
麻呂はそろそろ15歳かも。
もらって来た。
「お店から預かった。
凄く良い子だから見るだけ
見に来て」と友人から
強力に勧められた。
その子は引き取り手が
なければ殺処分されるの
かもしれなかった。
話したら妹が一緒に来た。
ぺちゃんこな顔の不細工な
犬だと思ったが
目が合うとにこっと笑った。
妹も「笑ったね」と言った。
それまで何匹も犬猫を飼ったが
業(ごう)という名にふさわしく、
物凄い形相で吠えまくる雑種を
亡くしたばかり。
18歳くらいだったか。
年を取るとはむごい事でもある。
生きているのも辛かったと思う。
最期は私がつなぎ忘れていて
道路にフラフラ出たところを
車に轢かれた。
業は晩年大人しくなり
人間のことを多少は
信頼できるよう「進化」して
亡くなった。
悲しかったけれど犬はもう
コリゴリだった。
妹が連れて帰ろうと
言わなければ飼うことは
なかった。
妹宅では飼えないので
我が家で暮らし始めた。
妹が麻呂と名付けた。
いつの間にかハンサムなわんこ
になって「かわいい」と
誰からも褒められた。
狆(ちん)は我慢強く
賢くて生まれつき人間を
信頼している。
犬種によってこんなにも
性格が違うと教えられた。
迷子になった時に役場に
引き取りに行った母が、
「あんたを保護者にしておいた」
と言った。
公的にも私が保護者なのです。
あれから病気をしたり
けがをしたり。
泊りがけの旅行にも何度か
一緒に行った。
散歩好きだったから
暑い時期は涼しい時間帯に
涼しい木陰を探して
色々なところに出かけた。
ドッグカフェ巡りもした。
晩年になったここ2年ほど
冬はこたつの中でひがな一日
坐っているか眠っていた。
ほとんど泣くことがなかった。
春頃まで見えていた目が
失明していると気づいたのは
この夏。
10日ほど前に前足を痛めた。
それから吠えことを覚えた
というか思い出したのか
良く吠えるようになった。
この夏をどうにか乗り切れたが
毎週のように体調が変わり
老化が進むようだ。
先週から片眼がつぶれなく
なった。
寝ていても開いたままだ。
歯がなくなり食べ物を歯茎で
食べるが噛めないようだ。
飲みこみもしづらい様子。
顔中の毛が食べ物の茶色に
染まって背中の毛が
薄くなった。
ハンサムが台無し。
急にみすぼらしい犬になった。
2週間前に吠えるので病院へ
連れて行った。
体重が5キロ超から3キロに
減っていた。
腰骨の間隔が狭くなっていて
痛むはずだとのこと。
ひと月効果があるという
痛み止めの注射をしてもらったが
その日からずっと啼いている。
ミューミューと子猫のようだ。
これまで我慢していた
一生分の甘え声を発している
のかもしれない。
どこかが痛むのか時折
ワンワンと大きな声でも吠える。
認知症のわんこが無駄吠えする
そうだがそれもあるようだ。
私は夕方から不在になるので
夜中の麻呂の状態を良く
知らなかった。
母は「かわいそうでよ~」
「啼くんでよ~」と言うが
あそこまでとは思わなかった。
週末自宅に寝た日、
麻呂の声が階上の端っこの
私の部屋まで聞こえた。
キャインとうめいている。
しばらく抱っこして
寝かせても30分毎に起きては
啼くのを明け方まで繰り返す。
私はほとんど眠れなかった。
翌週はリビングのソファで寝た。
やはり夜中になると起き出して
明け方まで寝たり起きたり。
その都度、声を上げる。
どこが痛むのか分からないが
慣れないソファでこちらの
身体も痛む。
2晩にわたり1時間ごとに
聞こえてくる麻呂の声で、
短い眠りの合間に飛び起きる状態。
22時から5時の間に、おしっこ2回。
その合間に1時間ごとに
ミューという声が聞こえる。
私は飛び起きて階下へ。
半分眠りながら抱っこして
ゆらす。
麻呂は割とすぐに寝るのだが
それも短くて30分。
長くて1時間半。
正直こちらが持たない。
普段は母が面倒を見るが
なすすべなく啼く麻呂を
眺めているだけ。
私が土日に居たので
「お母さんはどこで寝たらええ?」
と何度も何度も聞いてくる。
私が見るからと安心させて
自室で寝させた。
夜中にトイレに起きて来た母の
すぐ背中で麻呂をあやしている
私にも気づかないって(爆)
安心しきった母なのだった。
私は翌日の午前中は死に態だ。
昼間に同じ睡眠時間を稼いでも
疲れが抜けきらない。
週末が明けた。
今日はそんなこんなで私は
機嫌が悪かった。
朝からうろうろしながら
ミューミューと啼く麻呂に
いらっとした。
2日前は良く食べたが昨日から
ほとんど飲まず食わずだ。
麻呂の為に買い物に行き
料理をしたが一口だけで
やめてしまう。
何故か水も飲まない。
甘いものを口に運ぶも
堅く閉じている。
私はいらっとした。
放置してあったケージに放り
込んだ。
麻呂はどさっと倒れこむように
眠った。
片目はうつろなまま開いている。
猛烈にかわいそうになった。
麻呂が食べそうな物がない。
挽肉と大根を煮てみた。
起きたところを見計らって
食べさせると結構食べた。
外の水槽の水も良く飲んだ。
おしっこも出ておしめを装着。
これで少し安心だ。
今晩から当分私は不在。
麻呂はケージの中で何度も
私を呼んでは疲れて眠るの
だろうと思うと切ない。
麻呂と過ごせる時間はもう
それほど長くない。
なるべく一緒に居てやりたい
という思いと世話をする
ストレスとの狭間にいる私だ。
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