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エジプトをぐるりと一周し再びカイロに戻ると、この街がエジプトといわずアフリカきっての大都会であることを実感させられる。新旧の建物がびっしりと建ち、道路には人と車と荷物を引く馬やロバがひしめき合う1,700万都市カイロ。のんびりした田舎から戻ったから余計にそう感じるんだろうけど、本当にバワフルな街だ。この街では元気なくして生活するのは不可能なんじゃないかと思われる。
街を歩けば引っ切りなしに売り子や物乞いが付きまとうし、被写体を見つけてカメラを出せばどこからともなく現れる自称カメラマン。「君を撮ってあげるよ。」「いいのいいの、私は風景を撮りたいのよ、ありがとう。」ひとり静かに街歩きをしようったって、なかなかそうはさせてくれないし。正直なところ、放っておいてちょうだいと叫びたくなることだってある。
街歩きに疲れて喫茶店に逃げ込んだつもりが…甘かった。そう、ここはアフリカ一パワフルな街カイロ。静かなティータイムを望む方が間違いだったか。物売りはカフェの中までやって来る。この街では日本人特有の曖昧さは禁物だ。気の毒だという気持ちはおくびにも出さず「ラー・ショクラン」とキッパリ。これでたいていは引き下がる。ようやく周りが静かになった日暮れ時、目の前に建ってたモスクのミナレットからアザーンが響き出した。テーブルの上に無造作に置かれたミントの葉をひとつまみ、シャイからはいいかおりが立ち上った。
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