が勢いにも押されて黙る。
それと同時にリノがサラに微笑んで言う。
「まずは出発点はここ。どう成長していくかで今後が変わるわ」
意外に仕事は多かった。
リノの忙しさが分かる。
それだけではなかった。
サラは聞き耳を立てることは好きじゃないが、情報が少し分かった。
押せ押せのノリと引こうとする専務。
このままだと、対立し会社自体がおかしくなる。
こんな時に口笛みたいに呼んだらアイザック来ないかな、なんて考えていた。
出先で書類を預かって、再び車に乗るともう1人が乗る。
一瞬ドキッとするほどアイザックに似ている。
年齢も違うだろうし、どう考えても営業っぽい。
次の場所で降りると、リノは妙な質問をしてきた。
「あの今の人、会ったことがあるようで覚えてないのよ。記憶力悪くなったのかしら?」
運転席と後部座席なので、サラは首を傾けて分からなそぶりを見せる。
その時、これが小さな時の記憶ならリノは会ったことがあるかもと思った。
「ま、いいわ。ところでさっきの資料のコピーまで頼める?運転は終わりよ」
リノの言葉に「はい」と答えて、ちょっと話をしてみた。
「専務はこのままじゃって…」
リノは遮って答える。
「会社が危ないとかじゃないの。倒産したサラの会社みたいな場所はあるから。ニュースは見たの?」
頷くとリノは笑顔で答えた。
「会社に興味があるのね。大物になって私が小さくなるかも」
「とんでもありません!すみません!出しゃばって…」
サラの言葉にリノは微笑んで言った。
「あなたのように興味を持ってくれる情熱がある社員が増えれば…もっと大きな会社になるかもね」
リノの言葉に、ただでさえ大きな会社がもっと大きくなったら見当がつかなかった。
そして、朝のニュースの倒産した会社に集まる社員の顔が浮かんだ。
それと同時に、いつアイザックに会えるのだろう、とも考えていた。
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