パピとママ映画のblog

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トンネル 闇に鎖(とざ)された男★★★★

2017年07月24日 | アクション映画ータ行
全長1.9kmのトンネルで崩落事故に巻き込まれた男を主人公に、その過酷なサバイバルの行方を、家族や救助隊、政府関係者それぞれの思惑が交錯する人間ドラマとともに描き出したサスペンス・ドラマ。主演は「チェイサー」「お嬢さん」のハ・ジョンウ、共演にペ・ドゥナ、オ・ダルス。監督は「最後まで行く」のキム・ソンフン。
あらすじ:自動車ディーラーのジョンスは、今日が誕生日の娘と妻セヒョンが待つ我が家へと車を走らせていた。ところが運悪くトンネルを走行中に崩落事故に遭遇、生き埋めとなってしまう。どうにか携帯電話がつながり救助を求めるが、やがて救出までには相当の時間が掛かることが明らかとなる。しかしジョンスの手元には、バッテリー残量78%の携帯と水のペットボトルが2本、それに娘へのバースデーケーキが1つあるだけだった。そんな中、ニュースで夫の身に降りかかった惨事を知る妻セヒョン。一方、キム隊長率いる救助隊の奮闘もむなしく、ジョンス救出は一向にはかどらず…。

<感想>トンネル崩落事故で生き埋めになった男の運命は?・・・コンクリートの残骸に閉じこめられた一人の男をハ・ジョンウが演じていて、窮地に陥った彼を救おうとする救助隊長のオ・ダルス。夫の生還を信じる妻には、ペ・ドゥナ。次第に孤独感と喉の渇きがその身を蝕んでいく。撮影は閉鎖されていたオクチョン・トンネルを改装して行われたそうです。

昨年、ハ・ジョンウとペ・ドゥナというトップスターの出演も相俟って、韓国で700万人を動員する大ヒットを記録したキム・ソンフン監督作。

食糧は娘の誕生日にために買ったバーデデーケーキと、ガソリンスタンドのサービスで渡されたペットボトルの水2本、バッテリー残量に限りのある携帯電話。崩れ落ちたトンネルの車内に閉じ込められるという極端な閉鎖状況で、2時間の上映時間をどうやって持たせるかが見ものでした。

ハ・ジョンウがペットボトルの水をもらって受け取るや、ぞんざいに後部座席へ放り投げる。この演出とハ・ジョンウの芝居による伏線が効いていると思う。
映画の中で笑いのシーンがあるのも良かった。彼がもう一人の生存者の女の子を見つける。トンネル内で愛犬のパグと閉じ込められている若い女性がいることが判明する。その女が「水をください」といって、彼のペットボトルの水をごくごくと飲み干して、ハ・ジョンウにしてみれば、心の中で残り少ない水をぐびぐびと一人で飲みやがってと思ったに違いない。

それに、犬にも水をと、彼はブツブツと文句を言いながらも、水を上げてしまう。その後にも、その犬が、大事な食糧のケーキを全部食べてしまうんですからね。結局は、その女性は救出前に死んでしまうんですがね。外にいる救出隊長が、「水がなくなったら小便を呑むと言い」と言うんですよ。冷やせば飲めるとも。最後に、その犬とハ・ジョンウが救出されるのも良かった。

閉じ込められた彼の恐怖と地上で展開する大規模な救出作業とカットバックさせながら、最後まで緊張感を持続させ、家族愛、国家と個人といったテーマを、浮かび上がらせた脚本・監督のキム・ソンフンの手腕は見事といっていい。

ニュースになると思ったら、なんでもやる外にいるマスコミ関係者や、手抜き工事をやったやつら、人の命よりも金や名誉を大切にする政治家、そんなやつらに「お前らはみんなクソだ!」と叫ぶハ・ジョンウに、スカーットした。
この手の映画は、アメリカが独占しているが、始終一人芝居で人間的魅力を発揮したハ・ジョンウがいい。韓国の大統領が、個人の命は地球より重いという国家的欺瞞を皮肉るのも効果的で良かった。

危機下での一人芝居は、「テロ・ライブ」での実績がある彼の独断場かと思いきや、安心の救助隊長のオ・ダルスと、手際の悪い部下とのやりとりを映像的なコミカルさに繋げるなど、センスを感じるが、中盤以降は結末から逆算したご都合主義感が否めず、持ち駒を活用されていないのが惜しかったかと。
それでも、やはり主人公のハ・ジョンウの演技がハマっていて、妻のペ・ドゥナは少し疲れた雰囲気が魅力的でしたね。トンネルの中の孤独感と、外の大騒ぎのコントラスも効果的でした。ありとあらゆる小道具と伏線と役者たちの絶品な演技の妙が魅せるドラマには、「閉塞感」なんて皆無。ラストの憎い演出まで、しっかり楽しませてくれる傑作でした。

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