46話 「対面」
「俺は大帝国なんて目指していない。そもそもあり得ない世界だよ」
マイールの言葉が聞こえていないように、アベルトはコーヒーを飲んでいた。
マイール艦のコックピットでの2人の会話だった。
「…アベルトは…カイリのこと、悲しくはないのかい?」
相変わらず表情を変えずコーヒーを飲むアベルト。
マイールはいくら言っても聞かないアベルトを知っていた。
「…日本に向かうよ。アベルトはそれで良いんだね?」
マイールが諦めたように聞くと、アベルトが一言。
「やり残しだけ排除する」
アベルトの考えは守里たちと感じていたマイール。
セイナが卑怯と訴えていた眼差しが一瞬浮かんだが、数人のメンバーに告げた。
「目標はゲンナ号全員!全力でアベルトを守るぞ!」
アベルトは片手にコーヒーを持ったまま、その場を黙って立ち去る。
1機で立ち向かおうとするアベルトに、何も言う気はなかったマイール。
そのときマイール艦が揺れた。
衝撃が走ると同時に1人が言った。
「ゲンナ号から攻撃を受けています!あと2機…いや3機…ドッキングして2機になりました!」
「撃ち落とすんだ!!」
マイールは同時にアベルトがどこに向かったか調べると、先に向かっている。
マイール艦からミサイルが発射された。
Gビャクヤにはララ機から預かった、パワークロノスが積んである。
守里たちは準備の段階で、アベルトの行動はおそらく1人で、あとはマイール艦のみと読んでいた。
「Gビャクヤとベラーナ機が配置されたら、ゲンナ号から撃つ。それから攻撃がきたらベラーナ機がアベルトを待つ。おそらくミサイルを撃ってきたらアベルトが先に攻撃を仕掛けるだろう」
麻生とリリアンはみんなに伝えていた。
「守里君はベラーナ機が交戦している間に、パワークロノスをマイール艦に撃つ。マイール艦がGビャクヤを攻撃してきたら、無視をしてアベルトと交戦する。そのあとはタイミングを見てアベルトにパワークロノスを放つ」
先に相談するだけの準備があり、守里もベラーナも、ララもカンナもセイナも麻生とリリアンの話に乗った。
ところが読みは見事に外れていた。
アベルトが日本に向かって飛び立つのが見えた。
守里はそれでも戦艦を狙うためにマイール艦にパワークロノスを放つ。
信じられないほどの威力で爆発したが、完全に撃破ではなかった。
威力が未知だったことで仕方がないと、守里は無線でこう言った。
「俺は日本に向かう!!アベルトを止めないと!!」
ベラーナが戦艦を狙っていながら止めようとすると、Gビャクヤはアベルトを追った。
日本に近づいたとき、アベルトは止まってGビャクヤに向かって言った。
「機体の名前は?君の名前は?」
守里はほとんど叫んで言った。
「Gビャクヤ!!守里剣だ!!」
相変わらず無表情で銃口も向けずアベルトは言った。
「Gビャクヤか…私はアベルト。これはゲラザロナ。1対1の勝負でどうかな?」
うっすら笑みを浮かべてアベルトは言った。
守里は感じていた。
「やるか…やられるか…か」
守里とアベルトとの戦いは1対1になり、ベラーナたちに成す術はなかった。