天神様と絵馬

　　　　　　　　　　　　　太宰府天満宮「飛梅」


受験シーズンがいよいよ始まった。先日近くの神社にお参りに行ったら、拝殿で真剣に祈る受験生らしい親子連れを多数見かけた。全員志望校に合格して欲しいと思いつつ、我が子の中学受験のことを思い出した。

娘が小学校六年生の夏のこと、母の法事で家族揃って福岡に帰省することになった。塾通いで夏休みもない娘の気分転換になればと思い、「何処か遊びに行きたいところはないか」と娘に尋ねてみた。するとどこで聞いたのか、「遊びには行かなくてもいいから、太宰府天満宮に連れて行って欲しい」というのである。六年生になってから、塾での成績が伸び悩んでいることは、妻から聞いて知っていた。子供ながらに「苦しい時の神頼み」というわけである。自称、神社仏閣フェチの父親としては、殊勝な娘の願いを叶えてやることにした。

法事の翌日、親子三人で太宰府へ。せっかく太宰府まで来たのだからと思い、正式に、昇殿してご祈祷を受けることにした。待合室で順番を待っている間に、私は娘に「神様に何とお願いするのか」と尋ねてみた。「○○中学と○○中学、○○中学に合格しますように・・・ってお願いするの」と娘。そこで私は娘にアドバイス。「合格しますように・・・というのは、少し他力本願だな。私は○○中学と○○中学、○○中学を受験しますが、一生懸命頑張って三校とも合格しますと、神様に宣言した方がいいんじゃない。神様は自力で頑張る人のほうが好きだと思うよ」すると娘曰く「それじゃあ、お願いにならないよ」　私は娘に言った「だからさぁ、そういう風に神様に宣言した後に、試験の日に病気になったりしないで、無事に受験が出来るようご加護下さいってお願いするんだよ。お願いするポイントが違うんじゃない」

ご祈祷も終わり、ご神札と一緒に頂いた絵馬に、願い事を書いて奉納することにした。私が黙って見ていると、娘は絵馬に次のように書いた。「私は○○中学、○○中学、○○中学に合格します」
次の年の春、娘は三校とも合格した。