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毎日新聞:伊藤智永さん / 「まやかしの保守 ついに『日本会議』政治が沈没す」

2017年04月10日 11時04分23秒 | 日本の現状
日本会議を「まやかしの保守」とする記事、発見。

紹介する。

この組織の強みは、

得体の知れないこととしてある。

きっと、

そうなんだろうな。

実は、

選挙のとき、

一票でも欲しい議員が

名刺代わりに

この組織の名前をだすために加入している

というのが組織の実態らしい

(にゃんら!)。

記事には、

――官僚機構はデータの数字とあやふやな伝聞を元に、政治力の幻影を実像と見なして、恐らくは「便宜」や「忖度(そんたく)」を計らい、結果的に幻影に実体を肉付けしてしまった。それが「森友問題」なのではないか。—―

という指摘があった。

問題は、

官僚が被害者というより、そんな妙な団体に目を奪われて

己の保身第一を図っている点だ。


〔資料〕

「まやかしの保守 ついに『日本会議』政治が沈没す」

   サンデー毎日4月9日号(2017年3月28日)

☆ 記事URL:https://mainichi.jp/sunday/articles/20170327/org/00m/010/006000d

▼保守思想を媒介した構造的な腐食

▼安倍首相が「日本会議」を使い捨てる日
「森友疑惑」とは、保守ネットワークを温床とする構造的な腐食ではないか。「保守業界」をえぐり続ける異能記者が、安倍政権が利用した「日本会議」の空疎な正体を明らかにし、まやかしの愛国蜜月政治の落日を論証する。
「安倍晋三先生に敬愛以上のものを持っていた。昭恵夫人ともども、小学校開設にご助力頂いていると認識していた。多くの皆さんの期待に舞い上がっていた。国有地取得では神風が吹いた、見えない力が働いたのかなと感じた。昭恵夫人に助けを頂こうと考えたが、8億円もの想定外の値引きには当時びっくりした。何らかの政治的関与、口利きがあったのだと思う。九分九厘できていたのに、応援してくれていた人が手のひらを返すように離れていく。安倍首相も国会で私を『しつこい人だ』と言い出した。私だけを悪者にする政府や大阪府のやり方に、おかしいぞ、これはどうなっているのかな、不可思議な力が働いているのかなという心境になり、何もかもお話しすることにした」
「森友学園」の籠池泰典理事長が国会の証人喚問で語った証言は、今後「事件」に発展するのかという観点から見れば、カネの授受など真偽の確かでない部分が多かった。だが、なぜこんなスキャンダルが起きたのかという世相や政治潮流への関心で見るなら、安倍首相夫妻をシンボルとする「保守」ネットワークが問題の温床だった構図が、かなり生々しく飲み込めた。
 籠池氏は自ら認めたように、「安倍流保守」の人脈と影響力をもってすれば、殊更に刑事犯罪を問われかねない賄賂を贈ったり、請託をしなくても、行政が特別の配慮や手心を加えてくれて当然と思い込んでいたと言うのだ。
 了見違いも甚だしいが、呆(あき)れたことに、そんな了見違いが第2次安倍政権の4年間に(国有地の取得要望書提出は政権発足の9カ月後)、籠池氏自身も「驚き舞い上がる」ほどのスピード感で、あれよあれよと取り運ばれ、「九分九厘」成就する寸前だったというのだ。「事件」になるかどうかに関係なく、これだけですでに政治腐敗と言わずして何であろう。
 これが氷山の一角でないとは思いにくい。古典的なカネの介在した「疑獄」とは異質の「保守」思想が媒介する構造腐食が進行していると考えるべきではないのか。
「森友問題」の背景を考える時、草の根右派組織「日本会議」の存在を避けて通ることはできない。籠池氏は、「保守業界」で日本会議大阪の幹部(運営委員)として知られていた。日本会議によると、小学校の用地問題が始まる前の2011年1月に退会届を出していたので「関係は絶たれていた」というが、籠池氏を知る人々は会員資格のあるなしに関わらず、「愛国教育に熱心な日本会議系の籠池氏」と認識していた。「瑞穂の國記念小學院」の勧誘パンフレットには、「森友学園にお越しいただいた方々」として過去に講演したことのある安倍昭恵氏や鴻池祥肇(こうのいけよしただ)元防災担当相をはじめ「保守」論客20人の顔写真が掲載されていた。ほとんどが日本会議「系」だ。小学校建設計画に関わった人々は、そこに政治力の影を感じ取っていた。その中には、大阪府や政府の役人たちも含まれていたはずだ。
「保守の名刺代わりになると思って」
 日本会議について論じる時、この「空気感」は大事なポイントである。なぜなら、日本会議は誰がメンバーで、どういう役職者たちが、どこで、いつ、何を、どうやって決めているのか、はっきりしないところに組織の特徴があるからだ。むしろ意図的にあいまいにして、正体不明な雰囲気を強みにしているフシがある。隠されれば、なお知りたくなる。だから昨年来、日本会議の解説本がちょっとしたブームになった。
 日本会議に関するデータは、ギョッとするような数字が並ぶ。与野党の国会議員約290人が「日本会議国会議員懇談会」(会長=平沼赳夫(たけお)元経産相、特別顧問=安倍晋三首相、麻生太郎副総理・財務相)メンバーで、安倍内閣では閣僚19人のうち15人を占める。全47都道府県に地方本部、その下に240超の支部があり、所属する地方議員は約1800人超、憲法改正の早期実現を求める1000万人署名運動を展開し、全国の8割に相当する37都道府県議会で同趣旨の決議を採択の予定……。
 海外メディアが「日本最大の右翼団体」「安倍右派政権を操る巨大勢力」などとおどろおどろしく形容するゆえんだが、実情を取材してみると、国会でも地方でも自覚のある熱心な会員議員はほんの一握りで、大半が「皆が入っていて誘われたから」「保守の名刺代わりになると思って」「多少なりとも票集めの足しになれば」といった動機のあやふやな「会員」らしいと気づく。名簿に載っているのに「私も入っているの?」「よく知らない」「退会した」と答える議員も少なくないので拍子抜けする。
 戦後70年の一昨年、いくつかの土地(群馬県高崎市、長野市、大阪府茨木市、奈良県天理市、福岡県飯塚市、長崎市など)の自治体や地方議会で、戦前・戦中の朝鮮人強制連行に関する史跡の説明板や碑文が「反日的だ」として撤去や書き換えを求める動きが起きた。そうした碑や史跡は全国に何百もある。そのごく一部について、偏った地域で、一斉に同じテーマの同じ要求が、同じ手法で起きた。その傾向と現地の顔ぶれから、日本会議の「組織的キャンペーン」と疑われた(日本会議広報担当者は否定)。
 飯塚市の事例を取材した。市議会で質問した議員は日本会議系だったが、内容に事実誤認があり、迫力に欠け、市側の説明でおとなしく引っ込んだ。その後も質問は繰り返されたが、議員は気乗りしない様子で、地元の事情通は「市内に本家がある麻生家とつながりの深い熱心な日本会議メンバー2人から強く促されたやらせ質問だから」と苦笑していた。断っておくが、まさか麻生氏がやらせたというわけではない。麻生氏の周辺に近づき、その盛名をかたる右派活動家がおそらく独自に動いた。しかし、権勢を誇る副総理の名前が背後にちらつき、よそでも同じ動きがあると報じられれば、事情をよく知らない人々には権力と結びついた「組織」や「勢力」を想像させずにおかない。同じように各地の地方議会で質問や決議を重ねて「量」を大きく見せかけ、実態は空疎な「質」を偽装する、それが日本会議の手法なのだ。
こんな組織で日本国の黒幕?
 そうした外見に引き寄せられる人たちもいて、神奈川県など一部地域で会合は盛況だが、全国会員数は公称約3万8000人。小さくはないが、参院議員を単独で当選させられる集票力はない。1万人規模の全国大会を開く時は、「新宗教」と呼ばれる教義も主張もまちまちな宗教団体の信者で埋め尽くされる。会場をのぞくと、聴衆はまじめそうだが驚くほど熱気がなく、文字通り「動員」されただけとすぐ分かる。選挙の時はそれぞれの推薦候補を抱えているので、集会用の「サクラ」である。
 言わば「張りぼて」だが、それでも1997年の創立以来、国旗国歌法制定(99年)と「愛国」「道徳」を盛り込んだ教育基本法改正(2006年・第1次安倍政権)の実績が、官界に一定の政治力を認知させた。想定外の第2次安倍政権の発足で「ついに政権まで握った」という「黒幕神話」を生んだ。しかし、知れば知るほど理念も実体も空疎なのに当惑するのだ。こんな組織で日本国の黒幕なのか?
 これまで一番腑(ふ)に落ちた分析は、日本会議設立に深く関与し、初期の活動に少なからず力を貸してきた村上正邦・元労相の評価だ。
「日本会議自体にそんな力はない。ビラや集会や地方議会決議といった昔の左翼のやり方をまねて大きく見せかけているだけだ。力を失ったオールド左翼の連中が昔の自分たちの幻影に怯(おび)えている。その幻影の力を安倍が利用しているんで、日本会議が安倍を操っているんじゃない。逆なんだ。安倍は賢い。自分には人を畏怖(いふ)させるものがないと分かっていた。最初は日本会議が安倍を教育しようと近づいたんだが、そのうち安倍は自分に大きな背後勢力が付いていると見せることが政官界への隠然たる影響力になると気づいた。日本会議はいつの間にか立場が逆転したと気づいているし、憲法改正でも靖国参拝でも安倍の日和見路線に不満があるけど、こうなっては利用されるしかない」
 一昨年6月、現在病気療養中の日本会議国会議員懇談会長の平沼氏に永田町の事務所で取材した際、「日本会議の中に外には出せない安倍首相への不満が溜(た)まっているのでは」と率直に尋ねたところ、平沼氏はゆっくり二度うなずいてから、厳しい表情で「それでもしっかり支えていきますよ」と言葉を発したのを思い出す。
 ねじれを抱えながらも「日本会議幻想」は「安倍流保守政治」を支える基盤であり続け、官僚機構はデータの数字とあやふやな伝聞を元に、政治力の幻影を実像と見なして、恐らくは「便宜」や「忖度(そんたく)」を計らい、結果的に幻影に実体を肉付けしてしまった。それが「森友問題」なのではないか。「事件」化に拘(こだわ)るなら、このまま誰が悪者なのか藪(やぶ)の中で終わる可能性もあるが、政治腐食の温床と構図はかなり分かってきた。日本会議系につながっていれば、昭恵夫人と親しくしていたら、この政権では何かおいしいことにありつけそうだという歪(ゆが)んだ政治の風潮があり、「第2、第3の森友問題」もあるのだろうと皆が知ってしまった。
 これをきっかけに、日本会議は安倍政治の柱石から弾(はじ)き出されていくだろう。理由は行政の腐敗だけではない。安倍首相が政権延命を優先し、実は憲法改正や靖国参拝に慎重だからばかりでもない。もっと本格的な政策の根幹で、日本会議と安倍政権にはひびが入っており、これまでフタをされていた「期待外れだ」「迷惑だ」という相互不信が増幅されていくと予見できるからだ。
政権長期化で「目障りな支持層」に
 日本会議は、愛国教育・あるべき家族像・歴史認識といった一見伝統的な理念問題を運動の柱に掲げる。これに対し、安倍内閣はグローバリゼーションを勝ち抜くための経済産業省的ナショナリズムを政権運営の軸に据える。つじつまを合わせようにも、ずれが出る。
 たとえば日本会議の「忠君愛国」「歴史美化」には、ヘイト・スピーチまがいの「排外主義」が紛れ込んでも自浄力が弱い。「あるべき家族像」では女性の立場や役割が従属的になりがちで、経済成長に不可欠な「輝く女性」政策としばしば相容(あいい)れない。そもそも日本会議には本格的な経済政策・国家経営ビジョンがないので、安倍政権が長期化すれば次第に「目障り」で「面倒な」支持層へ追いやられていくのは避けがたい。
「ブレグジット(英国のEU離脱)、トランプ(米政権)・ショック」後の国際情勢に対応した外交政策の転換も、日本会議と安倍政権では発想が異なる。中国・韓国・北朝鮮に対するプライド以外に日本会議の外交政策は不明だが、国際政治学者の田久保忠衛会長は時事通信ワシントン支局長を経験したベテランジャーナリスト出身らしく、「トランプ米大統領ともプーチン露大統領とも仲良くしていれば、中国を牽制(けんせい)できる」と言わんばかりの楽観的な安倍外交に最近、方々で公然と警告を発している。
 田久保氏は日中戦争時代の米中関係、ニクソン米大統領が電撃訪中した米中接近の歴史的教訓から、トランプ政権が習近平・国家主席の「新型大国関係」(米中2大国=G2で太平洋をはじめとする国際関係を仕切ろうという戦略的互恵関係)路線に同調する可能性は否定できないと指摘。最悪の展開を避けるため、今こそ日本が先に中国との融和・協調路線をとるべきだと主張している。領土問題棚上げの日露交渉進展にも大反対だ。
 経済・外交政策の骨格で不協和音が大きくなりつつある時、「森友問題」は起きた。スキャンダルはウヤムヤにできたとしても、長期政権の路線問題は簡単に溝が埋まらない。遅かれ早かれ「日本会議政治」の地盤沈下はあらわになる。「森友問題」は、その思いがけない呼び水となる。

いとう・ともなが
 1962年東京生まれ。毎日新聞政治部、ジュネーブ特派員を経て、編集局編集委員。毎月第1土曜日の朝刊にコラム「時の在りか」を執筆。著書に『靖国戦後秘史―A級戦犯を合祀した男』(角川ソフィア文庫)、『靖国と千鳥ケ淵』(講談社+α文庫)ほか
(サンデー毎日4月9日号から)


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