『[リミット]』などのライアン・レイノルズを主演に迎え、マーベルコミックスの破天荒ヒーローを実写映画化したアクション。人体改造により人並み外れた治癒能力と不死身の体を手にした主人公が、ジョークを口にしつつ暴れまくる姿を描く。共演は『トランスポーター イグニション』などのエド・スクライン。現実世界とフィクションの境を越えて、観る者を自分の世界に引き込む風雲児の活躍に胸が高鳴る。
あらすじ:元特殊部隊の傭兵のウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)は、今は悪者を気まぐれに痛めつけては金を稼いでいる。すっかり正義のヒーロー気取りの彼は恋人との結婚も決まり幸福の絶頂にあったが、いきなり末期がんと診断され、謎の男の申し出を受け治療に臨む。だが、彼らの正体は、兵士に人体実験を施して、人間兵器として売りさばくという恐ろしい組織だった。
それを知ったウェイドは超人的能力を得た後に、施設を脱走して、顔が醜く変化したウェイドは、マスクを被り、デッドプールと名乗って復讐を誓う。
<感想>お先に試写会で鑑賞しました。アメコミのヒーロー映画も遂にここまで進化したかと嬉しくなってしまう。正義対悪の正統派から悩み多きダークなヒーロー、そしてお茶目でいけない「デッドプール」へと、時代は彼を待っていたのだった。
自分がキャラであることを自覚しつつ、いきなり観客に向かって本音トークを始める「第4の壁」を超えるなんて。「デッドプール」はシリアスになり過ぎたスーパーヒーロー像のガス抜きをするような間違いだらけのアンチ・ヒーローなんですね。「X-MEN」系のキャラクターだが、本家と異なる血みどろ上等のアクション、お下劣なセリフやギャグ満載で、お子様厳禁のR指定(日本はR15)。
だが、彼が持つ能力は、傭兵の戦闘スキルを持ち、ミュータント化で驚異的な治癒能力を得て、戦いの最中でもへらず口をたたくおしゃべりで、自己中心的な無責任野郎。これでもヒーローなのって、軽口や下品なギャグを飛ばし、末期ガン治療の過程で変貌した姿をマスクとコスチュームで隠している。
人に見せられない顔になり、愛する恋人ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)にも会えなくなる。物語は彼をそんな顔にしたミュータント、フランシス(エド・スクライン)への復讐劇になっている。
「デッドプール」を演じるライアン・レイノルズは、そのイケメンな顔をマスクでほとんど隠しての演技ですが、そのおかげでこれまで過小評価されてきた彼の演技力が爆発してるのだ。気づいたらワナにはまるような愛すべきキャラが完成したのですね。
銃器はハローキティのバッグに入れて持ち歩くほどお気に入りで、「スター・ウォーズ」は、旧3部作しか認めないし、痛覚を消失したミュータントで自分を改造したフランシス、その部下の怪力女のエンジェル(ジーナ・カラーノ)をぶちのめすのがデッドプールの今の願いなのだ。
敵に対しては容赦しない彼の銃の腕前はピカイチで一発の銃弾で複数の敵の頭を撃ち抜くし、背中の二刀流を操り襲い来る暴漢の首を撥ね飛ばす。頭にきた相手には殺した後も銃弾を撃ち抜くなどエグいこともやる。
それに、映画ネタをちょいちょい挟んできて、高所から片膝ついて飛び降り着地するエンジェルを、“ヒーロー着地“と茶化したり、「プロフェッサーXはマカヴォイだっけ?、スチュワートかい?」と混乱したり。ヒュー・ジャックマンに媚びをうってこの映画を作ったんだと、観客に話しかけるし。最後に恋人にマスクを外して顔を見せる時に、ヒュー・ジャックマンのお面を被って笑いをとるのだ。
X-MENのコロッサスと少女ミュータントのネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドにスカウトされるも、復讐が第一だと、取り合わないのだ。だから「ヒーローかくあるべし」を説くコロッサスのことはウザがっているのだ。
そのアクションシーンも過激で、首がぽんぽん飛んだり凄まじい迫力。悪役のフランシス(エド・スクラインは、“トランスポーター”の二代目)も強そうだし、エンジェルのジーナ・カラーノも、元女子格闘技界の第一人者だしね。
主演のライアン・レイノルズは制作も兼任しているし、今回の「デッドプール」では、ドライだし思いっきり暴力的であり、それが鋭くて痛快で、多少はやりすぎでも笑って許してあげよう。
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