琉球新報が
「TPP参加合意 国民の安全脅かすのか」
と題して、
TPPに関して、次に見るような報道を
2013年4月13日付でしています。
☆ 記事URL:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-205269-storytopic-11.html
―― 「見切り発車」をして滑り出した車両が、方向も定まらぬまま加速し始めた格好だ。環太平洋連携協定(TPP)交渉への日本の参加について日米間の事前協議が合意に達したが、事実上、継続協議となる項目が残った。
そもそも影響度が全く見通せない分野も多いから、やはり見切り発車というほかない。政府は少なくとも、経済分野にとどまらない多岐にわたる影響の広がり、大きさを見定め、国民的議論を経た上で、参加の是非を判断してもらいたい。
TPPの交渉入りには参加国すべての了承を取り付けなければならない。参加しているのは11カ国で、うち7カ国は日本の参加を既に支持した。残りの豪州、カナダなども近く合意の見通しだから、米国との事前協議が山場だった。これで7月の日本の交渉参加が確実というが、拙速ではないか。
今回の協議では食品の安全基準を継続協議することになった。「TPP交渉と並行」して日米で協議するというが、それでいいのか。例えば遺伝子組み換え食品は、日本や欧州は表示を義務付けているが、米国には表示制度がない。政府は「米国がこれまで表示撤廃を求めたことはない」というが、今後も求めないとの保証はない。むしろ米国の巨大食品産業の利権を考えれば、撤廃を迫る可能性が高い。国民の生命にかかわる物事が外国に決められかねないのだ。
政府は「安全でない基準を認めることはない」というが、数々の日米交渉の実際を見れば噴飯ものだ。米軍基地を見ても、国民の安全は常にないがしろではないか。
保険分野も米国から条件が付き、かんぽ生命は数年間、新商品を凍結することになった。政府出資の信用力を後ろ盾にした業務拡大に米国の保険会社が懸念を抱いた結果だ。この業界の影響力を証明した感がある。米国の保険会社の市場開拓のため、日本の健康保険制度が解体させられないだろうか。
そもそも政府は、2年前に農水省が7・9兆円の打撃を受けると言っていたTPPの影響額を突然、3兆円に下方修正したが、説得力のある説明をしていない。自民党は重要5品目の「聖域確保ができなければ交渉脱退も辞さない」と決議したが、各国が同意したわけでもない。
影響は未知数だ。農業は崩壊し、国民の安全は脅かされないか。やはり国民的議論に供すべきだ。――
長文でしょう。
でも、誤解を招く
余計な形容がついているわけではありません。
私見では、
この記事が
日本が抱いて当然な懸念を
最も妥当に、
正確に伝えているように感じます。
これに対し、
最も信頼に値すべきはずの
日本の政府は、
どうなんでしょう。
故意に「誤訳」する場合が
今までも
ありました。
しかし、今回は、
これまでの、
そのような行状の域を超えて、
ただ酷く、
ここまで来るともはや
「ねつ造だ」とおっしゃるのは、
内田聖子氏 @uchidashoko です。
ツイッターに次のような
書き込みをなさっていました。
【TPP事前協議】政府はこれまでも「意図的な誤訳」を行ってきているが、これは誤訳の域を超え「捏造」そのもの。国民を愚弄するにもほどがある、まさに「狂気の沙汰」である。新聞各紙もさすがにこれまでの太鼓持ちをしようにもできない状況。このことは徹底的に糾弾する。(リンク)
どうしても
ツイッターでは
説明が不十分になりがちです。
それで、
内田氏は、
ブログにて、
日米で公表された文書の
表現の違いを超えた中身の相違につき、
説明を補っていらっしゃいます。
かなり詳しく、
読み甲斐がありました。
備忘録として
下にまとめ直しておきます。
――
1)対等平等な合意文書というには程遠い、いわば「日本が宿題を米国に出し、それを添削してもらった」ようなものだ。
2)日本政府の発表した「概要」は、明らかに、意図的に国民からの批判を避け都合よく項目が取捨選択されている。
(ア)USTR文書では「保険」の記述が約9行にわたるのに、日本の文書では「その他の非関税障壁」という中の一つとしてふれられているだけである。
(イ)意図的な項目の削除がある。
・保険
・透明性
・投資
・知的財産権
・規格・基準
・政府調達
・競争政策
・急送便
・SPS(植物検疫)
〔検討〕
知的財産権は、TPP交渉でももっとも妥結困難なヘビー・イシューなのに、触れられていない。
「政府調達」については、TPPに入れば例えば公共事業などの入札に外国企業も参入できることになり、これも地域経済や中小企業にとって大きな影響がある。
どうして、これらのものが抜け落ちているのか。そもそも、非関税措置問題というのは、農産品などの関税品目とは異なり、幅広い分野・品目、サービス、規制が対象となる。TPPの怖さというのはむしろこの非関税措置がどれだけ「開放」させられるのか、という問題に尽きるといってもいい。それだけ重要な内容であるのだから、1項目でも落とすことは、国民に対する嘘であり許されることではない。
USTR文書の最後に「両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる」という一文があった。この文章、これで済むと思うな、という脅しに読める――。
3)「日本の農産物への配慮」など合意文書には一言もない。日本政府発表には、「日本の農産物などのセンシティビティがあることを認識しつつ」などという真逆なことが書かれているのである。こうした行為をもって、文書の「ねつ造」という。
――
以上、内田氏ブログ「Act for Democracy」(2013年4月15日月曜日)の記事、
「嘘とごまかしの政府発表―TPP日米事前協議内容を検証する」参照。
☆ 記事URL:http://uchidashoko.blogspot.jp/2013/04/tpp.html
ただ、TPP日米合意に関する日本政府発表の
虚偽を暴くなら
日本がアメリカ商代表部(USTR)との間でした
合意文書を知らねばなりません。
4月12日にあった
TPP 日米事前協議で合意についての
NHKの報道(資料ー1)と、
その報道の下敷きにされたであろう
内閣官房のホームページの記載(資料ー2)、
アメリカ(USTR)側の発表資料である、
本文と非関税措置に関する付属文書(資料ー3)を、
駐米日本国大使・佐々江賢一郎氏と
USTRのマランティス代表代行との間で交わされた
各書簡一通(pdf)のURL(資料ー4)の紹介
とともに転載しておきます。
■資料ー1
「TPP 日米事前協議で合意」
NHKニュース(4月12日 14時0分)
☆ 記事URL:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130412/k10013869521000.html
TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡り、最大の焦点となっていた日本とアメリカの事前協議は、合意文書の最終的な調整の結果、自動車分野ではアメリカの関税撤廃を最大限、後ろ倒しすることや、保険分野など非関税措置についてはTPPの交渉と並行して日米間で協議していくことなどで合意されました。
日本のTPP交渉参加を巡る日米の事前協議は、日本時間の12日未明まで合意文書を最終的に調整したうえで、12日午後に文書を取り交わしました。
合意文書によりますと、アメリカが自動車にかけている関税の撤廃については、TPP交渉で認められる最も長い段階的な引き下げ期間で、最大限、後ろ倒しするとともに、アメリカにとっては、韓国とのFTA=自由貿易協定での関税撤廃の扱いを実質的に上回ることを確認したとしています。
また、アメリカが懸念を示していた自動車分野に関しては、TPP交渉と並行して日米間で別に交渉し、自動車の流通制度や安全基準、補助金制度などについて協議するとしています。
さらに、保険や食品の安全基準などといった非関税措置についても、TPP交渉と並行して日米間で取り組むとしています。
そのうえで、日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品といった配慮すべき品目が両国にあることを認識しながら、TPPのルールづくりで緊密に取り組むことなどを盛り込んでいます。
政府は、こうした内容を12日に開くTPPの関係閣僚会議で確認したうえで、夜にも発表することにしています。
■資料ー2
「日米協議の 合意の概要」
内閣官房TPP政府対策本部(平成25年4月12日)
☆ 記事URL:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130412_gouibunsyo.pdf
1 日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。
2.この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等
3.また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
(1)TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
(2)TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。
4.日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致
■資料ー3
Office of the United States Trade Representative (USTR) 04/12/2013
〔本文〕
「TOWARD THE TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP: U.S. CONSULTATIONS WITH JAPAN」
☆ 記事URL:http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013%20Japan%20OVERVIEW%20factsheet%20FINAL_1.pdf
The United States began formal bilateral consultations with Japan on its interest in joining the Trans-Pacific Partnership (TPP) in February 2012, following an announcement by Japan in November 2011 that it would begin consultations with TPP member countries. Our consultations with Japan have covered a range of issues of bilateral concern with respect to the automotive and insurance sectors and other non-tariff measures, and also have included discussions focusing on Japan’s readiness to meet the TPP’s high standards.
Today, the United States is pleased to announce that we have agreed on a robust package of actions and agreements with Japan, and as a result, the United States has successfully concluded its consultations. These actions and agreements are detailed below.
The United States has identified a range of serious, long-standing concerns related to the automotive sector. Japan has agreed through our consultations that U.S. tariffs on imports of Japanese motor vehicles will be phased out in accordance with the longest staging period for any other product in the TPP negotiations, and that phase-outs of these tariffs will be “back loaded” to take place at the end of the staging period. Furthermore, they agreed that treatment of these U.S. tariffs will substantially exceed the U.S. tariff treatment provided in the US-Korea Free Trade Agreement.
On April 12th, Japan announced its unilateral decision to more than double the number of motor vehicles eligible for import under its Preferential Handling Procedure (PHP), a simpler and faster certification method often used by U.S. auto manufacturers to export to Japan. In the near term, U.S. auto producers will be allowed to export up to 5,000 vehicles annually of each vehicle “type” under the PHP program, compared with the current annual ceiling of 2,000 vehicles per vehicle type.
The United States and Japan have agreed to address a broad range of non-tariff measures in Japan’s automotive sector – including those related to transparency in regulations, standards, certification, “green” and new technology vehicles, and distribution – in a bilateral negotiation parallel to the TPP talks. In addition, they agreed to negotiate a special motor vehicle safeguard provision, as well as a mechanism to “snap back” tariffs as a remedy in dispute settlement cases. The range of issues for negotiation was agreed in a Terms of Reference (TOR – see attached) and the results will be included as enforceable commitments in the final bilateral market access package agreed between the U.S. and Japan in the TPP negotiations.
In recent years, the United States has been underscoring its concern to Japan regarding the lack of a level playing field for U.S. companies in Japan’s insurance market in relation to Japan Post Insurance. Through our consultations, both governments have agreed to address level playing field issues in the TPP negotiations, as well as through parallel negotiations to the TPP talks. In addition, Japan unilaterally announced on April 12th that it will refrain from approving new or modified cancer insurance and/or stand-alone medical products of Japan Post Insurance until it determines that equivalent conditions of competition with private sector insurance suppliers have been established and Japan Post Insurance has a properly functioning business management system in place, which Japan expects will take at least several years to achieve.
OFFICE
〔付属文書〕
☆ 記事URL:http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013%20Japan%20NON-TARIFF%20MEASURES%20factsheet%20FINAL.pdf
The United States has expressed concern regarding a broad range of sectoral and cross-cutting non-tariff measures that impede U.S. exports to Japan. To the extent that these issues are not fully addressed in the TPP negotiations, they will be addressed through a bilateral, parallel mechanism, to be completed by the end of the TPP negotiations. (See supplemental fact sheet for more details, including a description of the issues to be addressed.)
Through our bilateral consultations, the United States has placed a strong emphasis on ensuring that Japan, should it join the TPP negotiations, is prepared to conclude the kind of high standard trade agreement being negotiated by the current 11 TPP partners. In response, and in a Joint Statement with the United States on February 22, Japan made clear that it will subject all goods to negotiation and will join others to achieve a high standard and comprehensive agreement as described in the Outlines of the TPP Agreement announced by TPP leaders on November 12, 2011.
Should Japan join the TPP negotiations, its entry would increase the agreement’s economic potential as negotiations expand to include one of the United States’ biggest trading partners. Japan is currently the United States’ 4th largest goods trading partner. The United States exported $70 billion in goods to Japan in 2012 and $44 billion in services in 2011. Adding Japan to the Trans-Pacific Partnership will lead to further opening of Japan’s market to competitive, Made-in-America goods and services that support jobs here at home – as well as enhance the agreement’s promise as the pathway to a Free Trade Area of the Asia-Pacific. With Japan’s entry, TPP countries would account for nearly 40 percent of global GDP and about one-third of all world trade.
■資料-4
〔補足資料〕
駐米日本国大使・佐々江賢一郎氏とUSTRのマランティス代表代行間の書簡が各1通
☆ 記事URL:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130412_syokan.pdf
「TPP参加合意 国民の安全脅かすのか」
と題して、
TPPに関して、次に見るような報道を
2013年4月13日付でしています。
☆ 記事URL:http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-205269-storytopic-11.html
―― 「見切り発車」をして滑り出した車両が、方向も定まらぬまま加速し始めた格好だ。環太平洋連携協定(TPP)交渉への日本の参加について日米間の事前協議が合意に達したが、事実上、継続協議となる項目が残った。
そもそも影響度が全く見通せない分野も多いから、やはり見切り発車というほかない。政府は少なくとも、経済分野にとどまらない多岐にわたる影響の広がり、大きさを見定め、国民的議論を経た上で、参加の是非を判断してもらいたい。
TPPの交渉入りには参加国すべての了承を取り付けなければならない。参加しているのは11カ国で、うち7カ国は日本の参加を既に支持した。残りの豪州、カナダなども近く合意の見通しだから、米国との事前協議が山場だった。これで7月の日本の交渉参加が確実というが、拙速ではないか。
今回の協議では食品の安全基準を継続協議することになった。「TPP交渉と並行」して日米で協議するというが、それでいいのか。例えば遺伝子組み換え食品は、日本や欧州は表示を義務付けているが、米国には表示制度がない。政府は「米国がこれまで表示撤廃を求めたことはない」というが、今後も求めないとの保証はない。むしろ米国の巨大食品産業の利権を考えれば、撤廃を迫る可能性が高い。国民の生命にかかわる物事が外国に決められかねないのだ。
政府は「安全でない基準を認めることはない」というが、数々の日米交渉の実際を見れば噴飯ものだ。米軍基地を見ても、国民の安全は常にないがしろではないか。
保険分野も米国から条件が付き、かんぽ生命は数年間、新商品を凍結することになった。政府出資の信用力を後ろ盾にした業務拡大に米国の保険会社が懸念を抱いた結果だ。この業界の影響力を証明した感がある。米国の保険会社の市場開拓のため、日本の健康保険制度が解体させられないだろうか。
そもそも政府は、2年前に農水省が7・9兆円の打撃を受けると言っていたTPPの影響額を突然、3兆円に下方修正したが、説得力のある説明をしていない。自民党は重要5品目の「聖域確保ができなければ交渉脱退も辞さない」と決議したが、各国が同意したわけでもない。
影響は未知数だ。農業は崩壊し、国民の安全は脅かされないか。やはり国民的議論に供すべきだ。――
長文でしょう。
でも、誤解を招く
余計な形容がついているわけではありません。
私見では、
この記事が
日本が抱いて当然な懸念を
最も妥当に、
正確に伝えているように感じます。
これに対し、
最も信頼に値すべきはずの
日本の政府は、
どうなんでしょう。
故意に「誤訳」する場合が
今までも
ありました。
しかし、今回は、
これまでの、
そのような行状の域を超えて、
ただ酷く、
ここまで来るともはや
「ねつ造だ」とおっしゃるのは、
内田聖子氏 @uchidashoko です。
ツイッターに次のような
書き込みをなさっていました。
【TPP事前協議】政府はこれまでも「意図的な誤訳」を行ってきているが、これは誤訳の域を超え「捏造」そのもの。国民を愚弄するにもほどがある、まさに「狂気の沙汰」である。新聞各紙もさすがにこれまでの太鼓持ちをしようにもできない状況。このことは徹底的に糾弾する。(リンク)
どうしても
ツイッターでは
説明が不十分になりがちです。
それで、
内田氏は、
ブログにて、
日米で公表された文書の
表現の違いを超えた中身の相違につき、
説明を補っていらっしゃいます。
かなり詳しく、
読み甲斐がありました。
備忘録として
下にまとめ直しておきます。
――
1)対等平等な合意文書というには程遠い、いわば「日本が宿題を米国に出し、それを添削してもらった」ようなものだ。
2)日本政府の発表した「概要」は、明らかに、意図的に国民からの批判を避け都合よく項目が取捨選択されている。
(ア)USTR文書では「保険」の記述が約9行にわたるのに、日本の文書では「その他の非関税障壁」という中の一つとしてふれられているだけである。
(イ)意図的な項目の削除がある。
・保険
・透明性
・投資
・知的財産権
・規格・基準
・政府調達
・競争政策
・急送便
・SPS(植物検疫)
〔検討〕
知的財産権は、TPP交渉でももっとも妥結困難なヘビー・イシューなのに、触れられていない。
「政府調達」については、TPPに入れば例えば公共事業などの入札に外国企業も参入できることになり、これも地域経済や中小企業にとって大きな影響がある。
どうして、これらのものが抜け落ちているのか。そもそも、非関税措置問題というのは、農産品などの関税品目とは異なり、幅広い分野・品目、サービス、規制が対象となる。TPPの怖さというのはむしろこの非関税措置がどれだけ「開放」させられるのか、という問題に尽きるといってもいい。それだけ重要な内容であるのだから、1項目でも落とすことは、国民に対する嘘であり許されることではない。
USTR文書の最後に「両国の合意があれば、これら問題以外にも付け加えることができる」という一文があった。この文章、これで済むと思うな、という脅しに読める――。
3)「日本の農産物への配慮」など合意文書には一言もない。日本政府発表には、「日本の農産物などのセンシティビティがあることを認識しつつ」などという真逆なことが書かれているのである。こうした行為をもって、文書の「ねつ造」という。
――
以上、内田氏ブログ「Act for Democracy」(2013年4月15日月曜日)の記事、
「嘘とごまかしの政府発表―TPP日米事前協議内容を検証する」参照。
☆ 記事URL:http://uchidashoko.blogspot.jp/2013/04/tpp.html
ただ、TPP日米合意に関する日本政府発表の
虚偽を暴くなら
日本がアメリカ商代表部(USTR)との間でした
合意文書を知らねばなりません。
4月12日にあった
TPP 日米事前協議で合意についての
NHKの報道(資料ー1)と、
その報道の下敷きにされたであろう
内閣官房のホームページの記載(資料ー2)、
アメリカ(USTR)側の発表資料である、
本文と非関税措置に関する付属文書(資料ー3)を、
駐米日本国大使・佐々江賢一郎氏と
USTRのマランティス代表代行との間で交わされた
各書簡一通(pdf)のURL(資料ー4)の紹介
とともに転載しておきます。
■資料ー1
「TPP 日米事前協議で合意」
NHKニュース(4月12日 14時0分)
☆ 記事URL:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130412/k10013869521000.html
TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡り、最大の焦点となっていた日本とアメリカの事前協議は、合意文書の最終的な調整の結果、自動車分野ではアメリカの関税撤廃を最大限、後ろ倒しすることや、保険分野など非関税措置についてはTPPの交渉と並行して日米間で協議していくことなどで合意されました。
日本のTPP交渉参加を巡る日米の事前協議は、日本時間の12日未明まで合意文書を最終的に調整したうえで、12日午後に文書を取り交わしました。
合意文書によりますと、アメリカが自動車にかけている関税の撤廃については、TPP交渉で認められる最も長い段階的な引き下げ期間で、最大限、後ろ倒しするとともに、アメリカにとっては、韓国とのFTA=自由貿易協定での関税撤廃の扱いを実質的に上回ることを確認したとしています。
また、アメリカが懸念を示していた自動車分野に関しては、TPP交渉と並行して日米間で別に交渉し、自動車の流通制度や安全基準、補助金制度などについて協議するとしています。
さらに、保険や食品の安全基準などといった非関税措置についても、TPP交渉と並行して日米間で取り組むとしています。
そのうえで、日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品といった配慮すべき品目が両国にあることを認識しながら、TPPのルールづくりで緊密に取り組むことなどを盛り込んでいます。
政府は、こうした内容を12日に開くTPPの関係閣僚会議で確認したうえで、夜にも発表することにしています。
■資料ー2
「日米協議の 合意の概要」
内閣官房TPP政府対策本部(平成25年4月12日)
☆ 記事URL:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130412_gouibunsyo.pdf
1 日本が他の交渉参加国とともに、「TPPの輪郭」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認するともに、日米両国が経済成長促進、二国間貿易拡大、及び法の支配を更に強化するため、共に取り組んでいくこととなった。
2.この目的のため、日米間でTPP交渉と並行して非関税措置に取り組むことを決定。
対象分野:保険、透明性/貿易円滑化、投資、規格・基準、衛生植物検疫措置等
3.また米国が長期にわたり懸念を継続して表明してきた自動車分野の貿易に関し、
(1)TPP交渉と並行して自動車貿易に関する交渉を行なうことを決定。対象事項:透明性、流通、基準、環境対応車/新技術搭載車、財政上のインセンティブ等
(2)TPPの市場アクセス交渉を行なう中で、米国の自動車関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける米国の自動車関税の取り扱いを実質的に上回るものとなることを確認。
4.日本には一定の農産物、米国には一定の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティが両国にあることを認識しつつ、TPPにおけるルール作り及び市場アクセス交渉において緊密に共に取り組むことで一致
■資料ー3
Office of the United States Trade Representative (USTR) 04/12/2013
〔本文〕
「TOWARD THE TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP: U.S. CONSULTATIONS WITH JAPAN」
☆ 記事URL:http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013%20Japan%20OVERVIEW%20factsheet%20FINAL_1.pdf
The United States began formal bilateral consultations with Japan on its interest in joining the Trans-Pacific Partnership (TPP) in February 2012, following an announcement by Japan in November 2011 that it would begin consultations with TPP member countries. Our consultations with Japan have covered a range of issues of bilateral concern with respect to the automotive and insurance sectors and other non-tariff measures, and also have included discussions focusing on Japan’s readiness to meet the TPP’s high standards.
Today, the United States is pleased to announce that we have agreed on a robust package of actions and agreements with Japan, and as a result, the United States has successfully concluded its consultations. These actions and agreements are detailed below.
Automotive
The United States has identified a range of serious, long-standing concerns related to the automotive sector. Japan has agreed through our consultations that U.S. tariffs on imports of Japanese motor vehicles will be phased out in accordance with the longest staging period for any other product in the TPP negotiations, and that phase-outs of these tariffs will be “back loaded” to take place at the end of the staging period. Furthermore, they agreed that treatment of these U.S. tariffs will substantially exceed the U.S. tariff treatment provided in the US-Korea Free Trade Agreement.
On April 12th, Japan announced its unilateral decision to more than double the number of motor vehicles eligible for import under its Preferential Handling Procedure (PHP), a simpler and faster certification method often used by U.S. auto manufacturers to export to Japan. In the near term, U.S. auto producers will be allowed to export up to 5,000 vehicles annually of each vehicle “type” under the PHP program, compared with the current annual ceiling of 2,000 vehicles per vehicle type.
The United States and Japan have agreed to address a broad range of non-tariff measures in Japan’s automotive sector – including those related to transparency in regulations, standards, certification, “green” and new technology vehicles, and distribution – in a bilateral negotiation parallel to the TPP talks. In addition, they agreed to negotiate a special motor vehicle safeguard provision, as well as a mechanism to “snap back” tariffs as a remedy in dispute settlement cases. The range of issues for negotiation was agreed in a Terms of Reference (TOR – see attached) and the results will be included as enforceable commitments in the final bilateral market access package agreed between the U.S. and Japan in the TPP negotiations.
Insurance
In recent years, the United States has been underscoring its concern to Japan regarding the lack of a level playing field for U.S. companies in Japan’s insurance market in relation to Japan Post Insurance. Through our consultations, both governments have agreed to address level playing field issues in the TPP negotiations, as well as through parallel negotiations to the TPP talks. In addition, Japan unilaterally announced on April 12th that it will refrain from approving new or modified cancer insurance and/or stand-alone medical products of Japan Post Insurance until it determines that equivalent conditions of competition with private sector insurance suppliers have been established and Japan Post Insurance has a properly functioning business management system in place, which Japan expects will take at least several years to achieve.
OFFICE
〔付属文書〕
「TOWARD THE TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP: U.S. CONSULTATIONS WITH JAPAN」
(continued)
☆ 記事URL:http://www.ustr.gov/sites/default/files/04132013%20Japan%20NON-TARIFF%20MEASURES%20factsheet%20FINAL.pdf
Non-Tariff Measures
The United States has expressed concern regarding a broad range of sectoral and cross-cutting non-tariff measures that impede U.S. exports to Japan. To the extent that these issues are not fully addressed in the TPP negotiations, they will be addressed through a bilateral, parallel mechanism, to be completed by the end of the TPP negotiations. (See supplemental fact sheet for more details, including a description of the issues to be addressed.)
Japan’s Readiness for a High-Standard Agreement
Through our bilateral consultations, the United States has placed a strong emphasis on ensuring that Japan, should it join the TPP negotiations, is prepared to conclude the kind of high standard trade agreement being negotiated by the current 11 TPP partners. In response, and in a Joint Statement with the United States on February 22, Japan made clear that it will subject all goods to negotiation and will join others to achieve a high standard and comprehensive agreement as described in the Outlines of the TPP Agreement announced by TPP leaders on November 12, 2011.
Growing a Strong Relationship
Should Japan join the TPP negotiations, its entry would increase the agreement’s economic potential as negotiations expand to include one of the United States’ biggest trading partners. Japan is currently the United States’ 4th largest goods trading partner. The United States exported $70 billion in goods to Japan in 2012 and $44 billion in services in 2011. Adding Japan to the Trans-Pacific Partnership will lead to further opening of Japan’s market to competitive, Made-in-America goods and services that support jobs here at home – as well as enhance the agreement’s promise as the pathway to a Free Trade Area of the Asia-Pacific. With Japan’s entry, TPP countries would account for nearly 40 percent of global GDP and about one-third of all world trade.
■資料-4
〔補足資料〕
駐米日本国大使・佐々江賢一郎氏とUSTRのマランティス代表代行間の書簡が各1通
☆ 記事URL:http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2013/130412_syokan.pdf
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