パピとママ映画のblog

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バハールの涙★★★★

2019年04月24日 | アクション映画ーハ行

「彼女が消えた浜辺」「パターソン」のゴルシフテ・ファラハニが、IS(イスラミックステート)に奪われた息子を助け出すべく、女性武装部隊を結成して戦いの最前線に身を投じた女性を演じる戦場ドラマ。共演は「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」のエマニュエル・ベルコ。監督は「青い欲動」のエヴァ・ユッソン。

あらすじ:戦場で夫を亡くしたフランス人女性ジャーナリストのマチルドは、中東の紛争地域に入ると、女性だけの戦闘部隊を率いるバハールと出会い、彼女の戦いの日々に密着していく。愛する夫と息子と幸せな日々を送っていたクルド人女性弁護士のバハールだったが、ある日突然ISの襲撃を受け、自らは性奴隷として売られる一方、夫は殺され、息子をISの戦闘要員として連れ去られてしまう。やがて命からがら逃げ出したバハールは、息子を必ず取り戻すと誓い、女性武装部隊を結成すると自ら銃を手に立ち上がる。やがて彼女たちは、“女に殺された者は天国に行けない”と信じるISの戦闘員たちに恐れられる存在となっていくのだったが…。

<感想>対IS(イスラミックステート)レジスタンスの女性部隊の隊員バハールを演じたゴルシフテ・ファラハニの顔がとにかく美しくて素晴らしかった。埃にまみれてお化粧もなく、髪の毛のバサバサで唇がかさつき、それでも愁いを帯びつつも、確固とした意志の力を宿らせた眼差しがとにかく美しいのだ。

女性兵士のリーダー、バハールは「敵のISが殺したのは恐怖心」だと言う。夫を殺され息子を奪われ、性的奴隷としてたらい回しにされて、全てを失った女たちは、「女に殺されると天国へ行けない」と、信じているIS戦闘員たちの恐怖心を逆手にとり、男たち以上に大胆に戦うのだった。

しかし、全てを失ったと言いながらも、彼女たちが戦う理由には、少年兵としての戦闘訓練を強いられる子供たちの奪還があるからなのだ。

生きるとは、かくも哀しい。事実を語り伝えることで戦う、もう一人の女戦士、戦争記者のマチルドの存在が効いているのだ。彼女も夫を戦争で亡くし、娘とは離れ離れになり、自分も片目を失ってもなお、戦場の写真を撮りながら記事を書き、世界へと発信しているのだ。

女性たちの尊厳を取り戻す戦いという、絞り込みがテーマ主義に流れてはいるが、作品に明確な訴えをもたらしているのも事実であります。戦う側と報道する側、女と男、支配者と開放者、恐怖と勇気など、いくつもの二文法が図式的に配置されたこの作品を評価するのは難しい。でもそれらの最上位に君臨するのが、バハールを演じたゴルシフテ・ファラハニの顔なのだ。

まさに、今、言わなければ、描かなければという熱情に溢れていた。埃にまみれた服を着たまま、冷たいシャワーを浴びさせられ、何事かと思ったら、男たちの性の奴隷になることなのだ。それも、若い女を選び、そして、妊娠をして、大きなお腹を抱えて逃げ惑う女たち。

出産シーンもある。妊産婦とて、手に銃を持ち、何時、何時に敵が襲撃してくるか分からない。着の身着のままで逃げては、隠れて生きていると言う実感がわく。食料も不足しているし、睡眠だってゆっくりとは寝ていられない。生きるために、拉致された子供を救うためにも、男たちと同等に銃を持ち敵を戦うのだ。

国境を超えれば、この戦場から逃れられると、必死になって車に乗り目指すのだが、途中でも車が襲われるし、妊婦は産気づいて破水する。今にも出産が始まってもおかしくない。ここで子供を出産すれば、母親も赤子も殺されてしまうだろう。妊婦が呻きながらもかろうじて国境までたどり着く。そこで車から降りた途端に、地面に立ったまま出産する壮絶な場面には、それこそが女の闘いであり強さであることを示していた。無事に女の子が生まれた。この瞬間は、本当に祈らずにはいられなかった。

泣いてもなにも始まらない。立ち上がって戦うのだった。これは女たちの戦争映画であります。ですが、男たちのそれとは違うのは、戦闘時の顔が悲しげなことなのだ。

それからが、女性部隊が小学校のある所まで行くも、爆弾が仕掛けられてあり爆発する。息子が生きているのか心配なバハール。爆発で顔が埃で真っ白になりながら、土煙の中から男の子が走り寄って来る。そして抱き着く瞬間も、また涙が溢れてならない。

主人公の隊長と戦場ジャーナリストの、我が子への想い。それが重なり、最後の幻想となって切ないですね。こんなのってあるか、誰に怒鳴ったらいいのか、怒りが沸々と湧き上がって来るのだった。

 

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