夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

ヴァージン・スーサイズ

2007年01月13日 | は行の映画
【「マリー・アントワネット」公開記念 ソフィア・コッポラ特集】

Story
リズボン家(父;ジェームズ・ウッズ、母;キャスリーン・ターナー)には美しい五人姉妹がいる。長女テレーズ、次女メアリー、三女ボニー、四女ラックス(キルステン・ダンスト)、五女セシリア。ミセス・リズボンは5人の娘を愛するあまり、学校以外の外出をほとんど禁じるなど、家に縛り付ける生活を強いていた。厳格な両親に耐えられなかったのか、末娘のセシリアは自殺を図る。幸いにもセシリアは一命を取留めたが、パーティーの席上再び自殺する。その後、残された4人は普段の生活に戻るものの、程なくして全員が自殺を遂げる。儚く消えた少女達の思い出を隣家の兄弟達は回想するのだった。
1999年/アメリカ/ソフィア・コッポラ監督作品




評価 ★★★☆☆

少女が消えて行く、というテーマの映画はこれまでにも何本かあって、名作「ピクニック・アト・ハンギングロック」(1970年 オーストラリア)を筆頭に、「ソナチネ」(1984年 カナダ)、「ドリームチャイルド」(1985年 イギリス)、などが心に残っています。いずれも少女達のミステリアスな一面を描いていて、この映画も理由が定かにされないまま、彼女達は死を選びます。消えてしまったことで少女の純粋さを永遠に刻印したということですが、ショッキングな物語であるにもかかわらず、清冽なイメージが残る映画でした。

しかし、一番ショックだったのは、キャスリン・ターナーのおばさんぶり!でした。




評価 ★★★★★

なぜ少女たちは死を選んだのか?はっきりその答えは出ないまま、映画は終わってしまいますが、当時この映画を観て、強烈に印象に残ったのは覚えています。
ミセス・リスボンは、美しい娘たちを世俗の毒から守ろうと、学校以外は外出を禁じるなどして家に閉じ込めてしまいます。厳格な家庭で純粋培養されて育った少女たちは、大人になって汚れていくことに耐えられなかったのか?それとも両親への反抗からか、自ら命を絶つことで「終わり」という決着をつけてしまう。ソフィア・コッポラは、この少女たちの儚くて危うい世界観を、写真のような美しい映像美で描き出します。それがとても効果的で、見終わって余計に切ない気持ちになりました。

この5人姉妹の四女ラックスを演じたのがキルスティン・ダンスト。姉妹たちは皆美しいのですが、キルスティン演じるラックスはその中でもひと際存在感を放っていました。ラックスは10代の女の子らしく、恋にもおしゃれにも興味のある年頃。学園の女の子の憧れの的、トリップ(ジョシュ・ハートネットが演じています!)との恋愛に心ときめかせたりする普通の女の子です。でも妙に大人っぽい一面もあり、わざと煙草を吸って不良っぽくするなど、少し冷めた感じのところもありました。他の姉妹たちは皆、清楚でおとなしい感じがするせいか、ラックスはなぜか目が離せない存在でしたね。

キルスティンの魅力もさることながら、この映画には泣けるようないいシーンがたくさんあります。セシリアが愛したニレの木が病気と診断され、切り倒されようとした時、姉妹たちは木の幹を囲むように手をつないで、チェンソーを持った男たちの作業を阻止するシーンや、姉妹たちが母親の怒りを買って、家に閉じ込められた時、隣の家に住む少年たちが、彼女たちを慰めようと、電話で70年代ポップスを聴かせるシーン。このシーンは、少女たちが哀れに思えて、涙が出ました。
もし、少女たちが普通の女の子と同じような青春時代が過ごせていたなら、もっと少女たちの結末は変わっていたかもしれません。親は子供を安全な巣のなかにいつまでも置いておきたい気持ちは分かるけど、やっぱり子供のためには、いつか独り立ちするために巣立つ準備をさせておくのがとても大切なのではないか、と考えさせられました。この映画はなんだか反面教師のような映画でもあります。

ソフィア・コッポラはいい映画になるには、「いい脚本といいキャストが必要」と述べています。この映画はどちらも揃っていて、この作品でソフィアは見事な長編映画デビューを飾りました。「マリー・アントワネット」を観る前に、再度、この映画でソフィア・コッポラの世界を味わってみてはいかがでしょうか・・・。

(「ヴァージン・スーサイズ」2000年5月 名古屋ゴールド・シルバー劇場にて鑑賞)

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