内田樹氏が
「ドイツのあるジャーナリストの日本論」を
翻訳して下さっている。
同氏のサイト「内田樹の研究室」を
訪問すれば読める。
☆ 記事URL:http://blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.php
☆ 原文記事URL:http://www.fccj.or.jp/number-1-shimbun/item/576-on-my-watch.html
そこにあった記述で、
「以下は私の離日に際してのメッセージである」
とされている箇所を
下に引用する。
――私の同僚たちの中には意見の違うものもいるけれど、私自身は日本において報道の自由が脅かされているとは思っていない。たしかに民主党政権下に比べると政府批判の声は低くなってはいるけれど、依然として報道されている。日本の政治的エリートたちの内向き姿勢と、海外メディアとオープンなディスカッションを避ける政府高官たちの無能はいまのところ報道の自由に影響を与えるほどには至っていない。それに、情報を集めるためにはそれ以外にいくらでも方法がある。それでも、民主制においては、政策を国民と国際社会に対して説明することが、どれほど重要であるのかを安倍政権がよく理解していないということはあきらかである。
海外特派員の同僚たちから自民党は広報セクションに英語を話せる職員を配置していないとか、外国人ジャーナリストには資料を提供しないとかいう話を聞いても、私はもう驚かなくなった。海外旅行が多いことを自慢している現在の首相が海外特派員協会で私たちを相手にスピーチするための短い旅についてはこれを固辞していると聞いてももう驚かなくなった。ただ、私の気持ちが沈むのは、この政府が海外メディアに対して秘密主義的であるだけでなく、自国民に対しても秘密主義的であるからである。
過去5年間、私は日本列島を東奔西走してきた。北海道から九州まで東京以外の土地では私が日本に対して敵対的な記事を書いているという非難を受けたことは一度もない。反対に、さまざまな興味深い話題を提供され、全国で気分のよい人々に出会ってきた。
日本は今もまだ世界で最も豊かで、最も開放的な国の一つである。日本に暮らし、日本についてのレポートを送ることは海外特派員にとってまことに楽しい経験である。
私の望みは外国人ジャーナリストが、そしてそれ以上に日本国民が、自分の思いを語り続けることができることである。社会的調和が抑圧や無知から由来することはないということ、そして、真に開かれた健全な民主制こそが過去5年間私が住まっていたこの国にふさわしい目標であると私は信じている。――
上掲記事の紹介を
想田和弘
@KazuhiroSoda さんもツイートでされていた。
――ドイツ高級紙「FAZ」で東京特派員を務めていた、カーステン・ガーミスさんのコラムを内田樹氏が翻訳してくださっている。ドイツ紙に対する、安倍政権の厚顔無恥な圧力の実態。みんな読んどいたほうがいいですよ。
http://blog.tatsuru.com〔11:34 - 2015年4月11日 〕――
幾つか、
安倍政権の厚顔無恥な圧力の実態に触れた部分を
記しておく。
まず、反・公開性について。
「財務大臣麻生太郎は海外ジャーナリストとはついに一度も話し合おうとしなかったし、巨大な財政赤字についての質問にも答えようとしなかった。」
という報告がある。
この無視する態度は、
次の二つの面が指摘されている。
一方では、
海外メディアの取材を快く受けた政府代表者がほとんど一人もいなかったという面において、
そしてもう一方では、
誰であれ
首相の提唱する新しい構想を批判するものは「反日」(Japan basher)と呼んだ
という面において。
後者の指摘は、驚きだった。
「反日」批判は、
ネトウヨたちによって日本国内でこそ猛威を振るっている
という理解をしていたからだ。
しかし、どうも違う…。
外国人相手でさえ「お前は、反日だ」という言葉を吐きつけるほど、
現政権は尊大なのだ。
また、ガーミス氏によると、
攻撃は記者個人に止まらずにドイツの編集部にまで及んだという。
すなわち、カーステン・ガーミス(Carsten Germis)さんの書いた
歴史修正主義についての記事につき、
フランクフルトの総領事が訪れ、「東京」からの抗議を手渡したそうだ。
抗議の理由は、
「中国がこの記事を反日プロパガンダに利用している」
ということのようだ。
これって、
かなり異常ではないか。
編集部にまで苦情を持ち込んで、
記者を使用者責任という方面から縛りつけてやろうという
陰湿な手口を使ったわけだ。
俄かに信じられない話だ。
しかし、記事になっているぐらいなんだから
ほんとにあったのだろう。
我が国の外務省の言い分は、ほとんど、
妄想の世界だ。
「歴史修正主義」が正しいと思うなら、
根拠を示し、
堂々と議論すればいいわけだ。
苦情を持ち込まれたドイツの出版社は、
記事のどの部分が間違っているのか教えて欲しいと求めた。
日本の外交官はそれには答えず
(正確には、「答えられず」というところだろうが)
「金が絡んでいるという風に疑わざるを得ない」といちゃもんをつけたらしい。
そしてガーミス氏の書いた記事の切り抜きを取り出し、
「この記者が親中国プロパガンダ記事を書くのは、中国へのビザ申請を承認してもらうためではないか」
という解釈を述べたという。
記者が自分個人の利益のために
他国に対する情報操作をしているのではないかと絡みついたというわけだ。
この点に関する
難点のつけ方はやくざ者と寸分違わない。
もっともらしく言っても
相手は侮辱として受け取るということが理解できなかったのか。
ガーミス氏は、
(私が? 北京のために金で雇われたスパイ? 私は中国なんて行ったこともないし、ビザ申請をしたこともない。もしこれが日本の新しい目標を世界に理解してもらうための新政府のアプローチであるとしたら、彼らの前途はかなり多難なものだと言わざるを得ない。)
とコメントされている。
2014年に
事態が悪化したようだ。
外務省の役人たちは海外メディアによる政権批判記事を公然と攻撃し始めたとされる。
具体的には、
「『歴史をごまかす』(whitewash the history)という言葉と、安倍のナショナリスト的政策は東アジアだけでなく国際社会においても日本を孤立させるだろうとうアイディア」
に対してだ。
説明し説得するというよりは譴責するという態度で、
ドイツのメディアがなぜ歴史修正主義に対して特別にセンシティブであるのかについて、
耳を貸さなかったとのことだ。
次に、
厚顔無恥な圧力の実態として指摘されるべきは、
利益供与について。
①政府当局者から海外特派員へのランチ招待数が増えていること、
②第二次世界大戦についての日本の見解を広めるための予算が増額されていること、
③そして海外特派員のボスたちがしばしば招待されていること(もちろん飛行機はビジネスクラス)
などが例示されていた。
これでは、国内での寿司友の国外版だ。
ガーミス氏が正式に
総領事から受けた苦情につき、
抗議をしたとき、
「誤解だ」
という返答が返ってきたという。
他国の記者の活動に
「金目当ないしはピザ取得等、下心があって親中国プロパガンダをした」
という言い掛かりをつけ、介入しようとした
その行為が問責されるや
「誤解」で済ませようとする悪知恵に
我々日本国民は、
どんな言葉を持ち得ようか。
嗚呼、
と嘆くほかないんではないか――。
さて、記事は、
日本側の「誤解」という弁明を紹介した後、
上掲の引用箇所、
「離日に際してのメッセージ」に続く。
もう一度、
そのメッセージを読み返して欲しい。
説明責任を怠っている行政の犯罪的な懈怠が
より一層、
鮮やかに見えることだろう。
「ドイツのあるジャーナリストの日本論」を
翻訳して下さっている。
同氏のサイト「内田樹の研究室」を
訪問すれば読める。
☆ 記事URL:http://blog.tatsuru.com/2015/04/10_1343.php
☆ 原文記事URL:http://www.fccj.or.jp/number-1-shimbun/item/576-on-my-watch.html
そこにあった記述で、
「以下は私の離日に際してのメッセージである」
とされている箇所を
下に引用する。
――私の同僚たちの中には意見の違うものもいるけれど、私自身は日本において報道の自由が脅かされているとは思っていない。たしかに民主党政権下に比べると政府批判の声は低くなってはいるけれど、依然として報道されている。日本の政治的エリートたちの内向き姿勢と、海外メディアとオープンなディスカッションを避ける政府高官たちの無能はいまのところ報道の自由に影響を与えるほどには至っていない。それに、情報を集めるためにはそれ以外にいくらでも方法がある。それでも、民主制においては、政策を国民と国際社会に対して説明することが、どれほど重要であるのかを安倍政権がよく理解していないということはあきらかである。
海外特派員の同僚たちから自民党は広報セクションに英語を話せる職員を配置していないとか、外国人ジャーナリストには資料を提供しないとかいう話を聞いても、私はもう驚かなくなった。海外旅行が多いことを自慢している現在の首相が海外特派員協会で私たちを相手にスピーチするための短い旅についてはこれを固辞していると聞いてももう驚かなくなった。ただ、私の気持ちが沈むのは、この政府が海外メディアに対して秘密主義的であるだけでなく、自国民に対しても秘密主義的であるからである。
過去5年間、私は日本列島を東奔西走してきた。北海道から九州まで東京以外の土地では私が日本に対して敵対的な記事を書いているという非難を受けたことは一度もない。反対に、さまざまな興味深い話題を提供され、全国で気分のよい人々に出会ってきた。
日本は今もまだ世界で最も豊かで、最も開放的な国の一つである。日本に暮らし、日本についてのレポートを送ることは海外特派員にとってまことに楽しい経験である。
私の望みは外国人ジャーナリストが、そしてそれ以上に日本国民が、自分の思いを語り続けることができることである。社会的調和が抑圧や無知から由来することはないということ、そして、真に開かれた健全な民主制こそが過去5年間私が住まっていたこの国にふさわしい目標であると私は信じている。――
上掲記事の紹介を
想田和弘
@KazuhiroSoda さんもツイートでされていた。
――ドイツ高級紙「FAZ」で東京特派員を務めていた、カーステン・ガーミスさんのコラムを内田樹氏が翻訳してくださっている。ドイツ紙に対する、安倍政権の厚顔無恥な圧力の実態。みんな読んどいたほうがいいですよ。
http://blog.tatsuru.com〔11:34 - 2015年4月11日 〕――
幾つか、
安倍政権の厚顔無恥な圧力の実態に触れた部分を
記しておく。
まず、反・公開性について。
「財務大臣麻生太郎は海外ジャーナリストとはついに一度も話し合おうとしなかったし、巨大な財政赤字についての質問にも答えようとしなかった。」
という報告がある。
この無視する態度は、
次の二つの面が指摘されている。
一方では、
海外メディアの取材を快く受けた政府代表者がほとんど一人もいなかったという面において、
そしてもう一方では、
誰であれ
首相の提唱する新しい構想を批判するものは「反日」(Japan basher)と呼んだ
という面において。
後者の指摘は、驚きだった。
「反日」批判は、
ネトウヨたちによって日本国内でこそ猛威を振るっている
という理解をしていたからだ。
しかし、どうも違う…。
外国人相手でさえ「お前は、反日だ」という言葉を吐きつけるほど、
現政権は尊大なのだ。
また、ガーミス氏によると、
攻撃は記者個人に止まらずにドイツの編集部にまで及んだという。
すなわち、カーステン・ガーミス(Carsten Germis)さんの書いた
歴史修正主義についての記事につき、
フランクフルトの総領事が訪れ、「東京」からの抗議を手渡したそうだ。
抗議の理由は、
「中国がこの記事を反日プロパガンダに利用している」
ということのようだ。
これって、
かなり異常ではないか。
編集部にまで苦情を持ち込んで、
記者を使用者責任という方面から縛りつけてやろうという
陰湿な手口を使ったわけだ。
俄かに信じられない話だ。
しかし、記事になっているぐらいなんだから
ほんとにあったのだろう。
我が国の外務省の言い分は、ほとんど、
妄想の世界だ。
「歴史修正主義」が正しいと思うなら、
根拠を示し、
堂々と議論すればいいわけだ。
苦情を持ち込まれたドイツの出版社は、
記事のどの部分が間違っているのか教えて欲しいと求めた。
日本の外交官はそれには答えず
(正確には、「答えられず」というところだろうが)
「金が絡んでいるという風に疑わざるを得ない」といちゃもんをつけたらしい。
そしてガーミス氏の書いた記事の切り抜きを取り出し、
「この記者が親中国プロパガンダ記事を書くのは、中国へのビザ申請を承認してもらうためではないか」
という解釈を述べたという。
記者が自分個人の利益のために
他国に対する情報操作をしているのではないかと絡みついたというわけだ。
この点に関する
難点のつけ方はやくざ者と寸分違わない。
もっともらしく言っても
相手は侮辱として受け取るということが理解できなかったのか。
ガーミス氏は、
(私が? 北京のために金で雇われたスパイ? 私は中国なんて行ったこともないし、ビザ申請をしたこともない。もしこれが日本の新しい目標を世界に理解してもらうための新政府のアプローチであるとしたら、彼らの前途はかなり多難なものだと言わざるを得ない。)
とコメントされている。
2014年に
事態が悪化したようだ。
外務省の役人たちは海外メディアによる政権批判記事を公然と攻撃し始めたとされる。
具体的には、
「『歴史をごまかす』(whitewash the history)という言葉と、安倍のナショナリスト的政策は東アジアだけでなく国際社会においても日本を孤立させるだろうとうアイディア」
に対してだ。
説明し説得するというよりは譴責するという態度で、
ドイツのメディアがなぜ歴史修正主義に対して特別にセンシティブであるのかについて、
耳を貸さなかったとのことだ。
次に、
厚顔無恥な圧力の実態として指摘されるべきは、
利益供与について。
①政府当局者から海外特派員へのランチ招待数が増えていること、
②第二次世界大戦についての日本の見解を広めるための予算が増額されていること、
③そして海外特派員のボスたちがしばしば招待されていること(もちろん飛行機はビジネスクラス)
などが例示されていた。
これでは、国内での寿司友の国外版だ。
ガーミス氏が正式に
総領事から受けた苦情につき、
抗議をしたとき、
「誤解だ」
という返答が返ってきたという。
他国の記者の活動に
「金目当ないしはピザ取得等、下心があって親中国プロパガンダをした」
という言い掛かりをつけ、介入しようとした
その行為が問責されるや
「誤解」で済ませようとする悪知恵に
我々日本国民は、
どんな言葉を持ち得ようか。
嗚呼、
と嘆くほかないんではないか――。
さて、記事は、
日本側の「誤解」という弁明を紹介した後、
上掲の引用箇所、
「離日に際してのメッセージ」に続く。
もう一度、
そのメッセージを読み返して欲しい。
説明責任を怠っている行政の犯罪的な懈怠が
より一層、
鮮やかに見えることだろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます