昨年の東京国際映画祭でグランプリと主演男優賞に輝いた、実話をベースにしたドラマ。揃って男優賞を受けた「PARIS」のフランソワ・クリュゼと「ミックマック」のオマール・シーの主演で、他には「ぼくの大切なともだち」のアンヌ・ル・ニ、「屋根裏部屋のマリアたち」のオドレー・フルーロらの共演。監督・脚本はエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの共同。
あらすじ:不慮の事故で全身麻痺になってしまい、車いす生活を送る大富豪のフィリップ…彼の日常をサポートする介護者はいつも長続きせず、その都度、新しい人を雇っていた。今回も新しい介護者を求めて、面接を開いていたのだが…そこに現れたのはスラム出身の黒人青年ドリスだった。
ドリスは不採用の証明書で貰える失業手当目当てで面接に参加しており、他の面接参加者と違ってかなり粗暴であったが、正直な物言いに惹かれるものがあり、フィリップは採用を決める。当然、不採用だと思っていたドリスは戸惑いながらも仕事に接し始め。
<感想>実話をもとにした映画のなんと多いことか。逆に言えばオリジナル脚本がいかに少ないかということだが、これも原作は実話。それも首から下は麻痺したままという重度の障害をかかえる大富豪と、彼を介護するために雇われた貧しい黒人の物語というから、実話とはいえちょっと身構えしてしまう。
障害者の介護を描いた映画で、こんなに笑っていいのかしらと心配してしまうほどユーモアたっぷりで、しかも泣けてしまう極上の実録ヒューマンドラマだ。笑いあり涙ありヨーロッパでは大ヒットに。
登場人物みんなが魅力的です。豪邸で働く使用人たちはそれぞれ個性的で、ドリスの出現をきっかけに、みんなフィリップの障害を“個性”として受け止め始める。初めての介護に戸惑うドリスだったが、雇い主のフィリップに媚びることなくフレンドリーに接するのが気に入られ、2人は車椅子をパワーアップ改造するなど大はしゃぎ。
自由奔放なドリスは豪邸内にコールガールを呼ぶわ、フィリップに大麻を勧めるわのやりたい放題。全身麻痺のフィリップも思わず吹き出してしまう。
フィリップはハングライダーの墜落事故で首から下が麻痺状態の障害者。もうハングライダーに乗って空を飛べないと思っていたら、ドリスが車で連れていって一緒に空を飛ぶ二人には感動が。
それにフィリップは奥さんにも先立たれて、でも楽しみは文通相手がいて、写真を送り逢うことを勧めるドリス。つい自分の身体のことを考えて、臆病になってしまっていたフィリップの後押しをしてお膳立てをしてあげるドリス。
この作品のいいところは、キャスティングの妙にあるのでは。介護する黒人役はオマール・シーというフランス人の人気コメディアン。この人がぴたりとハマっているから活きているのだ。冒頭での暴走を繰り返す運転手として登場すると、一気にスクリーンが引き締まる。助手席には全身麻痺の大富豪役のフランソワ・クリュゼが。この2人がパトカーに追われた揚げ句、奥の手を使ってそのパトカーに先導させ病院へ駆け込むエピソードに、この作品のすべてが集約されていると思う。
すなわち、重度の身障者の苦悩と悲しみを笑いで吹き飛ばし、一歩間違えば虐待に繋がるかもしれないブラック・ユーモアで包み込むのだから。この難度の高い演技は、オマールとフランソワという演技の達者な二人抜きには考えられない。
もちろん、一見自然体に映るが、時間をかけて練り上げられた台詞の面白さ、そこには身障者と介護人の関係とは思えない、あけすけの本音が飛び交うからだ。
差別と偏見をやすやすと乗り越えてしまう、その大胆な会話は、やがてこの映画の重要なテーマに行き着く。つまり、死を見つめる重病人が、何よりも待ち望む生への実感なのだ。
フィリップが夜中に息苦しくなって困っている時、オマールがフランソワを車椅子ごと部屋から外へ連れ出し、夜の都会の大気に触れるシーンでは、見ていて込み上げるものがあった。
障害者の下ネタまでギャグにして笑い飛ばしてしまう、陽気さが何とも心地よい。ともすれば、介護問題を扱った作品と聞くと「真面目な映画か」と身構えてしまいがちだが、男2人の友情ドラマとして文句なしに素晴らしいできで、観たら絶対に好きになると思う。
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あらすじ:不慮の事故で全身麻痺になってしまい、車いす生活を送る大富豪のフィリップ…彼の日常をサポートする介護者はいつも長続きせず、その都度、新しい人を雇っていた。今回も新しい介護者を求めて、面接を開いていたのだが…そこに現れたのはスラム出身の黒人青年ドリスだった。
ドリスは不採用の証明書で貰える失業手当目当てで面接に参加しており、他の面接参加者と違ってかなり粗暴であったが、正直な物言いに惹かれるものがあり、フィリップは採用を決める。当然、不採用だと思っていたドリスは戸惑いながらも仕事に接し始め。
<感想>実話をもとにした映画のなんと多いことか。逆に言えばオリジナル脚本がいかに少ないかということだが、これも原作は実話。それも首から下は麻痺したままという重度の障害をかかえる大富豪と、彼を介護するために雇われた貧しい黒人の物語というから、実話とはいえちょっと身構えしてしまう。
障害者の介護を描いた映画で、こんなに笑っていいのかしらと心配してしまうほどユーモアたっぷりで、しかも泣けてしまう極上の実録ヒューマンドラマだ。笑いあり涙ありヨーロッパでは大ヒットに。
登場人物みんなが魅力的です。豪邸で働く使用人たちはそれぞれ個性的で、ドリスの出現をきっかけに、みんなフィリップの障害を“個性”として受け止め始める。初めての介護に戸惑うドリスだったが、雇い主のフィリップに媚びることなくフレンドリーに接するのが気に入られ、2人は車椅子をパワーアップ改造するなど大はしゃぎ。
自由奔放なドリスは豪邸内にコールガールを呼ぶわ、フィリップに大麻を勧めるわのやりたい放題。全身麻痺のフィリップも思わず吹き出してしまう。
フィリップはハングライダーの墜落事故で首から下が麻痺状態の障害者。もうハングライダーに乗って空を飛べないと思っていたら、ドリスが車で連れていって一緒に空を飛ぶ二人には感動が。
それにフィリップは奥さんにも先立たれて、でも楽しみは文通相手がいて、写真を送り逢うことを勧めるドリス。つい自分の身体のことを考えて、臆病になってしまっていたフィリップの後押しをしてお膳立てをしてあげるドリス。
この作品のいいところは、キャスティングの妙にあるのでは。介護する黒人役はオマール・シーというフランス人の人気コメディアン。この人がぴたりとハマっているから活きているのだ。冒頭での暴走を繰り返す運転手として登場すると、一気にスクリーンが引き締まる。助手席には全身麻痺の大富豪役のフランソワ・クリュゼが。この2人がパトカーに追われた揚げ句、奥の手を使ってそのパトカーに先導させ病院へ駆け込むエピソードに、この作品のすべてが集約されていると思う。
すなわち、重度の身障者の苦悩と悲しみを笑いで吹き飛ばし、一歩間違えば虐待に繋がるかもしれないブラック・ユーモアで包み込むのだから。この難度の高い演技は、オマールとフランソワという演技の達者な二人抜きには考えられない。
もちろん、一見自然体に映るが、時間をかけて練り上げられた台詞の面白さ、そこには身障者と介護人の関係とは思えない、あけすけの本音が飛び交うからだ。
差別と偏見をやすやすと乗り越えてしまう、その大胆な会話は、やがてこの映画の重要なテーマに行き着く。つまり、死を見つめる重病人が、何よりも待ち望む生への実感なのだ。
フィリップが夜中に息苦しくなって困っている時、オマールがフランソワを車椅子ごと部屋から外へ連れ出し、夜の都会の大気に触れるシーンでは、見ていて込み上げるものがあった。
障害者の下ネタまでギャグにして笑い飛ばしてしまう、陽気さが何とも心地よい。ともすれば、介護問題を扱った作品と聞くと「真面目な映画か」と身構えてしまいがちだが、男2人の友情ドラマとして文句なしに素晴らしいできで、観たら絶対に好きになると思う。
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