『四十九日のレシピ』などの永作博美と『アフロ田中』などの佐々木希が共演を果たしたヒューマンドラマ。故郷の能登でコーヒー店を開いた孤独な女性と、近所に住むシングルマザーの触れ合いを通して、人と人との関わり合いが生み出す温かさや喜びを浮き上がらせていく。メガホンを取るのは、台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェンに師事し、『風に吹かれて−キャメラマン李屏賓(リー・ピンビン)の肖像』で注目を浴びた女流監督チアン・シウチュン。ハートウオーミングな物語に加え、オールロケを敢行した能登半島の美しい風景も見ものだ。
<感想>石川県能登半島を舞台に、永作博美と佐々木希の共演で紡ぐ交流劇ですよね。奥能登でコーヒー豆店を営む女性と、2人の子供を育てるシングルマザーが、ぶつかりあいながらも互いに理解し、支え合っていく姿を描いています。監督は、台湾出身のチアン・シウチュン。
8年前に行方不明となった父親が遺した奥能登の船小屋を、焙煎コーヒー店に改装した主人公の吉田岬(永作博美)。たった一人東京で懸命に過ごしてきた岬は、幼少時に父親と生き別れた過去を持つ。再会を願って故郷である能登へと帰ってコーヒー店「ヨダカ珈琲」を開くことにする。店を切り盛りする中、ひょんなことからキャバクラ嬢として働き子どもたちを育てるシングルマザーの隣人・山崎絵里子(佐々木希)と言葉を交わすようになる。
しかし、岬と価値観の違う絵里子は、子供たちに岬と関わることを禁じるのだ。ですが、ある事件を通して美咲と親しくなるのです。彼女と子どもたちとの何げなくも心温まる交流を経て、岬は人とのつながりによって得られる安らぎをかみ締めていく。
吉永小百合さん主演で「ふしぎな岬の物語」を観ましたが、あちらは彼女目当てに常連客が付いて、それなりに店を切り盛りして食べていけたように見受けられました。ですが、東京でそれなりに成功して店を持っていた岬が、故郷の奥能登でコーヒー店を営業しても、果たして食べていけるのかが、あまり生活の金銭問題が抜け落ちているので、これは寓話として観るしかないと思う。
ただし、ネット販売でオリジナルブレンドした焙煎コーヒーを売っているとかが解り、何となく営業していけるのだと納得。確かに、女性の店を持ちたいという願望や、水商売の人は独立とか、地方のヤンキーは洋服店とか、憧れるのであろう。ですが、簡単にお金が貯まったから地方に帰って店でもと思っている若者たちに、現実は営業していくのに厳しいのですから。
シングルマザーの佐々木希の夜の仕事や、貧困、育児放棄をキレイ事で片付け気味なのも少し引っかかります。給食費も払えずに悩んでいた絵里子の娘の有紗は、岬の店で働き始めるようになるのだが。
人物は数人で、しかも2時間近い作品なのに、どの人物も、どのエピソードもスケッチ程度の薄味で、巧い監督だったなら30分でもっとコクのある作品に仕上げるに違いない。
そうかと言って、風景や場所を全面に押し出して情緒豊かに描いているわけでもなく、タイトルからは全編的に癒し系かと思いつつ、意外にシリアスな展開が多く、ハラハラする展開で“さいはて”という場末感がすごくよく出ている。
ですが、合間に入るコーヒーのやさしい香りという癒しの要素が徐々に流れを変えていきます。私は、コーヒーの香りと少し苦い味に砂糖を入れて飲むのが好きです。しかもどこか女性向け文芸ふうな思わせぶりも感じる。
それは、キャスティングのせいもありますね。主人公の吉田岬を演じている永作博美の、独り納得した演技は生活感に乏しく、2人の子持ちのシングルマザー役の佐々木希は、まだお母さんキャラのイメージはないですが、キャバクラ嬢として働きやや汚れ役をやっていて新鮮。
そして、岬の行方不明の父親村上淳と、絵里子の愛人で、DVで土方強姦未遂男の永瀬正敏が、奏でるギターが同じ音色だったりして、永瀬正敏が岬を襲うのも訳が分からない。
これは、女系世界の映画のように見えた。ですが、撮影で石川県珠州市で長期ロケを敢行しただけあって、海へ突き出した味わいのあるコーヒー店や、田舎ならではの街並み、木ノ浦海岸で撮影した日本海に沈む夕陽など、美しい景色はドラマに癒し効果をもたらしていると思います。
2015年劇場鑑賞作品・・・59 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>石川県能登半島を舞台に、永作博美と佐々木希の共演で紡ぐ交流劇ですよね。奥能登でコーヒー豆店を営む女性と、2人の子供を育てるシングルマザーが、ぶつかりあいながらも互いに理解し、支え合っていく姿を描いています。監督は、台湾出身のチアン・シウチュン。
8年前に行方不明となった父親が遺した奥能登の船小屋を、焙煎コーヒー店に改装した主人公の吉田岬(永作博美)。たった一人東京で懸命に過ごしてきた岬は、幼少時に父親と生き別れた過去を持つ。再会を願って故郷である能登へと帰ってコーヒー店「ヨダカ珈琲」を開くことにする。店を切り盛りする中、ひょんなことからキャバクラ嬢として働き子どもたちを育てるシングルマザーの隣人・山崎絵里子(佐々木希)と言葉を交わすようになる。
しかし、岬と価値観の違う絵里子は、子供たちに岬と関わることを禁じるのだ。ですが、ある事件を通して美咲と親しくなるのです。彼女と子どもたちとの何げなくも心温まる交流を経て、岬は人とのつながりによって得られる安らぎをかみ締めていく。
吉永小百合さん主演で「ふしぎな岬の物語」を観ましたが、あちらは彼女目当てに常連客が付いて、それなりに店を切り盛りして食べていけたように見受けられました。ですが、東京でそれなりに成功して店を持っていた岬が、故郷の奥能登でコーヒー店を営業しても、果たして食べていけるのかが、あまり生活の金銭問題が抜け落ちているので、これは寓話として観るしかないと思う。
ただし、ネット販売でオリジナルブレンドした焙煎コーヒーを売っているとかが解り、何となく営業していけるのだと納得。確かに、女性の店を持ちたいという願望や、水商売の人は独立とか、地方のヤンキーは洋服店とか、憧れるのであろう。ですが、簡単にお金が貯まったから地方に帰って店でもと思っている若者たちに、現実は営業していくのに厳しいのですから。
シングルマザーの佐々木希の夜の仕事や、貧困、育児放棄をキレイ事で片付け気味なのも少し引っかかります。給食費も払えずに悩んでいた絵里子の娘の有紗は、岬の店で働き始めるようになるのだが。
人物は数人で、しかも2時間近い作品なのに、どの人物も、どのエピソードもスケッチ程度の薄味で、巧い監督だったなら30分でもっとコクのある作品に仕上げるに違いない。
そうかと言って、風景や場所を全面に押し出して情緒豊かに描いているわけでもなく、タイトルからは全編的に癒し系かと思いつつ、意外にシリアスな展開が多く、ハラハラする展開で“さいはて”という場末感がすごくよく出ている。
ですが、合間に入るコーヒーのやさしい香りという癒しの要素が徐々に流れを変えていきます。私は、コーヒーの香りと少し苦い味に砂糖を入れて飲むのが好きです。しかもどこか女性向け文芸ふうな思わせぶりも感じる。
それは、キャスティングのせいもありますね。主人公の吉田岬を演じている永作博美の、独り納得した演技は生活感に乏しく、2人の子持ちのシングルマザー役の佐々木希は、まだお母さんキャラのイメージはないですが、キャバクラ嬢として働きやや汚れ役をやっていて新鮮。
そして、岬の行方不明の父親村上淳と、絵里子の愛人で、DVで土方強姦未遂男の永瀬正敏が、奏でるギターが同じ音色だったりして、永瀬正敏が岬を襲うのも訳が分からない。
これは、女系世界の映画のように見えた。ですが、撮影で石川県珠州市で長期ロケを敢行しただけあって、海へ突き出した味わいのあるコーヒー店や、田舎ならではの街並み、木ノ浦海岸で撮影した日本海に沈む夕陽など、美しい景色はドラマに癒し効果をもたらしていると思います。
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