さっちゃんの最期。
気づいたらたくさん手元に残ることになった。
最期の外プール。最期の帰舎。最期のおからおにぎり。。。
最期に外で見た日、外に出るのは本当に限界だった。
脚を踏み外す。…だけじゃなく、帰舎時は身体ごと一段落ちた。
さっちゃんが階段を踏み外すこと自体、見たことがなかった。
一番重たかったころだって、小さいころから慣れていたあの階段を
踏み外したりはしなかった。
それなのに。4月に入って何度滑っただろう。
昇りだけでなく降りるのも限界だったんだ。
水しぶきを上げて、倒れこむようにプールへ入るさっちゃん。
それでもプールの方が楽だから。
階段の上でどうしようか迷う仕草だったのはコレが原因だ。
やっと春が来て、暖かくなり、お昼寝にぴったりの季節になったのに。
ジローがごろんとなってる分、より切なかった。
屋内で療養することになったさっちゃん。
こんなに気持ちいい季節なのに。
さっちゃんが見上げていた天窓からはどれだけの太陽が降り注いだのだろう。
星空も見えたかな?
さっちゃんが亡くなって、丸一日。ブルーシートにつつまれたカバ舎。
そして…
さっちゃんは消えた。
あの大きなさっちゃんが。本当に消えた。
今までがすべてウソだったかのように消えてしまった。
毎日、毎日入りたがっていたさっちゃんがいた部屋。
通されたジローは何を思っただろう。
僕が入りたかったのは…さっちゃんがいる部屋なんだけど?
さっちゃんの骨格は隣の科学博物館へとのことだった。
いつの日か、さっちゃんと再会できるだろうか。
多摩のアフリカゾウ、タマオと再会できたように再会できるだろうか。
山のようにたくさんのさっちゃんの写真。
気づいたら、私と一緒に写っているのは一枚もなかった。
私の中に残る。後悔ひとつ。。。