のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

「助けてぇな」

2010年02月03日 03時51分56秒 | Weblog
ナースコールという点では、特記に値する人が

同室にいます。

一番奥にいる患者さんです。

「一番奥」という、このシチュエーションがいいでしょ?

二つほど特殊な技術を持っておられます。

一つは、ナースコールの装置を使って、

ラジオのチューニングをしているかのような音を発せさせることが出来るのです。

ピージイイ・・・という感じです。

この方も他の病室を追い出された口です。

御老体とはいえ、眼光鋭く、猛者(もさ)という言葉がぴったりな方です。

この方のお隣のベッドにいらっしゃった患者さんが

「何の音、何?」と騒ぎ出し

看護婦さんが「ナースコールの音です」と小声で説明していました。

この後、「音にえろう敏感やん。それならば・・・」とばかりに、

「そこの人、助けてぇな」と、カーテン越しに

騒いだ患者さん相手に声をかけていました。

この「助けてぇな」という依頼が二つ目の、特技です。

相手かまわず「助けて」を連呼するわけです。

しかし、何を欲しているのか不明なわけですから、耳に栓、目にハチマキ、

構わずにいるというのが唯一取りうる正しい選択肢になるでしょう。

看護婦さんがあれこれ傍で面倒を見てくれていても、ナースコールで

「助けて~」と別の看護婦さんを呼び出していました。

正直、対応の難しそうな方です。

僕のお袋も「助けて」と、よく言ってました。

それだけに、親しみを感じました。しかし、にもかかわらず

助けは求められたくないという気持ちが優りました。

どんなに頼られようと、どうしようもないのです。

壁にぶち当たった感じで

そんなとき、人間て、無力にできているな、

とつくづく思います。そして、ただ気が沈みます。

お気の毒なことに

お向かいさんは、この「助けて」の標的にされ、

夜中じゅう、声をかけられ続けたのかもしれません。

翌日には、部屋を変わられたようでした。

大人しく身を引かれたわけですけど、

印象ではそう控え目な方ではなかったのですよ。

この日の前日、25日ですが、お隣の食欲旺盛な患者さんの、

前にいた患者さん――Yさんとでもしておきましょうか――に対して

こんな意地悪をしてました。

Yさんは、今隣りにいる方同様に、食欲のある患者さんでした。

ただし、胃ろうの手術を受けられた95歳の方です。

恐らく、大年寄りの「お腹空いた~!」という訴えに

我慢ならんものを感じられたのでしょうね。

明日退院という、奥にいた方(上の奥の方とは別人)と

食事内容について実況中継されていました。

・・・これ、大根の、何たらかんたら。

チョコレートとみかんの話ではないですが、

胃ろうの手術をして

口からはもう食べる目途の立たない方が同室なわけでしょ。

味覚に関する話題は遠慮してやれよ、と思いました。

その、実況中継の主が

ラジオのチューニングのような音に悩まされ、

音の発生源を突き止めたと思ったら、

今度は「助けて」攻撃。

僕も人間、いい気味と思わなかったわけではないです。

ただ、今週末には心臓の大手術をなさるそうです。

「お宅さんとこが気になって、気になって、

ずっと廊下を通る度、部屋を覗いていたんですよ~」

と、1日(月曜日)、僕に話しかけてこられました。

そのとき、心臓の手術の話をされました。

この人も寂しかったんだな、ということがよく分かりました。

僕との縁はたった二日、同室にいたというだけのことです。

親類以上に親類という気持ちになったとして、

寂しかったんだろうな・・・と推測した事実以外に、理由はないです。

しかし、「どうか御無事で」

心からそう祈りました。

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