『海炭市叙景』の原作者、佐藤泰志の三島由紀夫賞候補となった小説を基に、北海道函館を舞台に生きる場所のない男女の出会いを描くラブストーリー。仕事を失った男がバラックに住む女と出会い、家族のために必死な彼女をいちずに愛し続ける姿を描く。主演は、『シャニダールの花』などの綾野剛。主人公と惹(ひ)かれ合うヒロインを、池脇千鶴が演じる。メガホンを取るのは、『オカンの嫁入り』などの呉美保。美しい函館を背景につづられる、男女の愛の軌跡と人生の過程が心に突き刺さる。
あらすじ:仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。
<感想>物語の前半、過去の傷を引きずり函館の街に身を沈めるように生きている達夫がいる。主人公達夫を演じているのが綾野剛。こういう暗い、自暴自棄な人間の役が多いようだが、どういうわけかよく演じていると思う。
その役柄と同じく。撮影期間は、毎日酒を飲みタバコを吸い、作品の世界にどっぷり入り込んでいたという。酔っぱらってパンパンにむくんだ顔の彼は、明日はどうなってしまうんだろう、と心配になるくらい刹那的に見えました。
そんな綾野剛が演じる男は、鉱山で体験した大きな事故の記憶を、強いトラウマとして抱え込んでいることが暗示される。彼は、背中にある大きな赤アザ、それがその痕跡なのだ。パチンコ店で若い拓児と出会い、彼の家へいき家族と出会うことになる。
物語りの軸は、同僚の死に責任を感じて気力を失ったハッパ技師と、家族のプレッシャーでボロボロになった女との絶望的な恋物語でもある。
そして、もう一人若い拓児の家で繰り返し足首ばかり描かれる人物に出会うことになる。拓児の父親で脳梗塞で寝たきりの老人は、不随の体に宿る行き場のない性欲に苦悩し、母親と娘の千夏がその性処理をしているのだ。
それに、若い拓児は傷害事件を起こして保釈中の身であるというのに、馬鹿なのか無知なのか、この男にはおよそ抑制というものがない。それでも、達夫を兄のように慕い、後を追い、いつも腹をすかせ、野良犬のようにハァハァと息切れをして、最後には狂犬のようにアイスピックを振りかざす。
「共喰い」の菅田将暉が演じているが、自然体で中々上出来です。
後半で弟の拓児が、達夫が姉の千草と結婚することを望み、祭りの夜に、邪魔な姉の売春相手の植木屋、社長をアイスピックで刺すという、またもや自分を刑務所に自ら追い込む結果を作る。植木屋の社長も妻も子もいるのに、何故に千夏を愛人のようにしつこく付け狙うのか、それも男の性処理というものなのか?・・・その植木屋の社長に高橋和也が扮しているのだが、暫く見ないうちに小さくなったような感じがした。
世捨て人のような暗い達夫と対照的な二人だが、コンクリートの床に座り込み一緒にタバコを吸う時、初めてその身振りが同じ形になる。それを機に拓児が警察に自首をして、達夫は自転車で千夏の家へと行く。
千夏は、家のために昼は塩辛工場へ働きに行き、夜は売春婦までして生活費を稼ぎ、結婚をあきらめてたのに、そこへ達夫が現れ始めて好きになった男なのに、それを諦めてずるずると現状維持をするしかないことに腹を立てている。だからなのか、後半で父親の首を絞め殺そうとしている千夏を止める達夫。
自分だって、両親の葬式にも行かないし、お墓も作ってなく妹がどうするのか手紙で言ってきている。長男の役目、投げ出してはおけない事実。
物語りの後半、ターニングポイントを迎えた達夫が、火野正平演じる松本に、「家族を持ちたくなった」と伝えるシーン。それからの達夫は、好きな女ができ、もしかしたら子供もできてと、その女の家族の面倒も見るという、そんな一般的な生活を夢見ていたのかもしれませんね。ラストの清々しい表情の達夫の顔、海辺で千夏と見つめ合うシーンも、朝日を背にして輝いて見え晴れやかでした。
そして、光を繊細に配置した近藤龍人の撮影が豊かな画面を形成していて良かった。
2014年劇場鑑賞作品・・・91 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
あらすじ:仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。
<感想>物語の前半、過去の傷を引きずり函館の街に身を沈めるように生きている達夫がいる。主人公達夫を演じているのが綾野剛。こういう暗い、自暴自棄な人間の役が多いようだが、どういうわけかよく演じていると思う。
その役柄と同じく。撮影期間は、毎日酒を飲みタバコを吸い、作品の世界にどっぷり入り込んでいたという。酔っぱらってパンパンにむくんだ顔の彼は、明日はどうなってしまうんだろう、と心配になるくらい刹那的に見えました。
そんな綾野剛が演じる男は、鉱山で体験した大きな事故の記憶を、強いトラウマとして抱え込んでいることが暗示される。彼は、背中にある大きな赤アザ、それがその痕跡なのだ。パチンコ店で若い拓児と出会い、彼の家へいき家族と出会うことになる。
物語りの軸は、同僚の死に責任を感じて気力を失ったハッパ技師と、家族のプレッシャーでボロボロになった女との絶望的な恋物語でもある。
そして、もう一人若い拓児の家で繰り返し足首ばかり描かれる人物に出会うことになる。拓児の父親で脳梗塞で寝たきりの老人は、不随の体に宿る行き場のない性欲に苦悩し、母親と娘の千夏がその性処理をしているのだ。
それに、若い拓児は傷害事件を起こして保釈中の身であるというのに、馬鹿なのか無知なのか、この男にはおよそ抑制というものがない。それでも、達夫を兄のように慕い、後を追い、いつも腹をすかせ、野良犬のようにハァハァと息切れをして、最後には狂犬のようにアイスピックを振りかざす。
「共喰い」の菅田将暉が演じているが、自然体で中々上出来です。
後半で弟の拓児が、達夫が姉の千草と結婚することを望み、祭りの夜に、邪魔な姉の売春相手の植木屋、社長をアイスピックで刺すという、またもや自分を刑務所に自ら追い込む結果を作る。植木屋の社長も妻も子もいるのに、何故に千夏を愛人のようにしつこく付け狙うのか、それも男の性処理というものなのか?・・・その植木屋の社長に高橋和也が扮しているのだが、暫く見ないうちに小さくなったような感じがした。
世捨て人のような暗い達夫と対照的な二人だが、コンクリートの床に座り込み一緒にタバコを吸う時、初めてその身振りが同じ形になる。それを機に拓児が警察に自首をして、達夫は自転車で千夏の家へと行く。
千夏は、家のために昼は塩辛工場へ働きに行き、夜は売春婦までして生活費を稼ぎ、結婚をあきらめてたのに、そこへ達夫が現れ始めて好きになった男なのに、それを諦めてずるずると現状維持をするしかないことに腹を立てている。だからなのか、後半で父親の首を絞め殺そうとしている千夏を止める達夫。
自分だって、両親の葬式にも行かないし、お墓も作ってなく妹がどうするのか手紙で言ってきている。長男の役目、投げ出してはおけない事実。
物語りの後半、ターニングポイントを迎えた達夫が、火野正平演じる松本に、「家族を持ちたくなった」と伝えるシーン。それからの達夫は、好きな女ができ、もしかしたら子供もできてと、その女の家族の面倒も見るという、そんな一般的な生活を夢見ていたのかもしれませんね。ラストの清々しい表情の達夫の顔、海辺で千夏と見つめ合うシーンも、朝日を背にして輝いて見え晴れやかでした。
そして、光を繊細に配置した近藤龍人の撮影が豊かな画面を形成していて良かった。
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