「未来が見通せたなら」----いつという時代を問わず、人類が見つづけてきた夢はこれだ。神秘家は、この夢を現実のものにしようとさまざまな努カを積み重ねてきたし、なかには特殊な秘法によってそれができると主張した者も少なくない。
しかし、口だけではなく"実地に〃それを証明してみせた者は、筆者の知るかぎり、ただひとりしか存在しない。明治屈指の大実業家として名を馳せ、今日の横浜市の基礎を一代で築きあげながら、働き盛りの40代半ばから忽然と一切の事業を投げ捨て、易を極めつくして逝った古今未曾有の大易聖、呑象(どんしょう)こと高島嘉右衛門その人である。
高島にとっての易は、神との交流にほかならなかった。たとえばこんなエピソードが残されている。明治21年のことである。所用で名古屋を訪れていた嘉右衛門に、熱田神宮の神職らが講演を依頼してきた。かねてから「神職は神の言葉を直接拝受できるようでなければならない。そのためには易を学ぶのが最良の方法である」と主張し、勧めてきた嘉右衛門だから、申し出を快く受けて講演を行った。ところがその講演の最中に、神職が交互に立っては中座する。不審に思った嘉右衛門がその訳を尋ねた。すると「雨乞いの依頼が殺到して拾り、そのため失礼ながら中座させていただいているのです」という返答が返ってきた。やがて講演も終わった。
嘉右衛門は、祈祷に行っていた神職も残らず集まってほしいと頼み、全員が集まったところで、おもむろにこう切りだした。「皆さんは大神様に雨乞いを祈祷されましたが、神様は何と拾っしゃいましたか」隣の神職と顔を兄合わせて苦笑いする者や、なんとばかげた質問をするのかといぶかる者はいたが、この突飛な質問に答えられる神職はいない。だれもが黙っていると、嘉右衛門は重ねてこういった。
「あなたたちは、たとえていえば神様という主人に仕える従者です。その従者の耳が聞こえないなら、どうやって主人の御用を勤めるのですか」
この発言には、それまで神妙に嘉右街門の話に耳を傾けていた神職たちもさすがに色めき立った。が、嘉右衛門は委細かまわず話しつづける。
「神慮神意に感通し、その言葉を人に取り次ぐのが神職たる者の役目でしょう。だからこそ、私は皆さんに易を学べと申し上げている。易こそは"神の語学〃です。疑いがあるなら、証拠をお見せする。何でもかまわないから皆さんの望みのことを占問いしておみせしましょう。知りたいことをいってみてください」
顔面に怒気を漂わせながら、若い神職たちは異口同音にこうたずねた。
「では先生におたずねしたい。この長日照りを止める雨はいつ降りますか」質問を受けた嘉右衛門は、短い携帯用の筮竹(ぜいちく)を手慣れた様子で捌き、「沢地萃(たくちすい)」上六という大成卦を得た。そこで、「地上に水が溢れている。これは洪水が来ることを示している。日にちは6日目」と、サラリと答えたのである。
次回に続く
●「日本神人伝」不二龍彦著 「学研」 より抜粋
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