8日は成人の日。総務省の推計によると、97年生まれは約123万人で、晴れの日を迎える1997年4月2日〜98年4月1日生まれの若者の数もこれに近いとみられる。新成人が生まれた年はどのような1年だったか。「つい最近のこと」と思っていた時期に産声をあげた赤ちゃんたちが節目を迎えることを知れば、感慨もひとしおだろう。【大村健一/統合デジタル取材センター】 ◇1997年の漢字は「倒」 金融機関の相次ぐ破綻と神戸連続児童殺傷事件の衝撃 政府が4月1日に3%から5%への消費増税に踏み切った1997年。恒例の「今年の漢字」は「倒」が選ばれた。バブル崩壊後に膨らんだ不良債権がきっかけで金融機関の破綻が相次いだことが最大の理由だった。 11月、4大証券会社の一つだった「山一証券」が「飛ばし」と呼ばれる手法を使って帳簿上に表れなくした2000億円もの債務を抱え、自主廃業を決めた。社長が号泣しながら「社員は悪くありません」と訴えた会見は衝撃的で、繰り返し放送された。 同月は三洋証券、北海道拓殖銀行も破綻。98年以降も金融機関の淘汰(とうた)が進んだ。日本だけでなく、97年7月のタイをきっかけにインドネシアや韓国の通貨が暴落するアジア通貨危機が発生。金融危機が盛んに叫ばれた。 また、97年2〜5月、神戸市で5人の小学生が相次いで殺傷された事件で、兵庫県警は6月、「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」を名乗って声明文を出した当時14歳の中学3年男子生徒を殺人などの容疑で逮捕。中学生による残虐な犯行は、列島を震え上がらせた。 その後も98年1月、栃木県黒磯市(現那須塩原市)で女性教師が中学校内で当時13歳の男子生徒にバタフライナイフで刺殺される事件が発生。未成年による凶悪犯罪に注目が集まり、突然、制御できなくなるほど怒ることが「キレる」と表現され、広く使われるようになったのもこの時期だ。 ◇「ジョホールバルの歓喜」に「ふなきぃ…」 スポーツが列島を沸かせた 97年11月16日、日本サッカー界の悲願が達成された。マレーシアで開催された翌年のフランス・ワールドカップ(W杯)のアジア第3代表を懸けた決定戦で、日本は延長戦の末に3対2でイランに競り勝ち、初のW杯出場を決めた。4年前の米国W杯アジア最終予選は「ドーハの悲劇」で、あと一歩のところで初出場を逃していた。途中出場の岡野雅行選手が延長後半に決勝点を決めたこの試合、開催されたマレーシアの地名にちなみ、「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれている。 98年2月には、札幌五輪(72年)に続いて国内2度目の冬季五輪となる長野五輪が開催された。スピードスケート男子500メートルの清水宏保選手、女子モーグルの里谷多英選手、ショートトラック男子500メートルの西谷岳文選手が金メダルを獲得。大会のハイライトはやはり、スキージャンプのラージヒル団体だろう。 94年のリレハンメル五輪は、金メダル目前で原田雅彦選手が失敗して銀メダル。今回も大雪の悪天候の中、原田選手は1本目で失敗してしまうが、2本目で大ジャンプを記録して雪辱した。最終ジャンパーのエース船木和喜選手を見守る際、「ふなきぃ……」と祈りの声を震わせた映像は、前回大会後に原田選手が多くのバッシングを受けた経緯を知る人々の胸を熱くした。 海外では男子ゴルフで当時21歳のタイガー・ウッズ(米国)がマスターズを、女子テニスで当時16歳のマルチナ・ヒンギス(スイス)が全豪オープンを、それぞれ最年少で制覇。若い才能が台頭した。 ◇ダイアナ元皇太子妃の突然の事故死 大統領の「不適切な関係」と失楽園ブーム 海外から大きなニュースがたびたび飛び込んできた1年でもあった。96年12月からペルーの首都リマの日本大使公邸は左翼系ゲリラ、トゥパク・アマル革命運動(MRTA)に占拠されていた。ペルー政府は発生から約4カ月後の現地時間4月22日、軍特殊部隊を、ひそかに公邸の地下に掘削していた穴などから突入させた。日本人ら人質71人が救出されたが、ペルー人の人質1人と隊員2人、ゲリラ14人全員が死亡した。7月1日には、香港が約155年ぶりに英国から中国へ返還された。 世界に鳴り響いたのは英国の人気歌手エルトン・ジョンさんの「キャンドル・イン・ザ・ウインド」。97年8月31日未明、パリ市内で交通事故のため亡くなった英国のダイアナ元皇太子妃にささげた曲だ。 ダイアナ元妃と恋人の実業家らが乗っていた車は、2人の写真を撮ろうと張っていたパパラッチのオートバイを振り切ろうとスピードを上げ、セーヌ川沿いのトンネルに入ったところで事故が起こった。チャールズ皇太子との離婚後も世界的な人気を集めていたダイアナ元妃の突然の事故死に、驚きと悲しみの声があがった。 米国では98年1月、クリントン大統領(当時)とホワイトハウス実習生のモニカ・ルインスキさんとの不倫が報じられ、大統領の弾劾裁判に発展。罷免は免れたが、前代未聞のスキャンダルは世界中で話題になり、「不適切な関係」が流行語となった。国内でもダブル不倫を描いた渡辺淳一さんの「失楽園」が国内でベストセラーとなり、小説を元にした映画やドラマがヒットしたのがこの時期。1997年の「新語・流行語大賞」は「失楽園(する)」だった。 ◇もののけ姫、タイタニックなど映画で数々の話題作 GLAYの大ヒット、V系の台頭も 97年7月に公開された宮崎駿監督の長編アニメ映画「もののけ姫」は、「E.T.」(82年日本公開)が持っていた歴代興行収入記録を塗り替え、200億円に迫る大ヒットとなった。米良美一さんが歌う主題歌もヒットした。その記録を塗り替えたのは97年12月公開でレオナルド・ディカプリオさん主演の「タイタニック」(ジェームズ・キャメロン監督)。船の舳先(へさき)で抱き合う2人は、映画史に残る名シーンだ。 また、世界3大映画祭で日本の2作品が最高賞に選ばれた。北野武監督の「HANA−BI」がベネチア国際映画賞で約40年ぶりに「金獅子賞」を獲得し、今村昌平監督の「うなぎ」もカンヌ映画祭で、自身監督の「楢山節考」(83年)以来となるパルムドールを獲得した。 テレビドラマはフジテレビ系で月曜9時から放送されている「月9」の全盛期。97年は、今年9月に引退する安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」が主題歌だった「バージンロード」、「心にダムはあるのかい?」などの名ぜりふで有名な「ひとつ屋根の下2」、反町隆史さんと竹野内豊さんがダブル主演し、同年4月に「MajiでKoiする5秒前」でCDデビューした人気アイドル広末涼子さんらが脇を固めた「ビーチボーイズ」、木村拓哉さんが主演した「ラブジェネレーション」と、30%を超える視聴率をたたき出すドラマを連発した。 SMAPが人気を盤石にした時期で、草なぎ剛さん主演の同局系ドラマ「いいひと。」も高視聴率をマーク。同局系「SMAP×SMAP」内の料理コーナー「ビストロスマップ」のレシピをまとめた本もベストセラーになった。 すでにテレビで人気者だったジャニーズ事務所の「Kinki Kids」のデビュー曲「硝子の少年」がミリオンセラーになり、ロックバンドGLAYのベストアルバム「REVIEW」は当時歴代最高の400万枚以上を売り上げ、以降のベストアルバムブームの先駆けとなった。 この年デビューしたSHAZNA(シャズナ)が80年代の曲をカバーした「すみれ September Love」でヒットチャートをにぎわせるなど「ビジュアル系(V系)バンド」が一世を風靡(ふうび)したのもこの時期だ。 ◇子供たちはハイパーヨーヨーとポケモン 女子高生にはババシャツ 96年2月に発売された任天堂の携帯ゲーム機「ゲームボーイ」向けのソフト「ポケットモンスター(ポケモン)」は97年に入っても人気は衰えず、97年4月にテレビ東京系でアニメ番組もスタート。しかし同年12月、激しい点滅による光過敏性発作で視聴中にめまいや吐き気などを訴えた子供たちが相次いだ。「ポケモンショック」と名付けられた一件以降、現在も多くのアニメ番組の冒頭で「部屋を明るくしてテレビから離れて見て」と呼びかけるテロップが流れている。 バンダイが発売した「ハイパーヨーヨー」も子供たちの間で流行。ポケモンや「ミニ四駆」などと同じく小学館の少年漫画誌「コロコロコミック」に後押しされ、さまざまな特徴を持つヨーヨーが売り上げを伸ばした。 それまでは主に中高年の女性が着ていた袖付きの肌着が「ババシャツ」として女子高生ら若い世代にも浸透。東京・渋谷の商業施設「109(イチマルキュー)」が「マルキュー」と呼ばれ、ファッションの中心地になった。 通信は小型電話機「PHS(パーソナル・ハンディーフォン・システム)」の最盛期。「ピッチ」と呼ばれ、広く普及したが、以降は徐々に携帯電話が台頭し始めた。シャープの「ザウルス」のような小型の液晶画面でスケジュール管理などができる「PDA(携帯情報端末)」もヒット。現代のスマートフォンの原型と言えそうだ。 (毎日新聞) |
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