ドイツでは1日あたり5万人超のコロナウイルス感染者が生まれているそうです。
mRNAワクチンが、ほぼ完璧に重症化を防いでいることが、この第5波で明らかになりました。mRNAワクチンを接種している人にとっては、新規感染者数の増加は怖くはありません。1日に5万人の新規感染者がいたとしても、感染がデルタ株(mRNAワクチンが有効)で、おかしな変異が生まれていない限り、ワクチン既接種者の生命が脅かされる危険性はほぼほぼありません。
しかし、ワクチン未接種の人には脅威です。ワクチン未接種の人にとっては、新規感染者数はこれまでと同じ意味合いを持ちます((参考)ワクチンパスポートはだれのため? 1〜4)。デルタ株の凶悪性にそのままさらされ、重症化の危険性をはらんだ、大きな脅威です。新規感染者数を発表し続けるのは、ワクチン未接種者のため、と言っていいでしょう。
とはいえ、日本は感染者数は劇的に少なくなっています。私個人としては、昨年1月以来、最も穏やかな心持ちでいれます。本当にここまで、長いようで短い、短く感じても長かった1年10ヶ月でしたよね。
夢中で駆け抜ける感じで、精一杯でやってきましたが、あのとき日本は奇跡的な采配だったなあ、と思うようなことが振り返るといくつもあります。また、医療制度のおかしな点をあぶり出したような点も((参考)対岸の火事じゃないこと 上下)。
またいつ、どのようなかたちで第6波が来るとも限りませんから、この機会にそんなことを、忘れないうちに振り返っておこうと思いました。
思い返せば、昨年、2020年の年明けでした。新型コロナウイルスのニュースに初めて接したのは。みなさん同じだと思います。
中国でおかしなウイルスが流行しているというニュースが、ちょうど2020年1月初めの中国の党大会か何かが終了してから流れ始めました。呼吸器系の感染症で、武漢で流行が広がっている、ということでした。
新規感染症のニュースは珍しいことではなく、たいていは遠い世界の話です。今回も遠く中国の一都市の話でした。きっとその地域特有の感染症で、なんとなく無事に終わっていくのだろう、と心の奥底で思いながら、ニュースには一応耳を傾ける、というのが各病院の感染対策委員の多くの姿勢だったのではないでしょうか。まさか、それから間もなく日本に感染者が確認(武漢滞在歴あり)され、武漢は都市封鎖され、武漢に日本人を救出するチャーター便を飛ばすことになり、3月には「パンデミック」が現実になるなんて、世界があっという間に変わっていくなんて、そのときには誰も予想しなかったでしょうし、私たちもそうでした。
ところが、中国からのニュースを気にかけていると、2020年1月のかなり早い段階で(武漢封鎖よりもかなり前)、ちょっとこれはおかしいんじゃない?本当に大変な感染症なんじゃない?と思わせるニュースがありました。それは、「中国政府が武漢に派遣したSARS専門家のトップが新型コロナウイルスに感染した」というニュースでした。
私たちの病院は週に1回、感染対策委員会で感染症のカンファレンスを開いています。当時、そのカンファレンスでこのニュースを話題に上げました。
中国の専門家のトップと言えばかなりのお偉い方です。その人が、感染が広がりつつある武漢にコロナ制圧のミッションを持って派遣されて、あろうことか本人が感染してしまったというではないですか。医師にとって、また感染症の専門家であればなおさら、自分を感染から守るのは基本中の基本です。その人が感染するなんて、これはかなり異常な出来事です。
感染するとしたら検体採取時が最も危険です。ですが、中国のお偉い方だったら、患者からの検体採取等をわざわざ自分でするはずがありません。自分は指示するだけで、下の者に検体採取はやらせるでしょう。それでも感染するなんて、どういうことなんだろう?ということです。しかも感染症の専門家です。接触感染で感染するなんて、素人みたいなことをするわけがありません。ということは、この中国の専門家のトップが感染したとすると、想定外の感染の仕方をしたとしか考えられず、それはつまり空気感染なのではないか、ということになります。この感染症、ひょっとして空気感染してるんじゃないの?やばいんじゃないの?というのがカンファレンスで話した内容でした。
その後、みるみる武漢は都市封鎖されました。そして、その封鎖された武漢に、医療従事者を励ますためと称して、中国の首相が専用機で激励に訪問しました。そのニュース画像で、飛行機から降りてきた北京からやってきた中国の首相は、見事にN95マスク(空気感染対策用のマスク)を装着していました。ほら、やっぱり空気感染するんじゃないか、これはえらいことだ、と私たち(当院の感染対策委員会)は確信しました。2020年1月の段階ですでに空気感染の危険性は、私のような一地方の感染対策委員であっても、発生国のニュースからありありと見えていました。
ちなみに、WHOは空気感染(エアロゾル感染を含む)を否定し続けました。WHOがコロナに空気感染(エアロゾル感染)の可能性を示す「証拠が出始めて」おり、「感染経路の一つである可能性を見極めている」と明らかにしたのは、半年も経ったなんと7月(!)のことです。
時間を戻します。すでにエアロゾル感染を引き起こす危険な感染症であることは2020年1月の段階でわかっていました。一地方都市の私がニュースで判断できたのですから。
それにもかかわらず、WHOは2020年2月3日に、都市封鎖した武漢や中国への渡航制限をする各国を非難し、必要ない、と言明します。そのため各国(とくに日本)は渡航制限を実施する根拠がなくなり、春節となった中国から多くの旅行者がはき出され、世界各地にウイルスを広げていきます。ちなみにWHOはこの2020年2月にマスク不要も発表しています。とんでもない機関だと思いませんか?繰り返しますが、空気感染することはありありとわかっていたのです。上に記載したように、専門家ならばニュースを見ただけでわかるほどだったのです。わからなかった、とか、知らなかった、などありえません。WHOは専門家の集団のはずです。しかも無症状感染者がいることもすでにわかっていました。武漢という1000万都市をあっという間に都市封鎖が必要にもしたのです。いかに危険な感染症か、どの方面から切っても安全なウイルスである結論などでるはずがなかったのに、です。
日本でも、2月のダイアモンドプリンセス号の出来事があっても、マスクは不要だとテレビで騒ぐ医者がいたりして、そういう輩がWHOの発表にさらに意気軒昂となったりして、まさに正義がなくなったカオスの世界でした。
私にはパンデミックはWHOが後押ししたと思えてなりません。正しい事務総長が、正しい対策をとっていたら、すなわち、すぐに中国への渡航制限を各国に勧告し、中国へは海外へ旅行者を出さないように勧告をし、エアロゾル感染があることを周知し、マスク着用と感染対策を明確に示して推奨すれば、新型コロナウイルスは広がりはしたものの、これほど急速には広がらず、ワクチンや治療薬の開発が間に合い、パンデミックすら抑えられた可能性があったのでは、と思います。本当に、ひかえ目に言っても、WHOはあきれた機関でした。間違えた対策を推奨するのですから、まだWHOがない方が害がなかったのです。WHOは感染を広げ、感染を後押ししました。
海外の映像で、恐怖でPCR検査のテントに殺到している人たちがいました。マスクはつけていません。空気感染があることを知らないわけです。あのテント中で大量に感染者が生まれていたことでしょう。PCR検査数が多い国ほど感染者数が多かった理由です。そのときWHOは何を言っていたか。あきれたことに事務総長は「テスト、テスト、テスト(とにかくPCR検査をたくさんしろ)」と言っていたのです。恐怖をあおり、人々を検査場へ、密集したパニックへ駆り立てていたのです。もはや悪意を感じ、犯罪に思えてしまいました。
日本でも、それを根拠に、PCRの大量検査をしろと叫んでいたいわゆる識者や政治家と称する人たちがいました。各国はそうしたマスコミ等の圧力に負けて、大量検査に踏み切り、大量の感染者を生み出してしまいました。ところが日本には、そうした上辺や見せかけに流されない、冷静な専門家集団がいました。
続きます。
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