第2話 「訓練=転勤」
「特殊能力…」カトラの言葉に困惑する。
アルバ ハジメには聞きたいことがあったがカトラは話を続けた。
「アルバ君は姿を消すことができる、つまり透明にだ。そして元に戻れる。タイミングとコツがわかれば容易に切り替えもできるようになるはずだ」
カトラの言葉に、アルバ ハジメはそのままの言葉を伝えた。
「つまりカトラさんが知っているってことは、俺は実験でなったんですか?」
カトラは微笑んで「成功例はなかったし、まだ実験段階だったがね」と答える。
アルバ ハジメは「失敗例があるんですか?例えば…」そこまで言うとカトラは手で安心させるように表現して答えた。
「死者はいないから大丈夫だよ。そもそも誰もが何の実験かも知らないしね。何だか気持ち悪いと言っていた者もいるが、すぐに元に戻っている。誰も何をしているかすら聞いてこなかったよ」
カトラの言葉にアルバ ハジメは疑問があった。
「誰も何も聞いてこないって、ここは製造会社ですよね?不思議に思ってもおかしくは…」
カトラが「製造業として入社したのがアルバ君とコバ君と数名だけだ、って言ったら納得かな?」
なるほど、表向きは製造会社で研究が目的なんだ、とアルバ ハジメは思った。
それが通じたように「表と裏だけど違法じゃないさ。研究者の名前で気付かなかったかい?」
アルバ ハジメはカトラに「数人かもっとかは研究者っていましたね」と答える。
カトラが続けて「まだ習得しきれていないね?」と聞く。
アルバ ハジメは「まだですよ、昨日の今日では流石に…いやそんな早くには。だいたい盗まれたのと関係あるんですか?」とカトラに聞く。
「元に戻る薬品だ、ってなれば納得するかな?」
アルバ ハジメはめまいがしてきた。
すると姿が消えたのかカトラが驚いている。
「どうやって元に戻るか知っているのかい?」カトラの言葉と同時に頭痛がした。
「まだはっきり詳しくも分からないんですけど、めまいで消えて頭痛で元に戻るみたいなんです。でもあえてしているわけでもないし、習得も何も分かりません。それに消えている間に話ができるかも分からないし、知らないことだらけです」と、アルバ ハジメは言った。
カトラが頷きながらすぐに答える。
「アルバ君は訓練のため転勤したことにしよう。手続きはこっちでする」カトラが話をする。
「今の場所からですか?それは…」までアルバ ハジメが話すと、カトラは「形式上だけだよ。実際はそのままで構わない。元に戻るだけじゃなく、悪用もできる薬品だからね」
カトラの言葉に「悪用?」とアルバ ハジメが言う。
「まあいずれ話すよ。まずは転勤の支度でわざとらしくないように社内で話そう」
アルバ ハジメはコバさんなんて言うかな…と考えていた。
幸い会社内でコバ アキラを含めて自宅を知っている人もいない。
その点は困ることもなかった。
ただ「訓練…か」何をどうするかも分からず、カトラがいなくなっても呆然としていた。