日暮しトンボは日々MUSOUする

介護のルール


私は川崎のアパートと仕事場を引き払い、相模原の実家の近くに部屋を借りた。
実家へは自転車で5分くらいなので、これで仕事の合間に、ちょくちょく父の様子を
見に来ることができる。 私の仕事はイラストとか漫画を描く仕事なので、仕事場さえ
あればどこでもできる。 この引越しのタイミングとほぼ同時に、父の要介護が2から
3に上がった。 要するに歩行器か、あるいは車いすを使用しなければ歩けなくなって
いたのだ。 要介護度3になると、介護保険による支給限度額が一気に増える。
月26万円相当まで使えるのだ。自費負担は1割なので、実際払う金額は2万6千円に
なる。 それだけでかなりの介護サービスが利用できる。 まずは介護ベットを
レンタルした。 電動でベットが体を起こしてくれるので介護には必需品といってもいい。 
そしてリハビリのための介護福祉センターのデイサービスを週2回頼んだ。 これはまぁ、
老人の託児所みたいなものだ。 朝8時時くらいに送迎の車(バス)が迎えにきてくれて、
夕方5時くらいに帰ってくる。これで少しは介護の負担も少なくなる。 しかし問題は
やはり母だ。 父のケアマネージャーは、30代くらいの女性なので、母はケアマネの
言うことをバカにして聞かないのである。いちいち口答えをするので、若いケアマネが
内心カリカリしてるのが見てわかる。 私の仕事がないときは、私が父の入浴を手伝えるが、
それ以外は母一人では無理なので、追加で介護ヘルパーを週に2日頼むことにした。 
このヘルパーさんを頼むにあたって、ルールがある。 介護を要する当事者以外の世話や
手伝いはやってはいけないのだ。 それなのに母は、若いヘルパーさんに、父の部屋
以外の所も、ついでだからといって掃除をさせていたり、父の洗濯物と一緒に自分の
洗濯物もベランダに干してもらっていた。 要するに母はヘルパーと家政婦の区別が
ついてないのだ。 ケアプランには入浴補助だけなので、それ以外の掃除とか洗濯、
買い物などは規約違反になる。 それをケアマネに注意された母は、ちょっとくらい
いいじゃない!とか、融通がきかない!とか、例のごとく口答えする。 このままいったら、
以前に私の前で見せたように、キレて暴れる醜態をケアマネの前でもしてしまうのでは
ないかと、ヒヤヒヤして気が気じゃない。 そこにきて、母のせいで規則を破った若い
ヘルパーさんは、ウチの担当を降ろされてしまう事態になった。 
私はケアマネに、悪いのはウチの母で、ヘルパーではないということを説明したが、
どんな理由があろうと破ってはいけないルールがあるらしい。 母にいくら介護を受ける
側の規則を説明しても理解する気が全くない。 それどころか、そもそもヘルパーなんて
雇う必要がない!と言い始めた。 じゃあ誰が父の面倒を見るんだ?と、私が言うと
「お前が見ろ!長男だからお前が面倒見るのが当たり前だろう」と、言い放った。 
俺には仕事があるから1日中は無理だと言うと、「あんなくだらない落書きばかり描いてて
何が仕事だ!真面目に親の面倒を見ろ!」 私の仕事をくだらない落書きと言ったのだ。
私はハラワタが煮えくりかえり、本気でブチギレそうになった。 そのとき隣の部屋で
ベットの上に座っている父が、切なそうな顔で私の方を見て、首を横に振った。 
それは「もういいから、やめておけ」と言う合図だった。 それでも気持ちが収まらない私は、
深く鼻から息を吸い込んで心を落ち着かせてから、母の口から垂れ流す身勝手な言い分を
全てシャットアウトした。



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