第17話 「思い出の鏡」
ベラーナ、カンナとララが合流しゲンナ号に行ったものの、強化した機体は乗せられない。
仕方がないとベラーナ機は空に浮いた状態になった。
そこで身を隠すためにも、ゲンナ号は「長野県」の施設に近い山の一角に入った。
トキノがいない中、ロロナだけが頼りだが実態のない状態。
ロロナの力も試される時だった。
「おいおい、着いて早々施設に変なのがいるけど?あれって新型デロリデじゃないの?」
ベラーナが言うと、カンナとララに緊張が走った。
ロロナは呑気に言った。
「気づいていない〜敵意もない〜」
様子を見ているとアストラーダの姿と見たことがない男の姿があり、トキノに送ってみる。
「…やっぱり…あれが剣の親父さんか…」
見ているとアストラーダは笑っていた。
なぜかベラーナには忘れられない光景に思えた。
カンナとララは変わってしまったアストラーダを見ていない。
ベラーナは、アストラーダの笑顔のことは内緒にしておくことにした。
台風が近づいていることを忘れていたのが原因だっただろう。
ベラーナ機の一部の部分が飛んでしまった。
「俺は出撃する!ゲンナ号は守らないといけない!とにかく姿は隠すんだ!」
ベラーナはあえてゲンナ号より反対に向かうと気づかれると思い、上空を通って素早く飛ぶ。
新型デロリデの1機が見えた。
「1機か…後続機はあるか?」
ロロナに聞くと答えがあった。
「後続機はない〜ベラーナ頑張れ〜」
ロロナの設計はセイナがしている。
セイナも連れて来るべきだったかもしれない、とベラーナは思った。
「これで様子を!」
ミサイルを放つと新型デロリデの足の部分をかすった。
火花が飛ぶ。
「慣れていないな…」
ベラーナの読みは当たっていた。
「近づいてもう1発!」
その情報は守里にも入っていたが、手の出しようがない。
これで動いたら反対にシークル艦が手薄になる。
我慢の時だった。
整備士のサイが現れ不思議そうな顔をしている姿が見えた。
「何かありましたか?」
守里の質問にサイが答える。
「…これ誰のだろう?落ちていた古い鏡だけど…半分割れている…」
その時同時に破壊されるような大きな音がした。
新型デロリデの姿が1機消えた。
「大丈夫だぜ?」
ベラーナの声で安心すると、ゲンナ号に鏡の写真を転送した。
「…俺のだよ」
ベラーナが暗い声で言うと、喜びから一転して告げた。
「親父との唯一の思い出だよ…」
守里は言葉を失っていると、ベラーナは引き攣った声で言った。
「案外助けられたのかもしれない…もし…あの新型デロリデの操縦士が慣れていなかったら…」
ベラーナはその言葉の後、沈黙したままゲンナ号に向かった。
麻生もアル・レレンも聞いていたが沈黙し、表情を変えなかった。