45話 「裏切り」
「これなら見た目は悪いけど機能は問題ないな」
麻生が言うと、ベラーナ機の修復は終わったが2人の機体の姿は、凄まじい状態だった。
「…セイナ」
守里は帰ってきたセイナに声をかけると、みんなが喜びの声をあげた。
「動かない方が良い」
喜びの顔は一瞬で消えた。
鏡俊一を盾に小林が銃口を向けている。
守里に向かってではなく、セイナに向けて。
麻生が言った。
「場所が知られているのには理由があると思っていたが、小林、あんたがロロナを操作していたのか。あるときからロロナの口調が変わっていたよ」
小林は周りを警戒しながら出口のある倉庫の方に行こうとする。
続けて小林が言った。
「私はマーズの鉱石の大体の場所を話してある。マイールにだけだがね」
偶然が重なった。
ベラーナが工具を落とした音が銃声に聞こえた。
その瞬間、鏡が小林に噛み付く。
小林の銃口は鏡の足の太ももにあたり、痛みに耐えてうずくまった。
また銃声が鳴るとベラーナが叫んだ。
「伏せろ!!」
もう1発が金属の壁を伝って音を立ててどこともなく飛んでいると、あっちこっちで悲鳴が上がった。
弾は小林の頭部に当たって倒れた。
急いで銃を奪う守里と小林を抑え込むベラーナ。
「…息はないよ」
麻生とベラーナは首を振って答える。
同時に誰もが鏡に注目すると、太ももを抑えて平気だと合図をする。
血が出ていない。
そこには守里が持っていた缶バッチが付けてあった。
「ほらさ、剣が…大事にして持っていてくれって預けたじゃん」
衝撃はあったはずで痛みに堪えて、缶バッチを手にする。
『勇気』の部分に当たっていた。
照れている鏡だったが、同時に麻生が言った。
「危険だったが、まさに『勇気』ある行動だった」
カンナとララは安堵とともに小林を見ることができないでいた。
守里と麻生、ベラーナで小林を運んで倉庫に向かう。
一時凌ぎだったが目の前に晒すことはできなかった。
一瞬口を抑えて驚いていたセイナが言った。
「…マイールは…マーズの鉱石の大体の場所を知っているって言ってたの。小林さんと繋がっていたからみたい…」
呆然とするみんなだったが、今は日本に行っていられない。
「迎え撃つ前に準備をしよう」
守里は冷静さを保つよう、自分に言い聞かせるよう告げた。