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マスクが店頭に並ばないカラクリ


「中国側から“売り込み"が」マスク輸入業を始めた男性が語る、店頭に並ばないカラクリ
文春オンラインより転載
坂田 拓也 2020/04/09

「先週、中国から5万枚のマスクを輸入して、都内の企業に納入しました」
3月後半からマスクの輸入をはじめたという40代の男性はこう話す。

国内の深刻なマスク不足に対し、安倍首相は3月28日の会見で以下のように述べた。
「マスクは8割近くを中国での生産に依存して来ましたが、国内でマスクを作ってくれる企業に補助金を出してお願いしながら、生産増強と輸入の増加によって、4月は7億枚を超える供給を行います」

マスクが店頭から消えた真の理由
2018年度のマスク供給数は国内生産11億1100万枚、輸入は44億2700万枚に上る(日本衛生材料工業連合会)。合わせて1カ月4億6000万枚の供給数に比べて7億枚は確かに大幅増だが、4月に入っても薬局チェーンやスーパーの店頭でマスクは消えたままだ。

原因は中国政府の介入にもあったという。

「中国から輸入してきたマスクの多くは、日本のメーカーが仕様を決めて中国の契約工場に生産を発注し、輸入して自社ブランドとして販売してきたものです。しかし中国でコロナ禍が起きると、中国政府は“緊急”を理由に工場に対して日本メーカーへの出荷を止めさせたのです」(業界関係者)

そして中国産マスクは中国政府の支配下に置かれつつある。
「その後中国政府は、中国で生産されるマスクを高品質なものから買い上げはじめました。マスク着用をはじめた欧米各国が中国産マスクを求めてくると争奪戦がさらに激しくなり、不織布の価格が高騰し、マスクの紐まで足りなくなっている。今後、中国政府はマスク工場を完全管理下に置くという憶測も出ています」(同)

欧州で感染者が急増した後、中国政府は“支援”を名目に欧州各国にマスクを提供したが、問題も起きた。
「中国政府が買い上げて贈ったマスクの中に粗悪品が多く混じっていたのです。メンツが潰れた習近平国家主席は激怒したと言われ、政府は工場に品質検査を厳しく求め、出荷までさらに時間がかかるようになりました」(同)

中国政府がマスクを管理下に置けばマスクの輸入は政府間交渉になり、外交力が問われることになる。

中国からの“売り込み”でマスク輸入を始めた男性
冒頭の男性の本業は、客の荷を輸送する国際物流サービス。世界各国で広がるコロナ自粛で国際物流が滞り、3月の売り上げは半減した。輸送を請け負ってきた男性が自身でマスクの輸入をはじめたのは、中国からの“売り込み”がきっかけだったという。
「長年取引しているシンセン(深圳)の物流エージェントが、“マスクが手に入る”と連絡してきました。取引のある上海など他のエージェントに聞くと、同じように“マスクは手に入る”との回答でした。

彼らが提示してきたマスクは、買い値で1箱(50枚入り)1500円だけど粗悪品だったり、中国人が使う青色マスクで日本人に馴染まなかったりと様々でしたが、中に割高でも品質の高い白色マスクがあり、輸入を決めました」(男性)
買い値は1箱3000円弱。これにエアー(航空便)の輸送コストと4・7%の関税がかかり、三千数百円で企業に納入している。

「中国のマスク工場が一部横流し」輸入のカラクリ
輸入できるカラクリをこう話す。
「中国政府がマスクを買い上げはじめましたが、マスク工場は、一部を横流ししているのです。工場には政府の監視員が常駐しているため、“夜に運び出す”と言っていました。エージェントはこうしたマスクを手に入れて輸出する。大量に準備するのは難しく、アメリカの有名小売りチェーンが取引を求めてきた時は断ったと言っていました」(同)

それでも1回数十万枚程度は輸出できるという。
「エージェントに先に現金払いするため、小規模事業者の私には代金を回収できるか不安です。500万円以上突っ込んだ時はヒヤヒヤしました。今後、マスクが大量供給されて価格が暴落するかもしれないし、緊急事態宣言で外出自粛が徹底されれば、需要が減るかもしれません。リスクを考え、状況を見ながら1回5万枚程度をメドに輸入を続けるつもりです」(同)

3月末以降、男性は何回かに分けて十数万枚を輸入して数社に納入した。男性自身はマスク1枚につき10円の利益を乗せて現時点で百数十万円の利益だ。

価格高騰も「便乗値上げではなく、エージェントの影響では」
コロナ禍が起きるまで、日本国内のマスク価格は高くても1箱(50枚入り)500円程度だった。

マスク不足が深刻化した3月末に大阪のスーパーが1箱3980円で売り出すと、歓迎する声が出た半面、「高過ぎる」との批判も多く挙がった。
「おそらくエージェント経由で輸入したもので、仕入れ値が上がっているので便乗値上げではありません。しかし大手チェーンは価格を上げて販売するのは逡巡するでしょうし、粗悪品が混じっている可能性を考えれば慎重になる。そもそも大量に輸入できないので大手チェーンは手を出さないと思います」(同)

インターネットで販売されているマスクは、使い捨て50枚でも2000円台から4000円台までばらつきが大きい。
「在日の中国人を中心にエージェント経由でマスクを輸入しているようですが、品質によって仕入れ値が異なる。また、大量輸入できれば価格は下げられますが、予定数量が届かなかったり、今は様々な問題が起きるために価格が上下している。中にはBFE試験(細菌遮断率試験)などの結果表示と実際が異なるものもあるようです」(同)

男性は初めて仕入れた2万数千枚のマスクのうち、3000枚は取引先や知人に無料で配った。
「皆さんに“神様”と言われました」(同)

(坂田 拓也)

転載終了

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