第34話 「クリスマスに祝福を」
「いつの間に連絡をとったんです?」
ベラーナがアル・レレン艦長に聞く。
守里とベラーナは一旦シークル艦に戻っていた。
「アメリカ海軍に領空侵犯かどうか聞いたのさ。あっさり『制度は消えているが未確認なら有効』と返事が返ってきたのさ」
守里は知っている。
アメリカとイギリスには領空侵犯制度があったが、現在はないことを。
ただそれを確認するために、アル・レレン艦長が素早い行動をとっていたことは知らなかった。
ベラーナはイタリアにも既にないことは知っていたが、アメリカの制度まで分からなかった。
「いつ廃止になったんです?アメリカは用心深いのに?」
ベラーナの質問に、アル・レレン艦長はあっさり答えた。
「政治のことまで教えてもらえないさ」
ベラーナは不思議そうに、アル・レレン艦長の顔を覗き込んだ。
本当に知らないか確認しようとしたが、アル・レレン艦長が微笑んだ。
「わっ!…いや…その、すみません」
ベラーナは笑った顔を知らないので思わず口にした。
守里も驚いたが、確かに艦の中は何か穏やかに感じる。
「あの…Merry Christmas…って少し過ぎてますけど…その…」
守里は艦長に言うと、初めて声を出してアル・レレン艦長が笑った。
クルーも驚くほどだったらしく、みんなで顔を見合わせ微笑んでいる。
クリスマスを過ぎてから数日経っているが、守里は祝ったことがない。
「気付かれたのかな?…っとまだだった」
アル・レレン艦長が言ったその時、クルーも知らなかったことが起こった。
広報のライと整備のサイが巨大なケーキを持って現れた。
10人は食べれそうなほどの大きさに圧倒されるクルーと守里。
麻生とリリアンが現れる。
状況が読めたが、手作りのケーキに驚いているとベラーナも現れた。
無線でカンナとララが告げた。
「んと!リリアンとセイナが作った手作りクリスマスケーキ!って12月25日は過ぎているけどね!…あ、作ったのは今日だからお腹壊さないわよ!」
セイナが照れたように顔を覗かせる。
「あ…日本風じゃないけどね!」
ケーキには守里とベラーナが機体に乗っている模型がある。
その時クルーが驚く光景があった。
アル・レレン艦長は相変わらず微笑む。
悲しいわけじゃなかった、嬉しかったからだった。
「…ありがとうございます…」
祝ったことのない守里とベラーナは、感激のあまり泣き崩れたのだ。
少し遅れたクリスマスだったが、2人にとって最高の時かもしれない。
誰からともなく、数日経っていたがクリスマスソングが歌われた。
人気のネットショッピングはAmazon(アマゾン)!詳しくはこちら↓