にそくにりん

自転車やバイクでのツーリング。ハイキングや登山。そのほかいろいろ。

蒜山 四峠越え

2002年04月27日 | サイクリング
 2002年4月27日(土)。

ゴールデンウイークの初日。天気もよさそうなので出かけることにした。

5時45分、神郷町「親子水車」の駐車場をスタート。R182を新見市に向ける。
新見トンネルを恐る恐る通過、大型車のこないのを祈りながらペダルに力をこめる。できるだけトンネルのないルートを選ぶのだが、自転車でのトンネルは本当にいやなものである。

6時40分、新見市R180から県道r32へ左折。ここからはJR姫新線と平行して進む。
思っていたより道幅もあり交通量も多い。大型車の通行も頻繁である。
姫新線を気動車がのんびりと走り、車窓から学生たちが手を振る。私はピースサインで答える。他愛のないやり取りが楽しい。
檜の濃い緑と若葉の黄緑との鮮やかなコントラスト、まだら模様が季節の明るさを引き立たせる。

7時55分、大佐町刑部駅に立ち寄る。コンビニでもあればと思ったのだが何もない。普段何でもありの生活に慣れてしまい困ったものである。
ここで姫新線とは分かれ、道もr32からr58に入り新庄へ向けて北上する。「開通」の看板が冬季通行止めの道であることを訓える。

田んぼはもう田植えの季節を迎え、蛙の声が聞こえる。久しぶりに聞く蛙の歌がなんと新鮮な驚きを生むことか。オゾン層の破壊が世界の蛙を滅亡に追いやっているとの記事を目にする昨今なおさらである。
r112との分岐で地図を見ていると、通りがかりのおじさんが声をかけてくれる。行き先をいうと親切に教えてくれて自転車ではきついぞとのこと。

山中に入っていくに従い、川の流れの音が大きくなる。高梁川水系の清流は、いろいろな川魚を活かす。ヒラメ、岩魚、アマゴ。渓流釣りのメッカである。
木漏れ日の射す少し広くなったところで休憩。おにぎりを頬張る。野鳥の声を追って辺りを見渡すと、けっこうたくさんの鳥がいる。あまり人を恐れないのか、割と近くまで飛んでくる。
坂路峠に向けひたすら上るこの道は、その名の通り急である。幅3m弱の道を自ら蛇行しながら登っていく。峠近くになると道は九折れになり少し緩くなる。9時30分、標高770mの坂路峠に上りつく。

上った分だけ下りがある。15分ほどで新庄村に下りてくる。
新庄川の土手には芝桜が咲ききれいである。凱旋桜が有名なところ。桜の時季にぜひ来てみたい。出雲街道の要所として栄えた宿場町。
路の両側に桜の古木が並び、水量のある溝川には錦鯉がゆったりと泳ぐ。水の流れる音が心地よく、きれいに掃除の行き届いた町並みに住民の誇りがうかがえる。

再びr58を蒜山に向けて北上。途中の野土路乢が今日のハイライトである。
11時、標高680m「銘水野土路の水」で喉を潤す。道は狭くなり曲がりくねって峠を目指す。振り返ると上ってきた道がはるか下に見える。
足が吊ってきた、少し休憩してストレッチ。大きな雪の塊が埃や落ち葉で茶色になりながら残っている。
朝鍋鷲ヶ山の登山口を過ぎ、坂を上りきる。
目の前が突然開け、蒜山が正面に並ぶ。標高880m野土路乢である。しばしこの景色をたんのう。苦しかった上りを帳消しにする絶景である。

少し下ると三平山の陰に隠れていた大山が蒜山の左に現れる。すばらしい大パノラマである。中国地方一の山の眺めはここだ。
青みがかった灰色の南壁が迫力の大山。女性的なやわらかい稜線の蒜山。気分は最高、大声で「イャッホー!!」と叫びながら駆け下りる。

米子自動車道をくぐりR482に出る。右にとり「蒜山道の駅」に立ち寄る。12時。スタート地点から57km。6時間15分かかった。
昼食にしたいのだが、人が多すぎて食べられそうにない。途中にドライブインでもあればそこで食べるか。そう思い江府方面に向かう。

下った分だけ次は上りである。今日何回目か、上着を脱ぐ。峠まで上るとまた着なくてはならないのだが、とりあえず暑い。脱いだり着たり体温の調整が大変である。
13時、内海乢を越え岡山県から鳥取県へ。快適な下りが続く。

南大山大橋から大仙南壁を振り返る。30年以上も前からスキー行で何度となく見たこの橋からの大山。自転車でこの景色を見ようとは思ってもいなかった。
江尾に出てR181を左に折れ、やっと見つけたドライブインで遅い昼食をとる。

日野町からR180を日南町まで。日南からはr8。伯備線と並走するルートを神郷まで南下する。
しかし、今日はかなり疲れた。もう限界をこえている。尻は痛いし膝も痛くなってきた。
JR伯備線を「特急やくも」が通るたび「あれに乗って帰ろうか」の思いがよぎる。
昼飯を喰いそびれたのが堪えたのだろう、ルート設定を欲張りすぎたのだろう。帰り着けるか不安が募る。

日南町からr8に入り、まだもうひとつ峠を越さなくてはならないのだ。
何も考えないようにして、目の前の路面だけを見てペダルを踏む。走行距離はすでに100kmを越えている。
谷田峠へ真っ直ぐにのびる2次曲線的な上り坂を、歯を食いしばり踏みつける。16時50分、やっと峠を越えて岡山県に入る。

ここまでくれば帰れる。現金なもので、あれほど苦しい上りも峠を越えるとそれまでの苦労が吹っ飛ぶ快適さである。
ほとんど下り坂の惰性だけで距離を稼ぎR182へ。
悲鳴をあげる膝を励まし、痛いお尻をスタンディングでかばいながら17時45分神郷町に帰着。

きつかった本当にきつかった。だけどよかった本当によかった。

 坂路峠、野土路乢、内海乢、谷田峠。四つの峠を巡る旅はなかなか味わいのあるものとなった。
車があまり入らない道は、人や自然の営みの温かさを感じさせてくれる。豊かな山林と美しい流れの川。たくさんの魚、野鳥のさえずり。
残り少ない自然の宝庫を壊してほしくない。文明と自然は常に対峙しているのだ。

    走行距離    125km
    所要時間    12時間
    




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