パピとママ映画のblog

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サード・パーソン ★★★

2014年07月08日 | さ行の映画
『クラッシュ』などのポール・ハギスがメガホンを取り、パリ、ローマ、ニューヨークを舞台に3組の男女の関係と衝撃の結末を描く恋愛ミステリー。著名な小説家と愛人、ビジネスマンと娘を誘拐された女、元女優とその元夫の物語を交錯させながら、愛や痛み、再生と希望などを浮かび上がらせる。リーアム・ニーソンをはじめ、オリヴィア・ワイルド、ミラ・クニスなど豪華キャストが共演。『ミリオンダラー・ベイビー』などの脚本家としても知られるハギス監督が構築した、複雑にして巧妙なストーリーに注目。
<感想>監督・脚本・制作はポール・ハギス。あの「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家であり、「クラッシュ」の監督・原案・脚本・制作を務めたその人の新作だけに、つい期待も高まろうというもの。映画の舞台はパリとローマとニューヨークを舞台にした3組の男女の群像劇である。

3組の男女がそれぞれ仕事や夫婦、愛人問題だどで悩んでいる。でも大部分の撮影はローマに作られたセットでなされていることを知ると、つい混がらがって出演者はとなりのセットに迷いこんだりしないかと、冗談半分に思ってしまうほどだ。
冗談ではないのかも。脚本が得意のハギス監督は、この脚本に酔いしれてしまったのか、何だか回りくどくしてしまった感があるようだ。パリのホテルで執筆に励む中年の小説家・リーアム・ニーソンと、作家志望のその愛人のオリヴィア・ワイルド。その二人の関係は、年齢も娘のようなオリヴィアとホテルで濃密な関係を送り、時にはもて遊んでいるかのように彼の部屋にガウン姿で現れ、「私を抱いて」とガウンを脱いで見せる。ところが、男は老人で若い愛人に応える肉体を持ち合わせていない。断ると、愛人は直ぐに裸で自分の部屋へ帰るのだが、ホテルの監視カメラに愛人が逃げるところを捉えている。どんなに恥ずかしい目に遭ったことか、自分をさらけ出して彼の胸に飛び込みたかったのだろう。

愛人は、その惨めな自分を慰めてくれるのは、自分の父親しかいない。父親の部屋へ行くと、以前から男女の関係があったのだろう、直ぐに近親相姦となる。
そのことを知ってか知らずか、愛人に悪いと思ったのか、愛人の部屋いっぱいに白い薔薇の花を贈る。それは、彼女の心も動かし嬉しくて直ぐに部屋を飛び出しマイケルの部屋へと。しかし、マイケルにも息子がいて、自分の不始末から息子を亡くしてしまった。そのことを別居している妻からの電話で、責め立てるように感じてしまった。妻には、キム・ベイシンガーが演じている。

して、ローマのバーで偶然出会ったロマ族の女に、一目惚れするアメリカ人のビジネスマン、エイドリアン・ブロディ。その女は娘をさらわれたと言う。取り返すための金が必要だと、エイドリアンを口説く。自分にも小さい子供がいたが、事故で亡くなってしまい、ついその女に同情して金の工面をして、子供を引き取るように手助けをする。

ところが、どうやら子供は元父親の所に引き取られているようで、返して欲しければ大金を工面しろと高額の身代金を請求してくる。何だかこの夫婦に騙されているような、子供なんていないのかもしれない。しかし、ロマ族のエキゾチックな美貌に惚れてしまった男は、ありったけの金を銀行から引き落として男に渡すのだが。

そして、ニューヨークのホテルで客室係りとして働く元女優のミラ・クニス。以前夫だったリック(ジェームズ・フランコ)と息子の親権を争い、裁判費用のためにメイドとして働いている。この母親も、息子を虐待のような、ビニールの袋を被って遊んでいた息子が危なく窒息死するところだったというのだ。それで、元夫のリックが息子の親権者となっている。

どうやら元妻のジュリアは、精神的に異常があるようで薬の常用者で、それがニューヨークのホテルの客室を掃除に行くと、部屋にはたくさんの白い薔薇が飾られており、女はこのような花で囲まれた部屋は大好きなのだが、精神異常者のジュリアが白いバラの入った花瓶を壊しまくるのは、元夫リックとの信頼が壊れたからなのか、それとも息子が自分の手に届かないのがこの狂ったようなジュリアなのか。

ですが、このホテルの部屋とパリのマイケルの愛人のアンナの部屋が繋がっているのだ。どうやら、愛人のアンナも存在しない小説の中の女であるようだ。
何の接点もないこの3組の男女が、ミステリー劇のように次第に交錯し始め、やがて共振するという巧みな構成は、脚本家出身のハギスならではと感じた。男と女の駆け引き、そこに見えてくる信頼と裏切り、後悔と苦悩。
そして生きることの哀しさとほろ苦さ。そこには男女の関係だけではなく、キーワードの「子供」を交えた家族の絆という命題が見え隠れする。読みにくい文字でアレコレ書き殴られた、まったくもって興味のない作家の創作ノートをめくられているような感じがする。
要は、ホテルの部屋でパソコンに向かうリーアム・ニーソンが、この映画の脚本作りに格闘するポール・ハギスと重なって見えた。
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