≪ことばの四季≫ 荒井和生 神奈川新聞より
『五月蠅い』
最近は蠅の姿をあまり見かけませんが
蠅がしつこくまとわりつくことから
「五月蠅い」と書いて
「うるさい」と読みます。
「五月蠅い」を一般化させたのは夏目漱石だとか。
小林一茶の「やれ打つな蠅が手をする足をする」や、
高浜虚子「蠅打を持って出てくる主かな」など
蠅を題材にした名句も多いようです。
もともと「うるさい」とは面倒で煩わしい意味の
「憂迫(うるせし)」が語源という説もあります。
「うっとうしい」の意味で「うるさい」というようになったのは
江戸時代からだそうです。
『五月闇』
五月雨の降るころの暗闇を「五月闇(さつきやみ)」
といいます。
雨雲に覆われた夜の暗さは勿論のこと、
うっそうと葉の茂った木陰、
梅雨曇(つゆぐもり)」に閉じ込められた
室内の暗さ、雨音だけが響く路地や軒下の
暗さなどにも用います。
太陽が不在となる日、
墨で何度も染めたような空の色になり、
気が滅入るような空気に支配されます。
「梅雨の雷(らい)」が追い打ちをかけて、
空を暗い闇へと深めていきます。
梅雨の晴れ間の「五月晴れ」を思い、
「梅雨晴れ」の青空が恋しくなる時分です。
『不如帰』
ホトトギスは時鳥をはじめ、
不如帰、子規、杜宇、蜀魂、霍公鳥とも書きます。
異名も多く文無鳥(あやなしどり)
妹背鳥いもせどり)、菖蒲鳥(あやめどり)
死出の田長(しでのたおさ)、橘鳥(たちばなどり)、
沓出鳥(くつでどり)、早苗鳥(さなえどり)などがあります。
「古に恋うる鳥」というロマンチックな異名もあります。
このホトトギス、ウグイスの巣に托卵して、
ひなを育てさせるという変わった性質を持っています。
子育ては美声の鳥に任せて
自分は昼夜さえずりに余念がありません。
『翡翠』
緑に霞む山の色合いを「翡黛(すいたい)」、
緑の山の気を「翠嵐(すいらん)」といい、
シャワーを浴びいたような色景色です。
「翠」の字には緑の意味があるほか、
鳥の「かわせみ」のことも言います。
かわせみは漢字で書くと「翡翠」
雄が翡。
古名をソニドリ」といって
緑の語源にもなっています。
宝石のヒスイはカワセミの毛色から名付けられたものです。
「赤翡翠」とはアカショウビンこと、
鳴声の「キョウロロ」が異名になって
「水恋鳥(みずこいどり)」とも呼ばれます。
『ひつじ草』
日盛りの池の表面、
じゅうたんを敷き詰めたような緑の葉に
寄り添うようにして咲くスイレンの花。
台地に咲く花にはない独特の風情があります。
白、黄、紅などさまざまな色が楽しめます。
スイレンを漢字で書くと「睡蓮」
「蓮」に似て規則正しく起きたり寝たりする意味があります。
在来種のスイレンのことを古くは「ひつじ草」と呼んでいました。
その由来は、
毎朝開いては、午後二時の「ひつじどき」にしぼみ始めることから。
花言葉は「心の純潔」で「ニンフェア」。
水の精である「ニンフ」が語源です。
指の練習をしました
書違いなどありましたらご判読ください
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