☆38年ほど前、名古屋市内の店に異動した。
渉外担当者として、自転車で住宅地を戸別訪問していた。
当時の渉外担当者のメインの仕事は、預金集めだった。
訪問担当地区の普通預金残高を調べていたら、Aさんの2,000万円の残高に吃驚した。
当時は、バブル経済の少し前で、定期預金の1年定期も5.85%であったと思う。
税引前の利息は、2,000万円×0.0585→117万円となる。
2,000万円の定期預金が新規獲得できれば、1ヶ月の獲得目標の半分近くを獲得することになる。
やった、と思って、地図で調べた住所へ粗品を持って出かけた。
今ならグルーグルアースで調べられるが、当時は住宅地図で調べられるだけ。
住宅地図では、小さな家かな?と思ったが、何と築50年以上の古い4軒平屋長屋の一軒だった。
玄関の木製の引き戸も古くて建付が悪く、力を入れて引かないと開かないようだった。
声を掛けたら、年寄りの女性が出てこられた。
名刺を差し出し、定期預金の勧誘をしたが、「定期預金にすると、下ろしたいときに下ろせないから。」と固辞された。
利息が税引前で117万円付きますよ、普通預金でしたら30万円ですが、とセールス。
1ヶ月の獲得目標の半分が達成できるのだから、私も一生懸命だった。
しかし、30分ほど勧誘したが、契約できずに諦めた。
もし、定期預金にする時は、貴方に電話するから!、といわれて。
私も、「もし普通預金を下ろされる時は、お電話を下さい。私が来ますから。」といって辞去した。
もし定期預金にすれば、利息が増える分で、玄関戸も替えられるし、室内も改装できるのに、と思ったが、それはさすがにいえなかった。
それから1年ほどで異動になったが、それまで電話も来なく残高も利息分で着実に増えていった。
引継文書に、Aさんのことは書いておいたが、その後はわからない。
☆でも、どうして定期預金にして貰えなかったのだろうか?
下ろしたいときに下ろしにくいから、それだけの理由ではないような気がするが、今でも真実はわからない。
その2,000万円も毎年50万円前後で着実に増えていた金額で、なぜ定期預金にされなかったのだろうか?
なかなか理解が、出来なかった。
でも、最近ようやくわかるようになってきた。
私が、Aさんの年齢に近付いてきたからかもしれない。
今は、当時の定期預金金利と違って、1年定期も0.002%であるが。
この歳になると、金利よりも使いたいときにすぐ使えることが、何よりだ。
いつ何時、お金がいるかもしれない。
その時、面倒なく下せるのは、普通預金だ。
定期預金も面倒だし、株式も国債も面倒だ。
きっと、Aさんも、今の私の心境と同じような心境だっただろう。
(続く)
☆ノーマンロックウエル
少年時代
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます