見たり聞いたり

絵画や音楽などの鑑賞したことを

オーディオに賭けた生涯

2006-10-03 18:30:58 | 読書
この本は著者が福井の造り酒屋に生まれてからブリヂストン美術館を経て、その後40を過ぎて会社を設立してから現在に至るまでの自伝です。

会社はヘッドホン、マイクロホンのトップメーカーで現在は会長をされています。

私は友人がこの会社に勤めたことがきっかけで、約40年前の町工場の時代から知るようになりました。

本を読んで、いつも俗に塗れず飄々と美味しそうにお酒を召し上がる著者の姿と老子のイメージが重なりました。

サティ・ピアノ作品集 高橋悠治

2006-02-07 23:52:16 | 音楽
今日は好い天気。
澄んだ空気を感じる時はEric Satieが良く合います。
高橋悠治の演奏は特に好き(高橋アキも)。

サティの作品は余計なものをはぎ取った感じがする。
旋律はシンプル、和声も平行4度、5度などを使い、二声部のままでも平気、リズムというより間(ま)のイメージ。
独創的なのに気取らない、そうかと言って特に受けも狙わない。
だいたいピアノ曲が多いのにピアノ弾きの匂いがしない、不器用で風変わり。
森の木陰でも場末の居酒屋でもふと流れて来そう、サティの音楽は執着しない。
天才でも職人でもない、ナイーブな感性に、何回聴いても新鮮な驚きを感じる。

兵士の物語 Igor Stravinsky

2006-01-31 22:55:17 | 音楽
高校時代、秋葉原ラジオ会館に在った東陽堂という小さなレコード店によく通いました。
秋葉、お茶の水界隈はレコード店が何軒も在りましたが、この店は当時としては珍しい現代、民俗、宗教音楽などの輸入盤を置いていて、とても刺激を受けました。

高校2年の冬、ストコフスキー指揮で語りが英、仏語の2枚組の、この音楽劇のレコードを買った。
聴いたら、出だし(兵士の行進)の2/4のシンコペーションから3/4、2/4、3/8と小節ごとに変わる拍子が解らず、ショックを受けた。
早速、上野文化会館の音楽資料室(学校をさぼってよく利用させて頂きました)でスコアを借りて勉強しました。

これがきっかけでそれまで苦手だった現代、オペラ、バレエ音楽もやっと聴けるようになりました(オペラの大げさな歌い方、バレエの踊りに慣れたのはつい最近ですが)。

ストーリーは「本当に大切なものは1つだけ、いくつも望んではいけない」という感じの寓話です。
音楽で強いショックを受けた所為か、未だにこの教訓から抜け出せずにいます。

「山下洋輔 風雲ジャズ帖」 平凡社ライブラリー

2006-01-22 22:06:11 | 読書
この本も前回の「高橋悠治 コレクション1970年代」 平凡社ライブラリーと
時代が重なります。
今回はJazzです。

Jazz(ジャンル分けって一見便利な様で、ちょっと中に入ろうとすると邪魔)
といっても彼はちょっと変わっていますが・・・。

今回、演奏はさて置き、本の話。
真面目そうに書かれたことが結構いい加減で、いい加減に書かれたことが
結構真面目という面白い本です。

第一章が「ブルー・ノート研究」です。
和声、旋律を学術的に述べていますが、実はいい加減です。
昔、L・バーンスタインはスワヒリの部族は1/4音(クォータートーン)を歌える
と言ってブルー・ノートの説明をしていましたが、私はこれも違うと思います。

旋律、和声を平均律で機能的に解釈しようとするから間違えるので、
唄の初めに平均律なんか有る訳ないと思います。
民謡や演歌のこぶしと似たようなものと考えた方が良いのでは・・・。

そう、話は逸れますが、外れた音程やリズムって結構味が有って
心に染みる場合が有りますよね・・・・?
学生の頃、トラ(臨時雇い)で埼玉県春日部のキャバレーで
村田英雄の伴奏をしたことが有ります。
音程、リズム、テンポ本当にがたがたに崩してくれます(ギャラはとても良かった)。
初め、これでもプロかと吃驚しましたが、彼のは歌ではなく語りなのだと
気付いたら、その世界に入れました(良かった)。

話を戻して、本の後の章は、いい加減に書かれたことが結構真面目、
という中身の濃い(?)本です。

「高橋悠治 コレクション1970年代」 平凡社ライブラリー

2006-01-19 22:40:11 | 読書
この本が書かれた頃、私は音楽に夢中になって、いろいろな曲を聴いたり
演奏したりしていたのですが、
その内、音楽関係の評論や解説も読むようになりました。

音楽の専門家は技術論を、評論家は精神論を書くことに
徐々に違和感を持ち始めた時、この本にも入っている
「小林秀雄『モオツァルト』読書ノート」を読んで共感しました。

本の第三章は「音楽」を作曲、演奏論から抵抗運動として提唱している。
優れた文学者が、必ずしも正しく音楽を評論していないと批判した人が、
同じような轍を踏むことにならなければと、やや危惧します。

余談ですが、彼のサティとバッハのピアノ演奏は大好きです。

「Jass... At The Ohio Union」 George Lewis

2005-06-06 23:04:27 | 音楽
Jazzの書き間違いでは有りません(念のため)。
1954年3月3日、オハイオ州立大学の講堂での演奏。
Jazzというジャンルに留まらず、是非聴いて頂きたいアルバムです。

私がニューオリンズジャズを初めて聴いたのは中学2年の夏休み、近くの大きな会社での「早稲田大学ニューオリンズジャズクラブ」のコンサート、感動しました。
それまで聴いていたディキシーやスゥイングとは違っていた(今思い出してもあの演奏は本物だった)。

George Lewisは高校生時代、水道橋の「Swing」という喫茶店で聴いて以来、最も好きなニューオーリンズジャズのクラリネット奏者。
賛美歌を聴いて感動したことなどめったに無い私ですが、彼の演奏(ニューオーリンズジャズは賛美歌をよく演奏します)を聴くと救いを求める気持ちになります。
この頃、アーカイブズということがよく言われるようになったが、レコードが在って本当に良かったと思います。
譜面で残そうが評論家の本があろうが、レコードがなかったら半分も伝わらないと思う。
演奏の技術がけっして優れているわけではないが、この精神の気高さは他に類を見ない。