第16話 「策略」
「攻撃方法が増えると、重力の問題があるかもしれないってことはないんですか?」
守里が麻生に質問すると、笑顔で返事が返ってきた。
「そのために少しずつ部品を軽量化しているから問題はないんじゃ」
守里は、そういえば動きが軽くなっているとも感じた。
ベラーナも同じだったのか軽く言った。
「動きが俊敏になった気がするかな。とか言って最初は気のせいかと思ったけどさ」
警戒はアル・レレン艦長のいるシークル艦に任せて、久しぶりにゲンナ号に行くことになった。
カンナやララ、AIのロロナに久しぶりに会う。
「おかえり〜」
ロロナが元気よく言うと、守里は安心した。
一時期は重量オーバーでロロナもヘトヘトになっていたからだった。
カンナは困ったように一言だけ告げた。
「これじゃ、ララの食事係よ…」
守里はカンナやララに言う。
「いざとなったら、協力してもらうことになるからお願いします」
アル・レレン艦長から直接連絡があった。
カンナやララも呼ばれたので緊張が走った。
シークル艦に行くとカンナやララは規模の大きさに圧倒される。
「俺も最初はびっくりしたよ」
ベラーナがカンナに言うと、アル・レレン艦長と艦首にいるシースが現れた。
シースの手には端末のような何かを持っている。
「新生アゼラからの機体じゃない。施設から出てきています。それともそこが拠点か」
そもそも新生アゼラがどこにあるかは分からない。
施設が関係しているんじゃないかもしれない…守里はある想像をして話した。
「施設がどこかに繋がっていて、その場所が…新生アゼラだとしたら…そこってアベルトと戦っていた場所かもしれませんね…」
アル・レレン艦長が興味深く理由を聞く。
「なぜそう思うのかい?」
守里は頭を掻きながら、それでもアル・レレン艦長の目をまっすぐ見て答えた。
「…あの場所は特別重力が重かった。バミューダ海域だったからかもしれませんが…だったら親父が好む場所のはず。昔聞いたことがあって…シロハタ・カンパニーは元はその空間だったとか…人からの話なので正確な情報かは不明ですけど…」
ベラーナが表情を曇らせて言った。
「まあ、確かに重力が重く感じたなぁ。だからかな、異様に感じたこともあった」
守里とベラーナは恐らく同じことを思っていただろう。
「異空間…って言ったらおかしいだろうけど、空間がおかしかったんです。理由はわかりませんが…」
守里の言葉にベラーナが頷く。
アル・レレン艦長も違和感を感じていたようだった。
「何処かの国なら海軍とかきているはず。確かに特殊な空間なのかもしれない。時空には狭間があるらしい」
艦首のシースも同じ意見だったが、おかしな点に気づく。
「異空間なのは合っているかもしれませんが、そんなに簡単に憶測できるのもおかしくありませんか?」
どこへ続いているか分からないことより、簡単に憶測できることがおかしいとすれば…と守里は思った。
「親父やアストラーダの策略かもしれませんね。混乱させるための」
アル・レレン艦長は若いが優れている。
答えはすぐに出た。
「施設から目をそらすためかもしれない。注目する点はジャイワナーゾがどこから発進されたかだ」
シースが答えた。
「2機が施設で1機は分かりませんね」
ベラーナが手を挙げて答える。
「随分面倒なことするじゃん。隠したいよ、って言っているだけに感じるよ。今は施設優先じゃないか?」
アル・レレン艦長は、施設へカンナとララ、ベラーナを向かわせることにした。
いざシークル艦に何かあったら守里がいる。
素早い行動にはみんなが慣れていた。
すぐに急いで行動すると同時に、守里は残りの1機にも注意するため機体に乗って準備をした。