Story
1920年のアイルランド。イギリスの支配によって富は収奪され、市民達は苦しい生活を強いられていた。アイルランド独立の声が大きくなると、イギリス当局は武装警察隊”ブラック・アンド・タンズ”を送り込み、独立派を容赦なく取り締まるのだった。
アイルランド南部の小さな町、コークにも”ブラック・アンド・タンズ”の厳しい取り締まりが及ぶ。コークで生まれ育ったデミアン(キリアン・マーフィー)は、ロンドンの病院での仕事が決まっていたが、ある日、”ブラック・アンド・タンズ”に仲間が殺される事件が起きる。犠牲となった青年の姉シネード(オーラ・フィッツジェラルド)は、デミアンの幼なじみだった。若者達は武器を取って抵抗の闘いを始める事を話し合う。デミアンの兄テディ(ポードリック・ディレーニー)は、彼らのリーダー的な存在だ。強大なイギリス軍相手に勝ち目はないと、一旦は医者になるためロンドンへ行こうとするデミアンであったが、途中、傍若無人なイギリス兵士に敢然と立ち向かう鉄道員のダン(リーアム・カニンガム)とその同僚達を目撃する。デミアンの心の中で何かが動いた。そして彼は、医師への道をあきらめ、仲間とともにアイルランド独立の戦いに身を投じる決意をするのだった。
彼らの闘いの日々が始まる。イギリス軍への襲撃と逃走。捕らえられてテディが激しい拷問に遭う事もあった。かつて医師を目指したデミアンは、仲間を密告した少年を苦悶の末処刑する。独立派達の度重なるイギリス軍への激しいゲリラ攻撃に、遂にイギリスは停戦を申し入れる。しかし、イギリス軍は撤退したものの、結ばれた講和条約はアイルランドの完全な自由を約束するものではなかった。アイルランド人の中でも条約賛成派と反対派の対立が始まり、やがて内戦へと発展する。条約を完全独立への第一歩と考えるテディは、アイルランド自由国軍に、デミアンはダンらとともに条約反対勢力に加わり、かつて共に戦った者同士が銃火を交える事となる。そして、兄弟に悲劇が訪れようとしていた。
2006年/イギリス/ケン・ローチ監督作品
評価 ★★★★☆
アイルランド紛争を市井の人々の立場から描いた物語です。緑の草原の中で何度か繰り返される戦闘シーンが印象的。一方の英軍の傍若無人さと拷問の描写が凄惨な迫力でした。
中盤の高利貸しの裁判シーンが象徴的で、ある意味この映画のクライマックスとなっています。弱者のための戦いが、武器の調達等の現実的な問題から、いつのまにか資金力のある人間についてしまう。理想から戦いをはじめても、いつしか、大義を見失ってしまう過程をリアルに描き出します。ここでの、ダン役のリーアム・カニンガムの信念を曲げない不屈の男らしさが良かった。
女性では、シネード役のオーラ・フィッツジェラルドが清楚な美しさの中に凛とした強さを秘めて素敵でした。
最初の方で、デミアンが裏切った仲間の少年を涙ながらに射殺するシーンがあり、最後にその行為がデミアンに跳ね返ってくる反復展開が強烈な効果です。同じ理念を持って戦っていたはずが、最後に仲間同士の殺し合いになってしまうのは、人間の業というか、現代にも繋がる普遍的なもので、そこがカンヌでパルムドールを受賞した大きな理由だと思いました。
ただ、戦争とディスカッションドラマの融合なら、スペイン内戦を扱った「大地と自由」の方が個人的には好きです。
映画『麦の穂をゆらす風』公式サイト
(「麦の穂をゆらす風」2007年3月 名古屋シネマテークにて鑑賞)
ところで、アイルランド紛争を扱った映画には名作が多いのでこれまで観た映画を総括してみました。
死に行く者への祈り
1987年/イギリス/マイク・ホッジス監督作品/
出演 ミッキー・ローク ボブ・ホスキンス
評価 ★★★★★
ジャック・ヒギンズの原作が傑作なら、映画も傑作になった希有な例。ミッキー・ロークが元IRAを哀感あふれる演技で好演しています。その他、アラン・ベイツの歪んだ倫理観を持ったギャング、かつて兵士だった神父役のボブ・ホスキンスなど、キャラクターも魅力的。思わず2回観てしまった。
(1989年 5月 博多市で鑑賞)
父の祈りを
1993年/イギリス・アメリカ/ジム・シェリダン監督作品/
出演 ダニエル・デイ・ルイス エマ・トンプソン
評価 ★★★★★
騒乱のベルファストで過激分子の冤罪を着せられた若者(ダニエル・ディ・リュイス)が、父の影響で非暴力に目覚めてイギリス当局と闘う息詰まる展開のストーリー。イギリス当局の拷問の過酷さは「麦の穂・・」に通じるものがありました。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
ボクサー
1997年/イギリス/ジム・シェリダン監督作品/
出演 ダニエル・デイ・ルイス エミリー・ワトソン
評価 ★★★★☆
これまたダニエル・デイ・ルイスがボクサー役で、ボクシングをモチーフに紛争の意味を問うています。
(1998年 7月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
マイケル・コリンズ
1996年/アメリカ/ニール・ジョーダン監督作品/
出演 リーアム・ニーソン ジュリア・ロバーツ
評価 ★★★★☆
アイルランド紛争を条約賛成派の側から描いた物語で、「麦の穂・・」と合わせて観ると当時の状況が多面的に理解できますね。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
ナッシング・パーソナル
1995年/アイルランド=イギリス/サディアス・オサリヴァン監督作品/
出演 イアン・ハート ジョン・リンチ
評価 ★★★★☆
ロイヤリスト(北アイルランドの英国帰属を主張)とナショナリスト(アイルランド全島統一派)の対立。抗争の犠牲になる少女が哀しい。
(1997年 3月 名古屋 ゴールドシルバー劇場にて鑑賞)
クライング・ゲーム
1992年/イギリス/ニール・ジョーダン監督作品/
出演 スティーブン・レイ ジェイ・デイヴィッドソン
評価 ★★★☆☆
ジェイ・デイヴィッドソンの正体にあっと驚いて。ペットショップボーイズ プロデュース、ボーイジョージが唱う主題歌が良かった。
(199*年 *月 名古屋 ゴールドシルバー劇場にて鑑賞)
デビル
1997年/アメリカ/アラン・J・パクラ監督作品/
出演 ハリソン・フォード ブラッド・ピット
評価 ★★★☆☆
ブラット・ピットがIRA役でハリソン・フォードと共演。アイリッシュが多いニューヨークの警官社会を上手く物語に組み込んでいたと思います。ラストのブラピの最期があっけなさすぎ?
(1997年 5月 ワーナーマイカルシネマズ桑名にて鑑賞)
ザ・コミットメンツ
1991年/アイルランド/アラン・パーカー監督作品/
出演 ロバート・アーキンズ マイケル・アーニー
評価 ★★★★☆
アイルランドの若者達がロックバンドを結成するお話。紛争は描いてないけど、サックスプレーヤーが”俺は黒人だ”と言う所が、虐げられた彼らの歴史を表してました。
親爺がローマ法王と一緒にプレスリーの写真を飾っている所が笑わせる。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
1920年のアイルランド。イギリスの支配によって富は収奪され、市民達は苦しい生活を強いられていた。アイルランド独立の声が大きくなると、イギリス当局は武装警察隊”ブラック・アンド・タンズ”を送り込み、独立派を容赦なく取り締まるのだった。
アイルランド南部の小さな町、コークにも”ブラック・アンド・タンズ”の厳しい取り締まりが及ぶ。コークで生まれ育ったデミアン(キリアン・マーフィー)は、ロンドンの病院での仕事が決まっていたが、ある日、”ブラック・アンド・タンズ”に仲間が殺される事件が起きる。犠牲となった青年の姉シネード(オーラ・フィッツジェラルド)は、デミアンの幼なじみだった。若者達は武器を取って抵抗の闘いを始める事を話し合う。デミアンの兄テディ(ポードリック・ディレーニー)は、彼らのリーダー的な存在だ。強大なイギリス軍相手に勝ち目はないと、一旦は医者になるためロンドンへ行こうとするデミアンであったが、途中、傍若無人なイギリス兵士に敢然と立ち向かう鉄道員のダン(リーアム・カニンガム)とその同僚達を目撃する。デミアンの心の中で何かが動いた。そして彼は、医師への道をあきらめ、仲間とともにアイルランド独立の戦いに身を投じる決意をするのだった。
彼らの闘いの日々が始まる。イギリス軍への襲撃と逃走。捕らえられてテディが激しい拷問に遭う事もあった。かつて医師を目指したデミアンは、仲間を密告した少年を苦悶の末処刑する。独立派達の度重なるイギリス軍への激しいゲリラ攻撃に、遂にイギリスは停戦を申し入れる。しかし、イギリス軍は撤退したものの、結ばれた講和条約はアイルランドの完全な自由を約束するものではなかった。アイルランド人の中でも条約賛成派と反対派の対立が始まり、やがて内戦へと発展する。条約を完全独立への第一歩と考えるテディは、アイルランド自由国軍に、デミアンはダンらとともに条約反対勢力に加わり、かつて共に戦った者同士が銃火を交える事となる。そして、兄弟に悲劇が訪れようとしていた。
2006年/イギリス/ケン・ローチ監督作品
評価 ★★★★☆
アイルランド紛争を市井の人々の立場から描いた物語です。緑の草原の中で何度か繰り返される戦闘シーンが印象的。一方の英軍の傍若無人さと拷問の描写が凄惨な迫力でした。
中盤の高利貸しの裁判シーンが象徴的で、ある意味この映画のクライマックスとなっています。弱者のための戦いが、武器の調達等の現実的な問題から、いつのまにか資金力のある人間についてしまう。理想から戦いをはじめても、いつしか、大義を見失ってしまう過程をリアルに描き出します。ここでの、ダン役のリーアム・カニンガムの信念を曲げない不屈の男らしさが良かった。
女性では、シネード役のオーラ・フィッツジェラルドが清楚な美しさの中に凛とした強さを秘めて素敵でした。
最初の方で、デミアンが裏切った仲間の少年を涙ながらに射殺するシーンがあり、最後にその行為がデミアンに跳ね返ってくる反復展開が強烈な効果です。同じ理念を持って戦っていたはずが、最後に仲間同士の殺し合いになってしまうのは、人間の業というか、現代にも繋がる普遍的なもので、そこがカンヌでパルムドールを受賞した大きな理由だと思いました。
ただ、戦争とディスカッションドラマの融合なら、スペイン内戦を扱った「大地と自由」の方が個人的には好きです。
映画『麦の穂をゆらす風』公式サイト
(「麦の穂をゆらす風」2007年3月 名古屋シネマテークにて鑑賞)
ところで、アイルランド紛争を扱った映画には名作が多いのでこれまで観た映画を総括してみました。
死に行く者への祈り
1987年/イギリス/マイク・ホッジス監督作品/
出演 ミッキー・ローク ボブ・ホスキンス
評価 ★★★★★
ジャック・ヒギンズの原作が傑作なら、映画も傑作になった希有な例。ミッキー・ロークが元IRAを哀感あふれる演技で好演しています。その他、アラン・ベイツの歪んだ倫理観を持ったギャング、かつて兵士だった神父役のボブ・ホスキンスなど、キャラクターも魅力的。思わず2回観てしまった。
(1989年 5月 博多市で鑑賞)
父の祈りを
1993年/イギリス・アメリカ/ジム・シェリダン監督作品/
出演 ダニエル・デイ・ルイス エマ・トンプソン
評価 ★★★★★
騒乱のベルファストで過激分子の冤罪を着せられた若者(ダニエル・ディ・リュイス)が、父の影響で非暴力に目覚めてイギリス当局と闘う息詰まる展開のストーリー。イギリス当局の拷問の過酷さは「麦の穂・・」に通じるものがありました。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
ボクサー
1997年/イギリス/ジム・シェリダン監督作品/
出演 ダニエル・デイ・ルイス エミリー・ワトソン
評価 ★★★★☆
これまたダニエル・デイ・ルイスがボクサー役で、ボクシングをモチーフに紛争の意味を問うています。
(1998年 7月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
マイケル・コリンズ
1996年/アメリカ/ニール・ジョーダン監督作品/
出演 リーアム・ニーソン ジュリア・ロバーツ
評価 ★★★★☆
アイルランド紛争を条約賛成派の側から描いた物語で、「麦の穂・・」と合わせて観ると当時の状況が多面的に理解できますね。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
ナッシング・パーソナル
1995年/アイルランド=イギリス/サディアス・オサリヴァン監督作品/
出演 イアン・ハート ジョン・リンチ
評価 ★★★★☆
ロイヤリスト(北アイルランドの英国帰属を主張)とナショナリスト(アイルランド全島統一派)の対立。抗争の犠牲になる少女が哀しい。
(1997年 3月 名古屋 ゴールドシルバー劇場にて鑑賞)
クライング・ゲーム
1992年/イギリス/ニール・ジョーダン監督作品/
出演 スティーブン・レイ ジェイ・デイヴィッドソン
評価 ★★★☆☆
ジェイ・デイヴィッドソンの正体にあっと驚いて。ペットショップボーイズ プロデュース、ボーイジョージが唱う主題歌が良かった。
(199*年 *月 名古屋 ゴールドシルバー劇場にて鑑賞)
デビル
1997年/アメリカ/アラン・J・パクラ監督作品/
出演 ハリソン・フォード ブラッド・ピット
評価 ★★★☆☆
ブラット・ピットがIRA役でハリソン・フォードと共演。アイリッシュが多いニューヨークの警官社会を上手く物語に組み込んでいたと思います。ラストのブラピの最期があっけなさすぎ?
(1997年 5月 ワーナーマイカルシネマズ桑名にて鑑賞)
ザ・コミットメンツ
1991年/アイルランド/アラン・パーカー監督作品/
出演 ロバート・アーキンズ マイケル・アーニー
評価 ★★★★☆
アイルランドの若者達がロックバンドを結成するお話。紛争は描いてないけど、サックスプレーヤーが”俺は黒人だ”と言う所が、虐げられた彼らの歴史を表してました。
親爺がローマ法王と一緒にプレスリーの写真を飾っている所が笑わせる。
(199*年 *月 名古屋 ピカデリーにて鑑賞)
ぼくのブログ「映画情報てんこ盛り!」で
こちらの記事を紹介させて頂きましたので
ご連絡させて頂きました。
紹介記事は
http://movielovecyu.blog90.fc2.com/blog-entry-194.html
です。
映画漬けさんのブログ早速拝見しました。
私達のブログを掲載して頂いて嬉しいです。
少しずつですが日々更新していますので、良かったらまたぜひ遊びにきてくださいね。(^^)
最近、こういう映画も観るようになりました。
重いテーマだけど、観るべきだなーと思って。。
アイルランド独立について、私が知っていたのは
ほんの少しだけだったんだ、と気づかされました。
いつまでも心に残りそうな映画ですね。
またお邪魔します。
コメとトラバ、ありがとうございました。
僕も、重い映画ですが観ておくべきだと思って、長野から名古屋まで観に行ってしまいました。(笑)
主人公のキリアン・マーフィーの姿が忘れられない映画です。
では、また。